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【完結】異世界から来た女騎士と交際する約束を交わした  作者: プロト・シン
三章【異世界から来た女騎士と愛を交わした】

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第61話〔ちゃんと 伝わりましたか〕②

 ほどよく墓地をあとにして、自分が生まれ育った町を案内しながら過ごす一日の暮れ時が迫る中、丘のふもとにある公園を抜けた山頂の展望台を目指し階段状になった緩斜面をのぼって行く。


「けど、本当によかったんですか? こんな感じで」


 久方ぶりの訪問だというのに普段と殆ど変わらなかった時間(ふたり)を思い返しながら、隣を歩く女騎士を見て聞く。


「はい。私はヨウと二人で居られる事が既に幸せなので、他はあまり思い付きません」


 ふム。――と斜面の先へ目を遣る。


「ヨ、ヨウも同じ、……でしょうか?」


 ム。――と見る、顔に――夕陽(あかみ)がさす。






 記憶と相違する建物が視界の妨げとなり、見通しは悪くなっていたものの全体を一望できる事に変わりはなく。


綺麗(きれい)ですね……」


 今も、心に残る印象どおりに焼けた空が木の柵しかない展望台を赤く染めていた。


「夕焼けなら、向こうでも見れるのでは?」


「はい。ですが今日のは特別に綺麗です」


「……――異世界ってだけですよ。きっとモノは、そう変わりません」


「それは……そう、なのですが……」


 と若干俯く夕陽がかった横顔を見詰める内――目が合う。


「――……えっと、何……でしょう?」


 どこか気恥ずかしそうに、合った目と顔がほころぶ。


「ええと。夕焼けより、ジャグネスさんのほうがキレイだなと」


 特に茶化す気なく、言っ――た途端に赤みを帯びていた顔が一瞬で真っ赤に燃え盛る。


 おお……、凄い。――っと、マズい。


 強張りつつある身体(ようす)に急いで手を伸ばす。






 そうして陽が沈み、町の灯りが輝き始めた月下の展望台をあとにしようとした矢先、初めて会った時と同じ様な眼で思わぬ事を口にする相手に、え? と聞き返す。


「ですから、その……――もしもヨウが不本意なら、今日を最後の機会と思い、決断して聞かせてください。私、本当はそれを得たいが為にこちらへ来ました。ですが――」


 ――と、そこから先を言わずに、口を閉ざす。


 なるほど。――そういうコトか。


「親の前でなら本音が聞けると? ――俺って、そんなに信用ないですか?」


 とは言え、前科もあるし、疑われても仕方ないけど。


「そうではありません。私はただ……確証が、欲しいのです」


「確証も何も、自分達はもうすぐ結婚するのでは……」


「はい。ですがそれは形です。私は、その中身が知りたいのです」


「……――見せれませんよ、そんなの。というか、もしかして、この前の続きですか?」


「こっ、この前のとは違います! ――あっあれは、私が先走ってしまったと言うかっ、言葉にできない想いを行動で示したと言うかっ――と、ともかく、アレとは別です!」


 ふム――。


「――……なるほど。だとしたら、安心してください。俺は望んでジャグネスさんと結婚します。誰かに強要されたとか、善意では絶対にありません。むしろ、ジャグネスさんのほうこそ自分なんかでいいんですか? 一応立場上はまだ王女様ですよね?」


「いいえ、違います。私は既に王女などという分不相応(ぶんふそうおう)な境遇からは退職しています」


 王女は職業ではないと思うのだが。


「それと、私がこの身を捧げるのは生涯を通してヨウだけです。――今後、何があっても決して変わる事はありえません。――女神に誓って」


「……生涯、ですか」


「はい。付け加えるなら、生まれ変わる度、何度でもです」


 気持ち前傾した姿勢で胸に手を当て、いつものように真っ直ぐと自分を見、告げる。そして当然のことながら込み上げる不満が、口から――。


「――ジャグネスさん、困ります」


 続けてエと声を出す相手に不平を言う。


「前にも言いましたが、そんな事まで言われると、俺の言葉が安っぽくなります」


「ぁ……はい。スミマセン……」


「謝ったところで、俺の分はもう残ってなさそうですけど?」


「そ、その様な事はありませんっ。きっとヨウなら、私などでは思いもよらぬ事を口にする筈ですッご安心ください!」


 一層前に体を傾け、あたふたと相手が(こと)放つ。


 なんか()りげなくハードルを上げられた気が……、――というか安心……?


「――ともかくっ、ヨウなら問題はありません!」


 なにを根拠に……。――まあしかし。


「いずれにしても、今は何も思いつきません。ので、納得してください」


「えっと……ハィ。分かりました」


 そう言って力無く落ちる胸に(あて)がわれていた手を――掴み取る。


「その代わり、俺も少しだけ先走ります」


 次いで(その)手を引き寄せる。






 静かに顔を離し、目を見開いて固まっている相手に声を掛ける――が返事はなく。再び様子を(うかが)おうとした矢先にパチパチと動き出した眼が目の前に居る自分を見付け、口を開く。しかし言葉になっていない声をパクパクと出すばかりで――。


「――……大丈夫ですか?」


 途端に両肩をガシっと掴まれ、思わずビクッとなる。


「い、今……のは?」


 これまでに見た事のない混沌とした表情と、底から絞り出すような声。加えて眼が――。


 ――コ、コワい。


「ええと……その――ス、スミマセンっ」


「スミマセンはありません。――何故……今?」


「ジャ、ジャグネスさんが、納得してくれればと――思い」


「式までしないのでは、なかったのですか?」


「そう……です、ね。ハイ――……スミマセン」


「では何故……したのでしょう?」


「……――言葉で、今の気持ちを伝えるのは難しそうだったので」


「ヨウの……気持ち? ――どの様な気持ちでしょうか?」


「いや、それが言えなくて、したんですけど……」


「ならもう一度――いえ、私に伝わるまで、してください」


「ぇ。いや、あの……ええと、その……――分かり、ました」


 言って、今回は(あらかじ)め頬に手を添える。と小さな声を出し、ピクっと相手が反応する。


「そうしたら、もう一度」


 次いで返る頷きを見て、今度は引かずに自分から、顔を寄せる。






 ――顔を離し、目を開く相手に問い掛ける。


「ちゃんと、伝わりましたか……?」


「……はい」


 目の前にある眼が自分を見たまま頷く。


「なら、そろそろ」


 帰らないと。――時間的に。


「いいえ、まだです。まだ、私の不安は解消されていません」


「え。けど……?」


「ヨウの気持ちは、伝わりました。ですから次は私の不安に、同じ様に応えてください」


「……――分かりました。どんな、不安ですか?」


「はい、私の事をコワい女と思っていますか?」


「……それ、したら肯定した事になるのでは……?」


「知りたいのはヨウの気持ちですので、問題はありません」


「そうですか……。なら――」


 ――と、なんとなく軽めに触れて戻る。


「こんな感じですか?」


 すると相手が不満気な顔をして。


「……何故か、否定された気がしません……」


「そ、そんなコトないですよっ。――他はもう、ないですか……?」


 途端に、腕が背に回される。


「まだ沢山あります。全部解消するまでは、断固として帰りません」


 ム……――。


「――なら今のにこだわらず、どんどん解消しましょう」


「……――では、私の事を――本当に、カワイイと思ってますか……?」


「思ってま――」


 ――ではなくて。と、今一度ピクっと反応する柔らかい口先に触れて離れる。


「次は?」


 そして再び不満気な顔を見せる。


「……次は、私の事――好きですか?」


 さすがに今更。と思いつつ、応じて前に出す頭部がガシっと両側から挟まれる。


 エ?


 次いで抱き寄せる様にして触れた唇が、より深く、自分との距離を(せば)める。






 そうして離れる度に、繰り返される、似かよった質問と半強制的な行為。


 すると其処に一粒の涙が流れ、次第にその数を増していく。


 ――いつしか、繰り返される行為に声は無くなり。触れ合って分かる気持ちを頼りに交わし続けるモノが(ことば)なのだと気づく。


 そして声に出来ない気持ちを伝え合った末に、確かな(ちかい)を交わし、どちらからともなく顔を見合う。






 気恥ずかしさはあるものの、どことなく清々しい心持ちの自分に若干戸惑いを持ちつつ。


「……そろそろ、行きましょうか……?」


「そう……ですね。早く帰らないと、エリアルがお腹を空かせているかもしれません」


 ム。


「なら、どこかに立ち寄って、何か買って帰りましょう」


「でしたら私は、いつものがいいと思います」


「分かりました。――そしたら」


 と、手を取る。途端に、恥ずかしそうにする様子を見て、思わず頬が緩み。次いで思ったコトを口にする自分の首に腕を回し抱き付いてきた相手の勢いに負け、地面に倒れ込む事となった。

【補足】

 四章は“結婚後”の話からとなります。


 今話≪三章:第61話≫で、三章は終了となります。

 次話≪四章:第1話≫からは、再び物語の本編が開始いたします。


 そして三度、ここまでの話をご一読くださった方々に感謝の意を表すと共に

 引き続き≪異世界から来た女騎士と交際する約束を交わした≫を

 よろしくお願いいたします。m(_ _)m

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