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二人の世界  作者: folly
2/18

悲劇と奇跡(1)

何回かに分けて世界観の説明を頑張っていきます

それは少し寒くなってきた秋のこと。

授業が終わり、家に帰る途中に姉である美香と出会い、一緒に歩いていたときにそれは起きた。


他愛もない話をしながら、和樹の少し後ろを歩く美香は、ふと嫌な予感を感じて自分の後方を見た。


「でさ、美香姉。やっぱり思うんだけど───」

「カズ、危ないっ!」

ドンッ!


後ろを振り向いた美香が突然和樹を押し飛ばす。


「へっ?」


それはとても強く、和樹が前に押し出される。


「何すん───」


振り向きながら、押されたことに文句を言おうとする。


しかし、和樹が見たのは、目の前の姉に迫るトラック、そして微笑む彼女の顔だった。


キキィィィィイ───ズドンッ!


人と車の衝突音なんて初めて聞いたな、なんて場違いなことを思った和樹。

美香は迫り来るトラックに何も出来ず、撥ねられ、少し離れたところに転がった。


「……美香姉?」


ふらふらと、おぼつかない足取りで美香に近づいていく。彼の言葉に、彼女からの返事は、ない。

美香の周りには、明らかに危険な量の血が流れている。


「……ははっ、冗談だろ?」


夢のように感じて美香の手を取ると、冷たくなり始めている。

それが現実であることを証明しているようで、和樹の世界は色を失っていくようだった。


周囲では、救急車を、怪我人が、と人が集まってきているが、そんな人達は彼の意識には入ってこない。美香以外の全てのものがシャットアウトされていく。


「起きてくれよ……っ」


自分では何も出来ないことに苛立つ。姉を救う方法が欲しい、その気持ちで一杯だった。


そして、彼がふと想像したのは、ゲームでよくいる魔法使い。手を翳して呪文を唱えれば、奇跡を起こす存在になりたいと思った。


「……」


彼は何も言わず、彼女に手を翳す。それがどんなに荒唐無稽でも、すがりつきたかった。そうしないと、自分も壊れてしまうから。そして、静かに想像する。自分の家族といつも通りの日常に戻ることを願って。




美香は撥ねられてからも、和樹を薄らと見ていた。まだ彼女の意識は残っていたが、身体は動かず声も出ない。そして、美香も和樹しか見ていない。


(カズ、泣くなよ)


そう言いたい。手を伸ばして、頭を撫でてあげたい。そう考えても、実行に移せない自分が歯痒かった。

その時、和樹は美香に手を翳す。


(カズ?)


最初、和樹がどんなことを考えているか分からなかった。それでも、なんとなく彼の考えていることが、なぜだが少しづつ分かってくる。


(……)


美香は内心笑ってしまったが、嬉しかった。和樹は美香のために必死になっている、そのことに愛情を感じる。無理とわかっていても、奇跡が起きたりしないかな、なんて思った。


それが偶然にも、和樹が美香を救うという想像を二人がして、世界の見方が一致した瞬間であり、これからの運命を変えた瞬間であった。


二人に声がかかる。

何故か他のことはシャットアウトしていた二人の耳に入ったのは、綺麗な声だった。


『彼女を助けてあげようか?』

小説を書く難しさを実感しております。何とか時間を見つけていきたいです。

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