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【完結】異世界から来た女騎士と交際する約束を交わした  作者: プロト・シン
三章【異世界から来た女騎士と愛を交わした】

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第51話〔謝罪の意を身をもって示そうと思いまして〕④

 そうこうして、魔導少女が作り出した空気の層みたいなモノに乗り、直線上に位置する朱竜(ドラゴン)の正面でバッターボックスに立つ野球選手の様なフォームで剣を構えた猫耳のバニーガールが柄から離した前側の手をぶらりとさせる。


 なにをするんだろう……。というか、はやくしないと――。


 ――いつ放たれてもオカシクないほど反り返った前胸部(りゅう)を見る。


 ムム。


 そして視線をゆるふわ仮面に戻す。すると下げていた手の首についていた腕輪が淡い光を放つ、と時をほぼ同じくして振り上げられるその腕の先で集結した小さな発光球が平たい円形状に広がり、色づき――。


 マ、マンホールッ?


 ――上に高く、上がる。と次いで落ちてきた鉄蓋(ソレ)を猫耳仮面のバニーガールが剣で――ドラゴンに向かって――かっ飛ばす。


 うそぉんっ!


 思わず目を疑う。しかし目の前で起きた出来事は凄まじい勢いで口内に炎をチラつかせた竜の首にぶち当たり、一緒くたになって、ふっ飛んでいく。


 お、おぉ……――。


 ――あまりの衝撃に言葉を失う。


「今のうちに、次の行動に移りましょう」


 ム。――と見ると、いつの間にか、バニーガールが床に降りていた。


 次、の前に――。


「なんで、マンホールのフタを……?」


 ――素朴な疑問を、ゆるふわパーマの女子に尋ねる。


「以前職場の同僚と肝試しをしに行った建設現場の跡地で見付け、勝手に拝借しました」


 と、何故か背筋をピシッと伸ばし、仮面の奥から自分(こっち)を見る相手が答えを返す。


 要は盗んだんですね。


 そう思う矢先、仮面を被る女子の前に女騎士が行き。


「先の攻撃は見事でした。是非お礼を言いたいので、名を教えてください」


 次いで差し出される手を見て、あからさまに仮面女子(あいて)が戸惑う。


 むしろ教えないという選択もありだろうか。






 直面する問題に、時間のない中、出した結論は――預言者の言葉を信じ、逃げる。という、論じる必要もない単純な内容(モノ)だった。


 しかし新たな問題として。


「どう、逃げましょう?」


 走れと言われても、そんなに速くは走れない。


「――逃げるって言うか、隠れたらいいんじゃないの?」


 胸の下で腕組みをしていた少女が、その腕を解かずに指でピストルの形を模し、言う。


「いえ。それをするのは、少し後、ですね」


 そして当然、なんで。と、質問が返ってくる。


「今、隠れたら――余計に人を巻き込む事になります。一先ずは、ここからできるだけ離れた人の少ない、いえ、人の居ない場所に――」


 ――なんとなく皆の視線が気になり、一旦口を閉じてから、改めて。


「どうか、しましたか?」


 と、話の輪に居る皆を全体的に見て聞く。すると女騎士が身動ぎ――。


「気に、しないでください。皆、ヨウらしいと思っただけだと思います」


 ――顔をほころばせて告げる。その後、否定的な意見は一切上がらない。


 ムム……?


「ええと。話を、進めますね。――ひとまずはヒト気のない場所に行き、そこで身を隠すなりしましょう」


「隠れるって言うか、倒しちゃえば?」


「……倒せますか?」


 正直、内心はさっきからずっとビクビクしている。


「ま。わたしが倒すわけじゃないけどね。ああいうのは、――アンタたちの役目でしょ」


 そう言って少女が三名の騎士、もとい二名の騎士と猫耳兎(いっぴき)が居る方へ顔を向ける。


「あ、ああ、あんなのっ、ジブンが倒せる訳ないじゃないですかっっ」


 次いで真っ先に短い髪の騎士が慌てた()振りで否定する。


「そんなの、言われなくても分かってるわよ。アンタは、ヒよけか、誰かの踏み台にでもなってなさい」


 ヒよけって、日光とでは訳が違うのだが。


 ――と次に、持っていた剣を収納して、バニーガールがこっちを()る。


「倒し方を考える前に、洋治さんはアリエル様と先に行ったほうが賢明ですよ」


 ム。


「行くって、何処(どこ)に?」


「ここからなら、東側に草原が広がっています」


 方向を指で示し、相手が言う。


「さらに行けば背の高い草木もチラホラあります。うまくやれば潜伏する事も可能です。加えて、城の敷地内なので民家もなく、戦闘向きです」


 なるほど、――凄い。


「ただ西側には、間違っても、絶対に、行かないでください」


「……――どうしてですか?」


 聞くと途端に指で差した方とは反対側へ顔を向ける相手が、ピシッとこっちを見直し。


「実家があります」


 それを言うなら、東側(むこう)には自宅があるのですが。






 ――とはいえ悠長な事を言ってる暇はないので実行に移そうとしたところ、衣装(よろい)を着替えたいと女騎士が言ったので承諾をし、それを得て急ぎ物陰に入った相手を見送ったのち、皆の方を見る。と猫耳仮面の前で腰に手を当てる少女が。


「サバ読み――アンタ、水内さんたちと一緒に行きなさいよ」


 ム。


「……――それは無理です」


「なんでよ? アンタ、ダメ騎士と違って、強いでしょ。一緒に行って、水内さんを守りなさいよ。殺し合いの時に助けてもらったコト、忘れてないわよね?」


 殺し合いて……、ただの行事なのに。


「モチロン覚えています。そうでなくとも、洋治さんは保険なので死守します」


 いや、なんの保険。


「だったら。なんでよ?」


「……――ワタシは、身だしなみに時間を要するので、直ぐには行けません」


 キリリと言わんばかりの角度に顔を傾けて言う、ゆるふわ仮面。の脚を蹴ろうとした少女の足が空を切る。すると立て続けに繰り出される下段回し蹴りが空振りの末、短髪の騎士に炸裂した。


 うわぁ。――痛みでピョンピョン跳ねる騎士を見て思う。


 と視界に白のローブが入り、そっちを向く。


「洋治さま、こちらの事が落ち着き次第、皆と後を追います。故にどうかご無事で。それから抱く懸念はのちほど、必ずご説明いたしますので、今は逃げるコトだけをお考えください」


 伏し目がちに何処か思い悩む様子で預言者が告げる。次いで、いつもの鎧を着ている女騎士の姿を視界の奥に捉えながら言葉を返す。と聞こえてきた遠吠えに振り返り。開いた天井の先、何もいない空を見遣る。



 ***



 会場を覆うほどの図体で家よりも大きな翼を羽ばたかせ、上空に止まっていた朱竜が預言者から抜き取った情報をもとに東へと飛んでいく。


「なんか、見られてたっ――てかんじね」


 空を見上げていた少女が横の預言者に顔を向けて述べる。


「……恐らく、洋治さまを(さが)していたのでしょう」


 と見られていたのが自身である事実を避けて発言する相手の様子を見て、事情を汲み取る訳もなく少女が不確かな確信をもって口にする。


「ま。水内さんが、ああ言うから、わたしはナニも言わないけど。今回はいつもみたいにはぐらかさず、ちゃんとしなさいよ」


「おや。慌ただしい状況でも確りと耳を立てていらっしゃるとは、さすが救世主様です」


 そう普段の口調で返す相手に、次いで正面を向く少女は無言という圧力を掛ける。


「……――ご心配には及びません。私は、私のなすべき事を()し、あの方に尽くすのみです。故に他意や私欲は一切ございません」


「そ。ま、あのカタってのが、ダレのコトかは知んないけど。同じ立場として、信用はしてるからね。ほどほどに立ち回りなさいよ」


「はい。お心遣い、感謝いたします。――さすれば私は、その立場に準じて一度、城へ戻ります。つきましては皆の総括を、救世主様にお願い申し上げたいと思います」


「ん、――それはいいけど。なんで戻るのよ?」


「このまま同伴したところで、私は戦力には()りえません。唯一の役得は、洋治さまの居場所を特定し、皆の行動を助長する術を有効的に活用する事と心得ております」


「……そ、ね。それは必要ね。――じゃ、わたしも、準備してからサバ読みを急かしに行くわ。万が一にでも(とつ)ぎ先が黒コゲになったら、一生後悔するハメになるからね」


 着替えという名の変貌を遂げる為に近場の部屋に入ったバニーガールと、興味津々で付いて行った二人が居る部屋(ほう)を見てから少女は直ぐに顔を戻して言う。


「はて準備とは?」


「乙女ってのはね、いろいろ準備するものなのよ。――だからアンタも、精一杯の用心(オシャレ)しなさいよ」


 (おもむろ)に動き出して少女は、後ろの預言者にヒラヒラと手を振りながら言い、舞台袖へと向かう。――そして、それを無言で見送った使徒の背後に、物陰で身を隠していた黒地の布で装う従者の一人が近づき足を止める。


「……預言者様、必要とあらば私達も皆様と一緒に」


「そのような必要はありません」


 話を聞き終える前に即断する主の言葉に、しかし。と、珍しく反論の声が上がる。も直ぐに従者は押し黙り、俯き加減に口を閉ざす。


「それよりも、国の安全性を脅かす事態の起こりを迅速に、王の耳に入れなければなりません。しかしながら私の足は遅く、差し支えなければ先駆けを出したいのですが」


「ハ、ハイっ。であれば、早速!」


 次いで、主が振り返るよりも早く、従者がその場を離れる。


 ――そうして一人となったフェッタは胸の前で手を握り締めた後、静かに空を見上げ、想い描きながら更に奥底で思う。


 あんなふうに笑わなければ、求めずにいられたのに。と。

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