ダンジョン突入(3)
遅くなってしまいました……。
お付き合い、よろしくお願いします。
火の雨が止まる。
辺りは土埃が舞い、はっきりと見えない状態である。
「やったのか?」
『カズ、それフラグ……』
ギャァァァオオオッ!!
自分のフラグのせいだと信じたくはないが、未だ健在だとわかる咆哮が聞こえてくる。
「報告通りの防御ね。なら、これならどうかしら。」
そう言って、アリスは共有している世界を塗り替えて行く。
「……凄え」
『……わぁ』
次なる世界は、空中を剣が舞う。
ロングソード、カットラス、グラディウス、エストック、フランベルジェ───。
この場にいる人の知っている剣が次々に現れる。それぞれ形は違っても、目的は同じである。すなわち、目の前の敵を討つ。
「さあ、無数の剣を受けてみなさい」
アリスが手を振り下ろすと、ある一つがTレックスに向かって動き出す。
それを追うように、浮かんだ様々な剣が動き出す!
ギャァァァアアアッ!!
それは悲鳴か奮起か。
身体のあちこちに刀傷をつけ、それでもなお立ち続け、和樹達の前で抵抗を続ける。
身体を捻り、尾を以て薙ぎ払う。大口を開け、喰らおうとする。
最初より勢いは落ちているものの、それでもTレックスの動き一つ一つが脅威である。
「むう、耐えるわね……」
アリスもここまで耐えることは想像していなかったらしい。
「なあ、美香姉。俺たちも何かしたほうがいいかな?」
『そうね……ちょっと、やってみる?』
「まあ、ものは試しかな。アリスさーん!」
死ぬかもしれない状況で、試しも何もないのだが、二人には出来る実感があった。
「ちょっと俺らもやってみていいですか?」
「やるって何を?」
「あいつを殴ってみようかと」
「えぇ……クロト様、いいですか?」
今まであまり喋らないクロトにアリスは確認する。
「なんで私に確認?あなたの学院の生徒になるから、あなたの判断いいわよ?」
「……じゃあ、危なくなったら困るから、そうね……3分だけ前に出てよいことにします」
「ありがとうございます!美香姉、許可出たぞ。」
『じゃあ、やりましょうか』
そう言って和樹はTレックスのほうに近づいていく。
近くにいたフィジクに止められそうになるものの、アリスが事情を話す。
フィジクは驚きつつも、アリス学院長が言うならば、とその場を下がる。
グゥゥゥウウウ!
「はあ、でかいな。こんなのが昔いたのか」
『実際に見られて感動だねっ!』
唸っているTレックスに躊躇うことなく近づき見上げる。
昔、地球を支配していたという生物に感動を感じていた。
「時間もないし、始めるか~。美香姉っ!」
『了解!』
そう言うなり、和樹はTレックスの目の前の空間、つまり地面から数メートル離れたところにテレポートする。
「は?」
それは後ろにいる誰かの声だったが、無視。
目の前にある頭を思いっきり蹴り上げる。普通の人間ではびくともしないはずだが、魔法で出来ると思えば簡単だった。
蹴り上げられたTレックスは直立ちになる。
『もういっちょっ!』
再度美香はテレポートをイメージ。和樹はがら空きの足もとへと現れる。
「そぉいっ!」
いわゆる足払い。これも思いっきりやれば、Tレックスの身体は宙に浮く。
そして、和樹は先ほど剣の降るときに見た日本刀、美香は真っ二つに切れるイメージをする。
ザンッ!!
和樹は手に持った刀を振り切り、静止する。
宙に浮いていたTレックスは言葉通り真っ二つになり、落ちてくる。
『あ……』
宙で切ればかっこいいと思い実行したが、それは二つに割れた身体の間に空間があればこそである。
今回は綺麗に切れたのか、そのまま落ちてくる。和樹のいる場所目掛けて。
「み、美香姉っ!」
『ら、ラジャ!』
慌てて最初いた、アリスたちのもとへとテレポートする。
ギリギリのところで逃げ切った和樹と美香を待つのは、周囲の驚愕の目だった。
読んでいただき、ありがとうございました。
少しはチート感出せた……かな?
あと、和樹、殴ってないことに気づきました。