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【完結】異世界から来た女騎士と交際する約束を交わした  作者: プロト・シン
四章【異世界から来た女騎士と】

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第9話〔あれ 洗髪剤 変えましたか?〕①

 女神が引き()もってから三日後、訪れた屋敷内で前回と同様に色気のある医者がソファに深く座り直して。


「また出向いてもらい、感謝するよ」


「いえ、仕事ですから。それで、今日は?」


「ウン。前回受け取った医学書はとても良かった。ついては新たに追加したいのだが、構わないかな?」


「ああ、なるほど。はい、勿論いいですよ。――次は、どんな物を?」


「欲しい品物はメモ書きしてララに渡しているから、帰りにでも」


「分かりました。と言うコトは、本題は別ですね?」


 すると爽やかな笑みを見せ――。


「――相変わらず察しがイイね、洋治くん」


「いや、今のは自分でなくても分かると」


「そして謙虚(けんきょ)だ。素晴らしい」


「……――そこまで言われると、かえって、当て擦られた気分になりますよ?」


「おっと、ならこれ以上は(つつし)んでおこう。キミに嫌われるのは彼女達同様、できればわたしも避けたいからね」


 ム――。


「――達、というのは?」


「うん? ああ。気にする必要はない。どちらかといえば、気になる(ほう)だからね、洋治くんは。そんな訳で、キミの聞きたい事から先に処理しよう」


「え……聞きたい事?」


 なんの事だろう。


 すると、何故か、爽やかな笑みを見せ――。


「――相変わらず自身の事となると(うと)いね、洋治くん」


「いや、今のは自分でなくても……」


「そして鈍い。鈍感だ」


 二度も言った。同じ意味(コト)なのに。――ただ。


「鈍――……ニブいのは、自覚してます」


「そうなのかい? 意外――でもないか、キミの場合は」


「どういう意味ですか……?」


「ウン。いいかい、人の欠点とはそれを認識しているかで内容が大きく変わる。何故なら改善とは悪いところを()くする、という意味だからだ。改める気持ちが芽生えなければ、端から何も咲く事はない」


「……――そうですね。けど、分かっていても直らないモノもあります。内容によっては、絶対に。自分のは、たぶんそういう部類の内容(モノ)です」


「なら、それは洋治くんの個性だ、性癖のようなモノだよ」


 性癖……。


「それはそうと、わたしが何故、異世界の医学書を欲しているかに興味はないかい?」


「ええと。あります」


「ウン、そうだろう。とすれば、以前わたしがこちらの医学に棲み分けはないと言ったことを、覚えているかい?」


「肩書きがどうという話なら、覚えてます」


「そう、こちらの世界で医者は治療師と呼ばれている。しかし実際の治療は大部分を魔力に頼った知識の伴わない行為。実質、治療師の平均した教養は王国の一般騎士とそう変わらない。応急処置、程度のモノだ」


「……なるほど。けど、結果的に治るなら、問題ないのでは?」


「そう、それだけなら、批判するほどの事とは言えない。詰まるところ問題となる事柄は別にある、と言う事だ。で察しのイイ洋治くんなら、それがナニか、分かるかな?」


 え。――ここにきて、そんな……――。


「――……加護ですか?」


「ウン、そう。よく分かったね?」


「……――いやまぁ、それしか思い付かなかっただけです……」


「申し分ない。選択肢が無駄に多い事を、わたしは優秀とは思わないからね」


 そして、微笑を浮かべて言った相手が、テーブルのカップに手を伸ばす。と何故か動きを止め、その手を引っ込める。


「ところで洋治くんは女神の加護で蘇生するのに条件がある事を知っているかな?」


「ハイ、大体の事は」


「そうか。ではどう思っているのかを、聞かせてもらえるかな」


「どう思っているか……? それは要するに、女神の加護について、ですか?」


 ソウと相手が頷く。と直ぐに、閉じた口を開き。


「加護などという摂理が、生命にとって自然な環境だと思うかい?」


「それは……まぁ。けど、こっちの人達にとっては自然(ふつう)なんじゃ」


「だろうね。しかしいつまでも変わらないと、保障はできる?」


「いや、それは……。――というか、クーアさんにとっても普通の事では?」


 そもそも異世界(こっち)の人だし。


 すると、これまでとは違う感じで、穏やかに笑い――。


「――確かに、キミの言うとおりだ。わたしはもう、こっち側の人間だった」


 ん、もう? ――どういう。


 途端に壁掛けの時計が古めかしい音を鳴らし、時を報せる。


「さて、どうやら本日の時間が来たようだ。続きはまた、後日」


「あ、はい。なら帰る前に――」


 ――カップに手を伸ばす、その矢先。


「そういえば、結局本題というのは?」


「ウン? ああ。そうだったね。しかし……――」


 ――ウン。と頷き、改める感じで相手が自分を見る。


「洋治くん、女神とはもう話したかい?」


「ぇ? あ、はい。少しだけ」


「そうか。では独創的な彼女の話も体験したのかい?」


「ええと……、ハイ」


「とすれば、忠告しておこう。彼女達は事実上の神だ。そのため偽る事をしない。だが人と神とでは見方が違う、根本からして。だから苗を出されても簡単には受け取らないことだ。下手に植え付けられれば、其処で思考は根付いてしまうからね」


「なるほど……。気をつけておきます」


 そして、ああ。と返ってくる頷き。を見てから、カップを手に取り、口を付ける。


 ん、待てよ。――なんで女神様の事を知って?


 次いで、瞬間的に見ようと、目が合う。


「ン? わたしの顔に、幸せでも付いてるかい?」


 キラキラと、そして爽やかに相手が言う。ので、一旦カップから口を離し。


「いえ、息子さんと同じ、ステキな笑顔だなと」


 言って、苦笑いする医者を見ながら、再びカップに口を付ける。






 ――その日の夜、いつもの様にベッドの上で今日の出来事を感情豊かに話していた相手が、何かに気付いた感じで突然、口を閉ざす。


「どうか、しましたか?」


 途端に目が、遠くのモノを見るように薄く、目尻を横に伸ばす。


「ヨウは、私の話をちゃんと聞いているのでしょうか?」


 ム。


「勿論、聞いてますよ」


「それにしては、いつもと様子が違います」


「なら、どうして、そう思うんですか?」


「な……何と無く、です」


 ふム――。


「――勘ですか。まぁ外れてはいないと思いますよ」


「思う? 何故でしょう。ヨウ自身の事では、ないのですか?」


「勿論自分の事です。ただ……」


「ただ、何でしょう?」


 相手が自分の肩先に顔を寄せて言う。瞬間ふわりと匂う真新しい香りに――。


「――あれ、洗髪剤、変えましたか?」


 途端に、ぇ? と声を出したのち、ハッっと何かを思い出した感じで肩先にあった顔がその身共々ばっと引く。


 ム……?


「ええと。何か、余計なコトを言っちゃいましたか……?」


「いッいえっ、そうではありませんっ」


「……なら、何故?」


 若干距離を置かれた事で気分を落としつつ、聞く。


 すると、首と肩の間を流れるように下がっている金の毛先をくるくると弄りながら――。


「――最近、流行りと聞いて……その、貰い物を試しに……」


「なるほど。ならどうして、急に離れたんですか?」


「それはその、ヨウにとって、嫌なニオイだったら……と」


 ああ、そういうコトか。


「全く嫌なニオイではないですよ。むしろ好い匂いで。ちなみに、なんの香りですか?」


「ぇ? ほっ本当でしょうかッ?」


 と、まるで水を得た魚のように、勢いよく顔を寄せてくる相手が自分の肩口を掴む。


「……ほ、本当です」


 次いで話題の香りが鼻をくすぐる。


 なんのニオイだ? 花? いや、そういうモノとは少し違う。……なんだろう?


 過去に嗅いだ事のある、しかし決して何かと結びつこうとしない香りに思わず首を傾げてから、満面の笑みで頬を染める相手に。


「それで、なんの香りですか?」


 途端にドキッと、あからさまな反応が返る。と掴んでいた肩を放し、キョロキョロと目を泳がせながら忙しなく指先を合わせ――。


「――そ、それよりも、ヨウの方は大丈夫なのでしょうか?」


「俺の方? なんのコトですか?」


「えっと、先程はナニか、思い悩んでいましたよね……?」


「ああ。そのコトなら、もう解決しました。ので、気にしなくていいですよ」


「解決した……? 何故でしょう?」


「まぁ気にしないでください。それより、なんの?」


「だ駄目ですっ。ちゃんと納得のいく様に解消してからでないとっ」


「いや、けど……――」


 ――よし。と、近づく。その分だけ、相手が退く。


 ム……。


「……なんで、離れるんですか?」


「ヨウは、何故……?」


「教えてもらえないなら、匂って確かめようと」


「そっその様なッ、ダ駄目ですっ。ヨウの用が先です!」


「……――先に言っておきますけど、もう後はないので、気をつけてくださいね」


 崖、もといベッドの端を背にする相手を用心して言う。


 と次いで、後ろを確認する隙に近づこうとした結果、敷布に足元をすくわれ――。


 わっ。


「ぇ? きゃ」


 ――見事、古典的な体勢で、覆い被さるコトとなる。


「ス、スミマセン……。怪我とか……してませんか?」


 こくこくと見合う相手が頷く。


「すぐに退()きますんで」


 言って動こうとした矢先、ガシっと腕を掴まれ――。


「え?」


 ――続き、近くにあった小物を持った指がそれを弾き、部屋の照明を消す。

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