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【完結】異世界から来た女騎士と交際する約束を交わした  作者: プロト・シン
三章【異世界から来た女騎士と愛を交わした】

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第49話〔謝罪の意を身をもって示そうと思いまして〕②

 開始早々さまざまな努力を無下に過程を無視して現れた即興の魔女に、果敢な姫騎士の指先が向けられる。


「――な、何者ですッ」


 そして発せられる台本にない台詞。


「……毎度おなじみの、魔女でございます」


 どっかの廃品回収車みたいな自己紹介だな。――ではなくて、全く馴染みがない。むしろ行き成り出てきて馴れ馴れしい。


「わ私は、貴方の様な方と面識はありませんっ」


 と、実に率直な意見を述べる姫騎士。次いで、ぶら下げられたまま、魔女役の妹がズンと悲しげに(うな)()れる。のを見た姉が、慌てた様子で、宙に居る相手に小声で何かを言う。


 即興なのにメンタル弱いっ。


「――ぅん、分かった。――……ならば、オマエ達を女神送りにして、魔女の恐怖をその体に刻み込んでやろう」


 両手を掲げるなどの動きも加えて、速やかに持ち直した魔女が舞台上の二人に告げる。


 さすが魔女、凄い精神構造(メンタリティー)だ。


「それでは地上におり立ち。私と決闘をして、――勝敗を決しましょう!」


 出現させた自ら所有する剣の切っ先を対象に向け、姫騎士が正しく騎士を象徴した様な構えで言い放つ。すると先の動きで若干揺れている魔女が、嫌。とだけ返す。


「なっ、なにをっ。それでは話が進まな……。――と、とにかくっ、おりるのです!」


 で再度、嫌。と答えが返る。


 エエ。


 そして魔女が続けて口を開き。


「……地上戦は分が悪い」


 そっちッ? というかヤル気はあるんだ。と、耳をピクっとさせた騎士を見ながら思う。


「なる、ほど。それは詰まり、地上におりなければ、私に勝てると言う事でしょうか?」


 どこか含みのある言い方で姫騎士、もとい女騎士がワイヤーでぶら下がっている自身の妹に問う。次いで魔女、もとい魔導少女が姉にニヤリと笑い。


「……見込みはある」


 途端に騎士がピクっと動く。


「――いいでしょう。久しぶりに、稽古をつけてあげます」


 そう言って女騎士が、剣を手元に引き、構え直す。


 え? なに、この展開。――と思った次の瞬間、魔導少女が開いた手と一言をもって相手を制止する。


「――……何でしょう? 降参するのなら、そう宣言してください。エリアル」


 もう普通に会話してますが。名前も言ってるし。


「……奥の手、出すから待って」


 え、最終手段(イキナリ)っ。


「――……分かりました。それでは、準備が整ったら教えてください」


 言って、女騎士が剣を下ろす。


 もはや劇そっちのけになってる気が。


 で、そんな不安を助長するように、返事をした魔導少女がゴソゴソと外套の内側から野球ボールほどの赤い球を取り出し、パッっと手放して舞台に落とす。すると瞬く間に真っ白な煙が舞台上を覆い尽くし、視界が白一色に染まる。


 え、ナニこれ。え、え?


 次いで煙の中から誰かの、見当は付く、激しい咳が聞こえてくる。


 だ、……大丈夫?


 ――で、そんな心配とは裏腹に何事もなく、晴れていく煙。しかし、そうして無くなった幕の後、舞台上に、さっきまでは確実に居なかった――。


 え?


 ――ゆるふわパーマの頭頂に猫耳らしきモノをつけた謎の仮面を被るバニーガール姿の人物が、見たことある剣を手に、赤い球が落ちた場所で立っていた。


 な、なにィ……?


 すると横に居る少女が身動ぐ。


「やるわね。この発想はなかったわ」


 イヤなんで、認めてるのっ。普通怒るでしょ、脚本家としてッ。


「ん――、あ。そうだ」


 と発して、少女が緑色の石棒を手に取る。


「――フェッタ、イイかんじに()きつけて」


 え? と思う。その後に続き、放送の入りを感じさせる短い雑音が会場に響く。


『……――会場にお集まりの皆さまへ、ご忠告申しあげます。これより舞台上では女人四名による乱闘方式での争奪戦が開始いたします。何卒(なにとぞ)ご理解の上、自身の身を、お守りください』


 イヤなんで、そうなるのっ。というか、ナニを争奪するのかも教えてッ。


『並びに勝者には、現在会場内に居る、とある洋治さまからの熱い抱擁(ほうよう)とキッスが贈られます。ゆえに、ご声援のほど、よろしくお願いいたします』


 ふぇッ? ――てっ。


「いや、さすがにこれは――」


 ――と見た、何故か腕まくりをしている少女と目が合う。


「なに、を……?」


「ん。ちょっと、参加してくるわ。全員、ブッ飛ばしてくるから、待ってて」


 いやいやいや。


「止めないんですかっ?」


 次いで、なんで。と答えが、小首を傾げ、返ってくる。と続けて舞台の方を指し――。


「全員ヤル気満々よ」


 ――と少女が言う。ので目を向けようとした矢先、結構な衝撃音と共に村娘が足元にふき飛んできた。


 エエ……。


 そして、目を回している娘から転じ、上げた視界に手の平を前へ突き出している魔導少女が――(おもむろ)に口を開く。


「……あと二人」


 うわぁ、超ヤル気だ。


 しかしそんな少女に背中を向けたまま猫耳仮面のバニーガールが、一歩前へと踏み出し、女騎士に剣を構える。


 ム。


「――……なる、ほど。二対一、という訳ですね。――何方(どなた)かは存じませんが、その構え方、相当の腕前です。しかし、今の私を倒すのであれば、相応の覚悟も持って挑む事をおすすめします。そうでなければ、怪我では済みません」


 下げていた武器を構え直し、女騎士が対峙する相手に告げる。


 なんだろう。礼儀正しいのに、スッゴク失礼な事を言ってる気もする。


 と思うや否や、今にも事が起こりそうな雰囲気を醸し出す場に魔導少女の開いた手と一言が割り込み。姉がすかさずそっちを向く。


「――……何です?」


「……コレ、取って」


 ぶらぶらと揺れる少女が、自身を束縛する背後のワイヤーを指し、言う。






 そうして始まった女人四名――。内一名は開始前に強制退場し横で観戦。――による乱闘が舞台上で繰り広げられる。


 完全に演劇の事、忘れてるな。


 ――しかし思いの外、観客のウケはよく。今のところ止めに入る要素がない。


「いやぁ、それにしても皆さん強さが尋常ではないですねぇ」


 自分を間に挟み、脚本家の少女とは反対側で舞台を観ていた村娘役の騎士がしみじみと口にして、――こっちを見る。


「ヨウジどのは、本当に勝った相手に接吻(せっぷん)するのですか?」


 接吻て……。


「――まぁ普通にしないです」


 で何故か横の少女が身動ぐ。――が何も言わず。


「勝ったのが、ジャグネス騎士団長でもですか?」


「……――しない、と言うか。するべきではないと……」


 特に、この状況では。


「前から思っていたのですが、ヨウジどのは不能ですか?」


 あまりにも唐突で思い掛けない質問に、もし口に何かを含んでいたら吹き出していたであろう衝撃を受けたのち、ハイと聞き返す。


「ええっと、――ワタシが言うのもなんですが、ジャグネス騎士団長と一緒の家に住んでいて何もしないのは、……失礼? な気がします」


 珍しい真顔で相手が言う。


 ムム。


「それは――」


 ――途端に舞台側で小さな悲鳴が上がり、そっちを見る。と、白熱する戦いが客席に及びつつと思うそばから剣で弾かれた魔力の弾が観客近くの床を貫き――穴を空ける。


「ちょっと、ヤリ過ぎてるわね」


 他人事の様に言ってますが、(あお)ったのは――とうとう前の方に居た客が席を立ち、逃げ始める。――て、なに自分も悠長(ゆうちょう)に構えてるんだ。


「――鈴木さん、三人に直ぐ止めるように言ってください」


 次いで、分かった。と言って、少女が石棒を手に取る。――が。


「ダメね。熱中し過ぎて、聞こえてないわね」


 もしくは、アレだけ激しく動いていれば、イヤホン自体を落としてる可能性もある。


「――どうする? て言うか、サバ読みにはインカム渡してないから、どのみちムリよ」


 あ、気づいてた。いや、そりゃそうか。――て、そうではなくて。ええと……。


 考える。その間も、徐々に被害は広がっていく。


 ……よし。


「先ずは安全を優先したいので、――ホリーさん」


 と話し掛けた相手が、声を出し、反応する。


「客席で避難誘導をしながら、観客を守ってください」


「え。――……どうやって?」


「誘導は他の会場関係者に声を掛けつつ行ってください。観客をどう守るかは、ホリーさんに任せます」


「むむ……――わ、分かりました」


 すると、少女が自身の小さな手の平を拳の側面でポンと叩く。


「安全第一なら、今のうちに天井開けとくわ。物が落ちてきたら危ないでしょ」


「え、開くんですか? ここの天井」


「開くわよ。そう出来るように、フェッタにお願いしたからね」


 いったいなんの――と今はいいか。


「なら、お願いします。あ、あと、預言者様を呼んで――」


 ――瞬間、背後に人の気配を感じ、振り返る。と其処に若干驚いた顔をした白のローブを着る当人が居た。


「おや、するどい。しかし、なに故に分かったのでしょうか?」


「……――なんか、パターンと言うか、来そうな雰囲気だったので……」


「なるほど。さすれば次回は工夫を凝らし」


「凝らさなくていいです」


「なんと。――洋治さまは、私の事がキライなのでしょうか……」


 そう言って相手が顔を両手で覆い、肩を(すぼ)めて小さくなる。


 え、ウソ。まじで。


「――ス、スミマセン。そんなつもりで言った訳では」


 と近付いた途端に、顔を覆っていた手がワッっと言う声と共にバッっと開き、驚く。


「あ、引っ掛かった。ふふ」


 おこるでしかし。

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