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二人の世界  作者: folly
3/18

悲劇と奇跡(2)

『彼女を助けてあげようか?』


声はそう言った。

頭に響いて来る感じだ。だが、どこから聞こえてくるとか、そんなものは関係ない。それは和樹にとって、救いの声だった。


「頼む!助けてくれ!」

『あ~、ちょっと待ってね』


突然、世界が止まる(・・・)。周りの喧騒も、時間も、もちろん美香から流れ出る血も。


「ふぅ、これでよし」


今度は和樹の後ろから聞こえてきた。

時間が止まり、常識から離れた現象に呆然とするが、声のしたほうに振り返ると、女性がこちらに歩いて来る。


「この世界は、と……あれ?魔法を感知したのに、魔法なんて誰も信じていない世界?」


何もない空間を見ていた女性は困惑気味のようである。しかし、今の和樹にそのことを気にしている余裕はない。


「助けてくれるのは、あんたなのか?」

「ん?そうだよ、だって私は神様だもん」

「……は?」


流石に色々なことが起こり過ぎているために、状況把握が間に合わない。重要なこと、助けてくれる事だけ理解する。


「じゃあ、頼む!」

「その代わり、お願いが───」

「何でもするから、早く!」


急かす姿に自称神様はクスッと笑い、そして指を鳴らす。

すると、美香の身体が光り出し、輪郭が崩れて、拳大の球になっていく。


「お、おい。大丈夫なのか?」


流石に不安になったが、自称神様はその球を掴んで、和樹に向かって投げた。それはもう、立派なフォームで。


「フンッ!」

ビュッ


ゴンッ

「痛っ!」『痛っ!』


そこそこの速度で投げられ、和樹の額に当たり、砕ける球。それと同時に二人の悲鳴が聞こえた。

それは叫んだ一人である和樹にもきちんと聞こえ、慌てて周囲を見る。

そこの神様がよくわからないドヤ顔しているが、無視である。美香の声だったからだ。


「どこだ?美香姉!」

『ここだよ』

「どこだよ!?」

『カズの頭の中』

「は?」


またしても理解出来ない現象だった。しかし、美香の声が聞こえるのも事実。

和樹には、まったく分からないので、自称神様に説明を求めることにする。


「これはどういうことだ?」

「うーんと、ね───」


美香の身体は損傷が激しいため、助ける方法は二つだった。それは彼女を治すか、意識だけどこかに移動するか。

そこで、自称神様の都合で意識を移す方法をとったらしい。


「都合って?」

「それは、さっき言ったお願いのことだよ」


先程の奇跡を起こす前、何か言っていたが和樹に聞いている余裕はなかった。なので、具体的なことをまったく知らない。


『えぇ!?適当に答えたの!?』

「美香姉が助かるって聞いて、悠長にしてられないって」


あの場で断ることは無理なので、実質脅迫だったが、美香のためならどんなことでもする気だった。


「それで、お願いって?」


和樹の疑問に自称神様は答える。


「二人には魔法の世界に転生してもらいます!」


「……ん?」『……へ?』


本日に何度目かの理解出来ない発言であった。

まさか、最初にして上手く着地出来るか不安になるとは……。見切り発車って怖いですね。

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