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【完結】異世界から来た女騎士と交際する約束を交わした  作者: プロト・シン
四章【異世界から来た女騎士と】

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第44話〔差し当たって これは事故なのだろうか?〕⑤

 他に乗客の居ない馬車の中で、暇潰しがてら始まった遊びに連敗する。


 と皆で作る小さな円の向かいに座る、額に絆創膏を貼った騎士が自分を見て――。


「――ヨウジどの、本気でやってますか?」


 ム。


「手抜きなんかしてませんよ?」


「え。――それなら、どうしてヨウジどのはそんなに弱いのですか?」


 うぐ。


「……なんかスミマセン」


 というか。


「ていうか、なんでアンタ、そんなに強いのよ」


 右側に座る黒髪の少女が自分も思う疑問を口にする。


「え、――ジブン強いのですか?」


 と聞かれても――。


「――まぁ、実際に勝ってますし」


 としか言えない。


「でもこれは、ヨウジどの達が居た世界の――遊びなのですよね?」


 自分と少女を見つつ不思議そうに騎士が言う。


「はい。どうしてですか?」


「二人が負けるのは、ジブン達に合わせて実力を出してないからですよね?」


 ああ、そういうコトか。


「少なくとも自分は、手を抜かずに本気でやってますよ」


 なのに間違って、指を上げるけど。


「わたしだって、普通にやってるわよ。――アンタこそ、(こす)いことしてんじゃないの?」


「し、してませんよっ、そんなことッ」


 慌てて激しく首と手を短髪の騎士が振る。


 まぁそれ以前に、ズルいやり方を選ぶほどの内容や状況でもない。


「だったら。なんで、アンタみたいなダメ騎士が勝ち続けるのよ。完全に設定のミスじゃない。ちゃんとやり直しなさいよ」


 さすが鈴木さん、文句のつけどころが違う。


「……分かりました。なら最初から……」


「生まれる前からよ」


 やり直す前に、考え直すべきだ。


「……返事は、直ぐでなくてもいいのですか?」


 これを切っ掛けに自分を見つめ直して、どうする。


「ま、知り合いってコトで、明朝まで待ってあげるわ」


 一体なにを決断させるつもりだ。


 と、このままでは主旨が戻りそうにないので――。


「――……まぁその、ただの遊びですから。不満が出る場合は他のに変えてみても?」


 くるっと少女の顔が自分の方を向く。そして下唇に小さな指先を押し上げるように当て。


「そ、ね。じゃ次は、あっち向いてホイでもする?」


「――それならジブンも分かりますよ」


 え。


「……四人で?」


「なんとかなるんじゃない?」


 いや、ならないでしょ。


 そう思うそばから黒髪の少女が音頭を取り始め――。


 え、ちょ、え。


「――ポン」


 あ、負けた。――ぇ?


 勝敗の結果を見て、少なからず驚く。


「あ、――ジブンの独り勝ちですね。それでは、あっち向いて――」


 ぇ、あ。え?


 突如ニョキっと生えた様に出てきた手、もとい腕に顔ごと目が向く。


「――ホイ! ――え?」


 そして、なんで“人()し指と()指を()てる”なんだ。と、出てきた腕の先を見て思う。


 ただ、それとは別に。


「……ええっと、またまたジブンの独り勝ち……?」


 ん? あ――忘れてた。と視線を上げる――その視界に、自分と同じ下部を見ている皆の姿が映る。


 と皆の様子がオカシイことに気付いたのか――。


「はて? どうして皆さん揃って下を……」


 ――問題となる部分に騎士の目がいく。


「ドどわぁ! どうしてジブンの股間から腕が生えているのですかッッ?」


 しかも角を表して。


 ただ――。


「――悪ふざけは止めて、出てきてください」


 次いで騒ぐ被害者を余所に難無く分かった加害者、もとい加害神の名を口にする。






「いやぁ、心臓から口が飛び出すかと思いました」


 かっぽかっぽと走る馬車の中、落ち着きを取り戻したのちに何故かしみじみと短髪の騎士が述べる。


 逆、逆。


 と内心でツッコミ。自分達の輪から若干外れた位置で膝を曲げて浮く女性神を見る。


「帰ってきてたんですか?」


「ウンム、昨晩の内にのぅ」


 本日は修道女の様に頭巾を被って黄白色のゆったりとしたローブ状の服を着る聖女が、外見的にも似合わない、いつものおっさん口調で告げる。


「……今回は、何処へ?」


「傷心旅行にじゃな」


 いや、聞いたのは場所であって目的ではないのだが。


「……――その、収穫は……?」


「ウム、バッチリじゃ。なにしろ――」


 ――口を開けたまま、聖女の動きが止まる。


 ム?


「どうか、したんですか?」


 すると頭巾やバンドーで開けた顔の眼がきょろっと動く。


「口は(わざわい)の門、余計には動かさぬものじゃ」


 ム。


「それよか、ソナタらはドコに向かっておるのじゃ?」


 なるほど。――要するに。


「自分達はこの先にある村へ」


 何かある。――って事か。と、あからさまにいつもと反した不自然な相手を見て、思う。






 道のりからして半分程を通過した時点で仲間内に加わった女神を交え、新たな遊びの輪ができ。其処でも――。


「またヨウジどのの負けですね」


 ――大敗する。


 ええと……。


「なんじゃヨウジ。ソナタ、くっそ弱いのぉ」


 うぐ。


「ええっと、――ヨウジどのは素直すぎるのではないですか?」


 ム。


「どういうことですか? ホリーさん」


 正面に座る相手を見て、尋ねる。


「ワタシが見る分にヨウジどのは、言うよりも先に指が動いてますよ?」


 え――。


「――……本当ですか?」


「はい、本当です。それを見て、ワタシはやってますので」


 そうだったのか……。――いや、けど。


「アンタ、よくそんなの見えるわね……。わたしはべつのとこ、見てたわよ?」


 と、直ぐに自分の疑問を口にする黒髪の少女が新たな情報を持ち出す。


「え――そうなのですか? 救世主さまはどこを?」


「ズバリ目ね。水内さん、上げる前に必ず特定のとこを見るから、分かりやすいのよ」


 なぬ。


「……どこですか?」


「――指の数によって、違うわよ?」


 なんと……。――けど。


「ソナタらは細かいのぅ」


 輪に入った後、皆と同じ様に座る頭一つ浮いた聖女がさらっと次なる話題を振る。


「ん。――アンタはどこよ?」


()は魂の揺らぎを見ておる」


 セコっ。


「それはさすがに狡いわよ……」


「勝負事で恥や外聞(がいぶん)を気にして負けるよりはずっとマシじゃ」


 大人気ない――いや、神気ない……?


「それにじゃ。()くの如き手段で判断をしておるのは――ワレだけでは、ないぞ」


 と言う聖女の顔が自分の左側に居る赤い少女の方を向く。


 そして釣られて見る自分と目が合うボサっと頭の赤い少女――が(おもむろ)に口を開く。


「――鼻」


 ハ、ハナ……?






 かくして多様な弱点を持つ自分の欠点が分かった末で遊びから雑談に自然と移行する場に合わせ――。


「――結論的に言うと、ホリーさんのが単純に凄いと思います」


 他のは正直、身につく実力以上の才能(なにか)を必要としてるし――理解を超えている。


「いやぁ、ヨウジどのに褒めてもらえるなんて(はなは)だしく嬉しいですよぉ」


 照れてか若干頬を染めながら後頭部を掻き騎士が言う。


 それを、どこか不満げな顔で見る少女――と聖女。


 ム?


「……――ね、ダメ騎士。走ってる馬車の中で跳んだらどうなるか、興味ない?」


「え、――どうなるのですか……?」


「それを、これから試すのよ」


「おお。それは、よい案じゃ。ほれ、立つのじゃホリホリ」


 うーん。――どうしたものか。


 と首を傾げつつも立とうとする騎士の背後に忍び寄る魔導少女を見て、思う。

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