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【完結】異世界から来た女騎士と交際する約束を交わした  作者: プロト・シン
三章【異世界から来た女騎士と愛を交わした】

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第33話〔自分も 同じ気持ちですから〕②

 そんなこんなで集合した皆と、預言者の先導で向かった城の上階にあった小さなテラスの様な場所で久しく会っていなかった二人に挨拶をする。


「ヘレンさん、クリアさん、お久しぶりです」


「ハイ、お久しぶりです。――名を覚えてくれていたのですか?」


 以前会った時と違い、黒の布地を主に使った装いではなく、他と同様の身なりをした二人の内一人が、前回と同じ様に相方の分を補う感じで前面に出て、言葉を返す。


「ええと……実は、どっちがヘレンさんでクリアさんなのか、……分かってなかったりします。スイマセン」


 取り巻いている雰囲気で判別は出来るものの、情報が少なく容姿もかなり似ている。


 あ。――もしかして?


「正直な人なんですね、あなたは」


 くすくすと笑いながら相手が言う。


 ムム。


「二人はひょっとして、双子ですか?」


「ハイ、私とクリアは双子の姉妹です」


 ということは、いま話してる方がヘレン。


「なるほど。――ちなみに、二人は何故ここに?」


「私達は預言者様の(めい)で、皆様にお飲み物を提供する役を(にな)っております」


 ああ、だから――。と、飲料類の置かれた台を挟み話しをしている状況に、納得する。


 椅子はないが。ビアガーデンみたいになってるのは、そういう事か。


「――けど、仕事とはいえ、自分達のことは気にせず二人も楽しんでくださいね」


「……――ハイ。お気遣いありがとうございます」


 そう相手が言った次の瞬間、遠方で音と光が弾け瞬いた。






 次々と夜空に打ち上がる花火、もとい魔火(まび)を立ち尽くし観ていたところに極妻がやって来る。そして酒類と思わしきモノを二人に頼み、こっちを向く。


「洋治はんは、飲めへんの?」


 またなんとも言えない話し言葉だ。


「飲めなくはないんですけど、苦手で」


「そないな感じやね」


「はい、アルコールの低い物なら付き合い程度に飲んだりはするんですけど。こっちに来てからは種類も分からないので、一度も飲んでないですね」


「それならばワタシのオススメを如何(いかが)です? 社交の場でも一般的な軽めの物ですよ」


 と、唐突に話し方が変わる相手に――。


「――なるほど。そういう事は今後も知っておいて損はないですね。ただ量は少なめで、お願いできますか?」


 そして承諾する相手が、自身の分を持ってきた双子の一方に注文を入れる。






 ム。――これは。


「紅茶……みたいな、味がしますね」


「そうです。紅茶を原料とした混成酒、それをミルクと割った物ですので飲みやすいと思います。事実、似た物が向こうの世界にも存在します」


 ム、やっぱりミルクか。――けど。


「冷えているのに乳臭くもなくていいですね、これ。単純に好みです」


「お口に合いましたか、それはよきことで」


 ――ふム。


「タルナートさんはどうやって、それほど多種多様な言葉を覚えたんですか?」


 括弧(カッコ)風貌(ふうぼう)も。


「言うまでもなく向こうです」


 自身のグラスに口を付けて、俯き気味に極妻の恰好をした相手が答える。


「……けど、石の力があれば、そこまで頑張らなくても……――持ってますよね? タルナートさんも、石がついた何かを」


「そうですね。これまで持っていた旧型を今日の試合後、フェッタ様に新しい物と替えていただきました」


「旧型……?」


「石の性能を向上させるには、それ相応の情報が必要です。――以前お渡しした石の事を(おぼ)えてますか? アレには、ワタシが集めた情報が詰まっているそうです」


「そう、と言うのは?」


「石の製造法や用途を知っているのはフェッタ様だけです。ワタシはただ、ご命令により持ち歩くのみが役目、詳しい事は知らされていません」


「なるほど――」


 ――そういえば、最初の頃に比べて会話する時の違和感は減った気がする――。


「――ところで、話は変わるんですが。向こうで困ってる事とかってありますか?」


「困っている事ですか。生活する上では取り分けて……――しいて言うなら、風呂です」


「風呂? 使いづらい――……そもそも無い、とかですか?」


「風呂場はあります。ただ浴槽の中に転移空間があるので、使用する訳にはいきません」


 え。


「――なら、どうしてるんですか? まさか……」


 思わず相手の全身を眺める様にして、身動(みじろ)ぐ。


「ェ。ァ、ナっナニを――想像しっ」


 え、なに?


「いや。あの、タルナートさん、お風呂に入ってますよね……?」


「あたりまえです! ギトギトのままナニをッ?」


 ギトギトッ? なにを――というか、双子に変な目で見られているのだが。


「……――ちょっとナニを言いたいのか分からないのですが。タルナートさんはいつも、どこから転移を?」


「地下の転移装置やけど……――ワタシにまで、ナニを……?」


 なんだろう。下半身は逃げ腰なのに、上半身は前向きなのだが。


「ええと。向こうの世界で暮らしていた時に住んでいた自分の部屋とも転移装置は繋がっているので、よかったら使ってくださいね」


「そんな設備までッ?」


 設備て、大げさだな。


「まぁ風呂場に使える浴槽は備え付けられていますから、ご自由にどうぞ」


「ェ? 風呂? 風呂の話――を、さっきから……?」


「はい。最初から、風呂場の話をしてます」


 一体なんの話をしていると思っていたのだろうか。


「……――けれども、お邪魔になりませんか?」


 落ち着きを取り戻した様子で相手が言う。


「どうしてですか?」


「二人の……(いこ)いの場に、邪魔をするかもしれません」


「憩い――というか、向こうの部屋は基本、使わないですよ。なので、ほんと好きに使っ

てください」


「ェけれど、それならドコで関係を持って?」


「関係? 誰と、なんのですか?」


「現状ならアリエル様と、男女の関係に……」


 男女の関係? ――あ。そういう事か。


「そういうのは、結婚すらしてませんし、まだ先なのでは?」


「ェ? ……それはつまり」


 いや、まてよ――。


「――もしかして、こっちの」


 と言ったところで――。


「お話し中、申し訳ありません」


 ――振り返る。と少し離れた所で預言者と話しをしていた女騎士と、騎士の妹が居た。


「あれ、話は終わったんですか?」


「ハイ私の方は済みました。――……ヨウは?」


 ム。


「ええと――」


 極妻の方に体を戻す。そして、小さく頭を振る相手を見、再び振り返る。


「――こっちも終わったみたいです。どうか、しましたか?」


「そう、ですか。えっと、一緒に、何か食べませんか? 夕食がまだなので」


「あ、そうですね。なら――タルナートさんも一緒に、どうですか?」


「ワタシはあとで、適当につまみます」


「そうですか。ならお先に、――行きましょう、ジャグネスさん」


 次いでハイと答える女騎士の後を、極妻と双子の三人に一声かけてから、ついて行く。






「ユーリアと、何の話を?」


 さっきまで居た所から若干離れ、飲食物が置かれた台の前に来て女騎士が感情を隠す様な表情で聞いてくる。


「いろいろ話した気はしますが、発端はこれを教えてもらいました」


 言って、手に持っている小さめのグラスを相手に見せる。


「それは……?」


「こっちでは一般的なお酒だそうです。ジャグネスさんも、飲んだことあるのでは?」


「ぇ。ぃ、いえ、私はあまり飲む方では……」


 実際、飲んでいるところを見た事はない。


「まぁ俺も、基本は進んで飲みませんよ」


 と念の為に言う。が何故か相手は自分のグラスを見続ける。


 ム?


「――どうか、しましたか?」


「ぇ? いえ。あの、その……――」


 ――で、何故か不自然にグラスから目を逸らす。


「……――よかったら、飲みますか? それとも新しいのを?」


「ぁっ新しい物を用意するほどの量はっ」


「なら、自分の残りでよければ」


 相手の前にグラスを差し出す。


「で、ですが、明日……騎士とし……務めを……」


 どうしてか独り言の様に相手が自問自答し始める。なので答えが出るのを待つ傍ら、魔導少女が手を伸ばして届かない皿を代わりに取って渡す。で――。


「……少量なら」


 ――再び待つ傍ら、他所に目を向ける。するとひっそり乾杯をする二人の内、短い髪の方が飲んだ瞬間に騒ぐ姿と後ろに回す少女の片手に小瓶(こびん)を見る。――で。


「その勢いで……」


 いや、長いな。――……勢い?






 最終的に飲まずと決めた女騎士が、腹を満たし手も空けて夜空に瞬く火花を観ていた折、自分の方を見る。


「ヨウは、こちらでの生活に、もう慣れましたか?」


「そうですね。意外に早い段階で」


「ではその、向こうへ帰りたいという気持ちも……」


 ム。


「――今のところは、ありませんよ」


「今のところですか……」


 ふム。


「冗談です。特別問題でもない限りは、帰る積もりなんかありません」


 そして嬉しそうでいて、やや驚いた顔をする相手が。


「……ヨウでも、ふざけたりするのですね」


「気に(さわ)りましたか……?」


「いえ、その様な事はありえません。――私は、もっとヨウの事が知りたいです。駄目でしょうか……?」


「……――駄目ではないですよ」


 それに――。


「自分も、同じ気持ちですから」


 ――じき約束も。






 そうして魔火が終わり。解散の雰囲気になった矢先、思い出した声で少女が。


「あ、忘れてたわ。皆で集合写真、撮りましょ」


「カメラはあるんですか? あるなら、撮りますよ」


「ダメ、水内さんは真ん中よ。撮るのは、二人のどっちかに、やらせればいいでしょ」


 と言って、少女が双子の方を指す。


「それはちょっと……。俺は気にしないので、二人にも入ってもらい、撮りましょう」


「――それならば、ワタシのデジカメを使って撮るのは如何ですか? タイマー式です」


 近くに居た極妻が、少女に近寄りながら、言う。


「じゃ、そうしましょ」


「では撮る場所を決めがてら、他に声を掛けてきます」


「ん、お願い。わたしは二人に声、かけとくわ」


 次いで承諾して、極妻が行動に移る。


「私は洋治さまの隣で、よろしいのでしょうか?」


 不意に預言者が横の少女に問う。


「隣は騎士さまでしょ」


「さすれば反対側に」


「そっちはわたしよ」


「ならば背に」


「写らないわよ?」


「であれば、頭に乗るしかありませんねェ」


 自分の前、空いてますよ。






 撮影に必要な光源を魔導少女に出してもらったのち、並び終えて――。


「では五秒後に撮ります」


 ――極妻がデジカメを離れ、位置に入る。――そして。


「ダメ騎士、靴のひも、ほどけてるわよ」


 下を向く疑問の声、同時にシャッター音。で上がる声に――そもそも紐靴ではないような。と思いつつ、撮り直しの要求を黙殺する遣り取りを、眺める事にした。

【補足】

 作中に出た≪混成酒≫は、実在する紅茶のリキュールです。m(_ _)m

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