初めての街 プリム(2)
見て下さってる方々、ありがとうございます!
2016/1/15 矛盾点があったため、少女の描写を変更
「これは、また……」
『すごく大きいね〜!』
目の前にある石造りの壁を見上げる。
二人にとってこの世界で初めての街、プリム。そこは周囲を石造りの壁によって囲まれた円形の街で、あまり危険な生物がいないために、安全な街として有名である。
「しかも、ダンジョンがあるってことで、お宝求めて多くの人が来るから栄えてるんだよ」
「なるほど、やっぱりダンジョンってそういうものなのか」
和樹達は街の中に入るために、関所の列に並んでいた。
同じように並んでいるのは7,80人ぐらいだろうか。商人のように荷車を引いている者や鎧と剣を身に着けた者もいる。
『ねぇねぇ、カズ!あれって、馬なのかな!?』
「うわっ、なんだあれ……」
並んでいる商人の一人が連れているのは、荷車を引かせるための馬。ただし、6脚。
「クロト、あの不思議生物は何だ?」
「いや、あれは君たち二人もよく知ってる馬だよ?」
6脚の馬なんて、見たことがない。和樹が困惑していると、
『……もしかして、魔法?』
美香が自信なさげに答えた。
「正解。商人の、速い馬というイメージと、馬自身の、自分は速いというイメージから魔法が使われているね。」
「それなら4脚でも、速くなるような魔法でいいんじゃないのか?」
「そこが個人の世界の見方ということ。あの商人と馬は、速くなるには脚を増やせばいいと考えたし、素直に速度が上がると考えてもいい。」
『なんか、難しいんだね〜』
人それぞれ世界をどのように見るかは自由で、結果は同じでも手段は千差万別なのである。
「───オラッ、どけよ!」
その時、前方のほうから、怒鳴り声が聞こえてきた。
クロトがその方向を確認し、
「あらら〜、割り込みがいるね」
「定番かよ……」
タンクトップに金属製の胸当てをつけ、剣をぶら下げた男が、小さな女の子を脅しているようだった。筋肉隆々なことがわかり、見るからに強そうではある。
女の子は怯えているのか、そこから動かない。
『カズ、助けなきゃ!』
「そうだな」
和樹は列を離れ、その男に近づいていく。クロトも後ろを付いてくるが、途中で何か気づいたらしい。
「あれ?あの娘は……」
その呟きは和樹達には聞こえなかった。
相変わらず怒鳴る男と動かない女の子のところまで歩いていく。
「おい、おっさん」
和樹が声をかけるが、その男はこちらを見ない。もちろん和樹は、イラッときた。
「おい、筋肉だるま」
ブフォッ!
見ると脅されていた子が肩を震わせている。
初めてその女の子をちゃんと見ると、ローブを羽織っているが、そのローブもお世辞には綺麗とは言えない。
「あ?ガキ、死にてぇのか?」
男が和樹のほうに身体を向けた。和樹より身長が高く、見下される感じになる。
「死にたいも何も……俺は見たまんまに表現したんだが。とにかく、割り込みは良くないと思うぞ」
「何言ってやがる。俺のような強いやつが優先されるのは当たり前だろ?」
本格的にダメ理論だった。
「美香姉、こいつどうしよう?」
『とりあえず殴っておけばいいんじゃない?』
「でも、殴るだけでいいのかな?」
『こういう強いやつが上理論の持ち主は、それでいいと思うけど……』
「じゃあ、それで───」
「何一人でブツブツ言ってやがる!?」
「え?」『え?』
一人?
ずっと美香と話していたのに、一人と言われ困惑する和樹。
『もしかして、私の声って聞こえない?』
「あぁ〜」
和樹の意識にいる美香の意識。だから美香の声は和樹にしか聞こえないらしい。
「じゃあ、クロトが凄いのかなぁ」
なんて関心していると、
「死ねぇっ!」
とうとう耐えきれなくなったのか、苛立ちを隠さず、抜刀して襲ってきた。
「放置してたからって、いきなり剣とか……」
『野蛮な人嫌い!』
イメージは氷。
美香は男の動きを止めるため、魔法で両足を地面と一緒に凍らせる。
そして、和樹は右手を男の腹に置き、そこから爆発が起きる。
「吹き飛べっ!」
ドカンッ!
『あ、やばっ!』
美香は咄嗟に和樹の身体表面を覆うバリアを展開。理由は単純、和樹の起こした爆発は和樹本人にも影響が来たからだ。
「ごほっ……ありがとう、美香姉」
『もぉ〜、ちゃんと考えて行動してよね』
爆発で巻き上がった砂煙が消えると、白目を剥いて倒れ込む男の姿。
「とりあえず、終わり良ければすべて良し、でいいかな」
警備のような人が集まってきている中で、安堵する和樹だった。
読んでいただき、ありがとうございます。
切るところが見つからず、長めになってしまいました。
もっと文章表現が上手くなりたいです……