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【完結】異世界から来た女騎士と交際する約束を交わした  作者: プロト・シン
三章【異世界から来た女騎士と愛を交わした】

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第59話〔謝罪の意を身をもって示そうと思いまして〕⑫

 竜の骸を見に戻った焼け野原で、何故か横に居る少女に似た女子がフワフワと浮いていた事に困惑する自分の前で預言者が、にこりと微笑み、口を開く。


「洋治さま、よくぞご無事で」


「あ、ハイ。いつも通り皆のおかげで、なんとか。――預言者様は?」


 今更ながら闘争中に姿を見なかったことを思って聞く。


「私は他用があったゆえ、今ほど到着いたしました。申し訳ございません」


「いや、謝る事はなんにも――というか。――これは、その……」


 と、まるで天から降りてきた様な雰囲気で宙に佇む、目を閉じた状態のまま無反応の女子を体ごと向けて見る。


「ええ、こちらにおわす御方は女神様であらせられます」


 あ、そうなんだ。へぇ――、――エ?


「メ女神? え、メガ、ミ――、女神……様?」


 思わず預言者と交互に見る程に取り乱す。


「はい。正真正銘(しょうしんしょうめい)、本物の女神です」


 え、まじで。


「――け、けど。え、ェなんで」


 再び、預言者から正面の女神(じょし)を見る。


 体形――主に身長差は歴然ではあるものの、何らかの結びつきすら疑わせる割合で似ているその――目が開く。


 え。


 そして、辺りを見渡す目の焦点が自分に――。


「びぇ」


 ――合った瞬間、謎の声を発して(こうべ)を垂れ、再度動かなくなる。


 エエ。


 すると預言者が女神に近付き、(ふところ)から石を取り出した。






 おお……。


 テニスボールくらいの黒い石に、剣などが収納されるのと同じ感じで、女神と呼ばれる存在を仕舞った預言者がこっちを向きつつ懐に石を戻す。


「洋治さま、此度の一件、お約束したとおりご説明いたしたく思います。しかし本日は皆疲れており会場の後始末もございますので、明日、改めて私の部屋にお越しください」


 あ、そうか。


「ええと、話の方は会場でも言いましたが、いつでも構いません。ただ後片付けをするなら一緒に行って、手伝います」


「……――それは大変嬉しい申し出ですが、今直ぐに洋治さまが来てしまうと成り行き上の連れ人が風邪を引くやもしれませんよ。それでも、宜しいのですか?」


 明らかに、自分の後方で短髪の騎士と、剣を取りに行った女騎士を見ているであろう魔導少女を気に掛ける口調で相手が言う。


 ム。


「もし、どうしてもと仰られるのであれば、そちら側の処置を済ませたのちでも遅くはありませんよ」


 次いで、ふんわりと口元を緩ませ、そう述べる。


「……そうですね。そっちを、優先します」


 ――言って、二本の剣を手に持ち、戻ってくる女騎士の(ほう)へと目を遣る。



 のちほど。と言い残し、歩いて行った先で双子の姉が駆る馬に乗り、先に立つ預言者を見送った頃合いで三人が来る。


「あれ、預言者さまはもう行かれたのですか?」


 何気ない表情で聞いてくる短髪の騎士が、そう言って城の方を向く。


「はい。女神様を……収容? して、先に会場の方へ、後片付けをしに」


「え――女神さま? なにですかそれは」


「なにって、さっきまでここに浮いていた――(ヒト)? です」


 と今は誰も居ない空間を指して言う。


「ヒト? 浮いてた? なにですか、それは」


 小首を左右に傾げながら、特にフザケタ様子なく、相手が聞き返してくる。


 ム?


 すると持っていた剣を腕輪に収納した女騎士がこっちを向く。


「――ヨウ、私達も預言者様の後を追い、会場へ行きませんか?」


「あ、はい。ただその前に一度、皆で家に戻りましょう」


「家に、ですか? ――何故でしょう?」


「ええと。妹さんの服や、ジャグネスさんの手、それに皆疲れていると思いますから馬車を呼んで、休憩しがてら向かうのは駄目ですか?」


「なる……、ほどっ。分かりました。――それではまだ少し距離はありますが、家へ」


 そう言いながら家の方へ振り向く女騎士、の赤みを帯びた耳に目がいく。


「ね。来た時みたいに、アンタの魔法で楽できないの?」


 少女が少女に近寄り問い掛ける。


「……残念、今は魔力が足りないみたいだ」


 というかそれだと休憩にならないのでは。






 ――そうして翌日の正午前、昨夜した取り決めから一人向かった預言者の部屋で寝ぼけ顔の少女と出会う。


「眠たそうですね?」


「ん。さっき、起きたとこ……」


 目をこすりながら、ほわっとした口調で、所々毛がはねている黒髪の少女が言う。


「ゆうべは遅くまで会場の後処理にお付き合いいただき、誠に感謝いたします」


 立って話す時の定位置、机の前で白のローブを着る預言者が少女に頭を下げて述べる。


 と次いで、こっちを向き。


「洋治さまにも同様に感謝の意を込めて、申し上げます」


 そして頭を下げる。


「いや、感謝をされるコトでは……――というか、今日は変に改まってますね……?」


 すると顔が上がり。


「私はいつだって謙虚ですよ?」


 途端にいつもの調子になる。


「……そうですか。それなら、よかったです。――ところで、どうして鈴木さんを呼んだんですか?」


「おや、なぜ私が呼んだとお分かりに?」


「ええと――まぁ、その……、なんとなくです」


 ――実際のところは、普段から身だしなみには人一倍気を使っているであろう少女の現状を見て、だが。ヘタに公言するのはあれなので言わないでおく。


「で。乙女の身支度を後回しにさせてまで呼んだ用件は、なによ?」


「それにつきましては、のちほど、改めてお詫びいたします。――従いまして先に、お約束していた話の方を、これより」


「約束してた話? それって、わたしに関係あるの?」


「いいえ、直接的な関わりはございません。しかし洋治さまの身を案じる上で、救世主様の耳に入れるべきと私が判断しました」


 ム――。


「――俺の身を案じる? どういうコトですか?」


「あらかじめ申しますと、今すぐにどうという話ではございません。さしずめ今後の、心構え、といったところでしょうか」


「心構え、ですか。それはその――昨日見た、女神様……? に、やっぱり関係が?」


「お察しのとおりです。今後、女神の来臨(らいりん)によりベィビアの秩序は大きく揺らぐ可能性がございます。その本質は、洋治さまを中心とした懸念とも言えるでしょう」


「お、……俺?」


 ――なんで。


「……――あくまで、私の個人的な推測ではありますが、おそらく此度の目的は洋治さまを主な理由とした来臨です。ゆえに洋治さまの今後の行動が、ベィビアの行く末を左右すると言っても過言ではありません」


「ぐ、具体的には……?」


「かいつまんで言えば、女神の機嫌を損ねない事、でしょうか」


 なる、ほど。


「――ね。だったら、べつに水内さん一人で、どうこうする必要なくない? だいたい、そういうのはアンタの役目でしょ」


 若干寝ぼけ眼のまま、少女が告げる。


「はい、仰るとおりです。私は女神に仕える身、如何なる場合でも主の御身を優先し人力の及ぶ限り世話をいたします」


「なら機嫌とるのも、アンタの仕事でしょ」


「如何にも仰るとおりです。しかし私が抱く懸念は職掌(しょくしょう)届かぬところにございます。従って、洋治さま自身にも気を配っていただきたいのです」


「ふーん。――ま。それなら、水内さんだし、大丈夫なんじゃないの」


 なにを根拠に……。


「はい。私としましても、心の底から、そう思っております。――ただそういった事情を踏まえて、洋治さまにはお詫びをしなければならない事がございます」


「――なんのコトですか?」


昨日(さくじつ)の騒動を弁明する上で、まだまだ話すべき事柄は多数存在します。されど女神が来臨した以上、神の代弁者である私は許可なく真相を語れません。どうか今しばらく、事の追求を保留に」


 と相手がローブを脱ぎ始める。


「……なんで、脱ぐんですか?」


「はい、謝罪の意を身をもって示そうと思いまして」


 それでナゼ脱ぐ。


「――んで。その女神ってのは、どこにいんのよ?」


「おや。救世主様は既に拝見なさっていたと思いましたが?」


 ピタリと脱ぐのを止め、気を引かれるような(おもむき)で預言者が少女に聞き返す。


「見たには見たけど。べつに大して興味ないわよ、わたし」


「おや。そうですか」


 途端に気を落とすような――預言者の顔色が、パッと明るくなる。


「という訳で、女神の話は一先ずこれにて終了とし、挙式の話といきましょう」


 へ?


「――い、いや、女神様は……今?」


「女神は当分、石の中で休眠いたします。さしあたり心配する事もありません。つきましては――ささ、こちらを」


 そう言って預言者が机の上に置いてあった小冊子を自分達に渡す。


「……これは?」


「私独自の経路で選出した挙式の構想です。文体は異世界の言葉に翻訳済みですので、どうぞご覧ください」


 何故に、このタイミングで。


「んー、そね。ちょっと後半に余興が(かたよ)ってるから、少し調整したほうがよさそうね」


「おや。どのあたりでしょうか?」


 そして二人の議論が始まる。


 なんか、当人そっちのけでドンドン話を先に進める親戚みたいだな。


 ――次いで、ふム。と気持ちを切り替え、先日の旅行で浮かんだ考えを胸に、二人の輪に加わることにした。

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