悲劇と奇跡(4)
「さて、それで今の話を聞いたら分かると思うんだけど、魔法を知ったあなた達には魔法世界に転生してほしいんだよね。」
神様は笑顔で言うが、バリバリの日本人である和樹と美香は戸惑う。
「違う世界に転生か……見知らぬ場所って怖いなぁ」
『その前にきちんとした生活って、送れるのかしら?』
二人の不安に神様は何も心配する必要はないと答えた。
「大丈夫!こっちからも声だけだけど、アドバイスするし。困ったら助けてあげるから」
「……それなら大丈夫なのかな?」
とりあえず神様が付いているなら、なんとかなるような気がした和樹。それに忘れているが、時間を止められるような常識外の存在だ。何かあっても、対処してくれるだろう。
「それで、お願いって、その転生のこと?」
「それとは別なの。その世界では、モンスターと呼ばれる存在もいてね。だからこそ、ゲームのようなクエストがあるの。それを積極的に受けて、平和になれるような手助けをしてほしいの。」
最初に神様が美香を助けるときに出した条件について和樹は疑問を持った。
神様は和樹を指差して、言う。
「今、美香と呼ばれる意識があなたの中にあるのは分かるね。でも、美香はあなたの視界を共有しているから見ている世界も似ているの。」
人の感覚によってどのように見えるかは違っても、見る観点が一緒だと似た世界を見ることになる。
「さっき説明したように魔法というのは世界の見方を共有したら発動できるから、普通なら二人以上が必要なのだけど、あなた達は一人で二人分の影響力を及ぼせるから、一人で魔法が使えるの。」
『……つまり異常?』
そう、よくある異世界転生物語で特殊な力を持っているような話と同じことである。そして、大抵そういった物語は主人公は強い。
「そう、その異常な力で、どんどん問題を解決してほしいの。私は一応神様という存在だから、あまり直接の干渉は上司に怒られるんだよね。」
神様にも上司がいるらしい。よくわからないが、上に逆らえないのはどこも同じなのだろうか。
「まあ、わかった。……これ、断れないんだよね?」
「断ってもいいけど……フフッ♪」
その笑顔は怖いっ!何を考えているのか分からなくて、断れない。
「分かったよ、頑張ってみるよ」
「ありがとう!それじゃ、早速行こうか?」
そして、神様は指を鳴らす。それは、美香を救う奇跡を起こしたときのように。
そして、奇跡はまた起こる。時間の止まっていた世界にひびが入る。それはもう、大きな亀裂が空間に入っていく。
「え?え?何が起こるの?」
『カズ、なんか視界が揺れてない?』
地面が、というより空間が揺れている。そして、その空間のひび割れは和樹の足もと付近に、より多く入る。
「そういえば、自己紹介をしていなかったね」
自称神様は和樹の目を見て言った。
「私はクロト。あなた達を【二人の世界】へと案内します!」
そして、和樹と美香、一人だが二人という不思議な転生者が奇跡の起こる世界に訪れる。
ビューに1が付くと、なんか感慨深いです。これからもよろしくお願いします。