初めての街 プリム(1)
『うぅ、痛い……まさか、久しぶりに痛みを感じるとは……』
クロトは再び声だけとなり、その声は驚きを隠せていない。
「そりゃあ、自業自得だ」
『そうだそうだ。カズと私を危険な目にあわせるからよ!』
もちろんクロトにも、危険なことをさせている自覚はあったし、本当に危ないと思ったら、助けるつもりではあった。
しかし、和樹達は無事成功したため上機嫌で声をかけたら、反撃されてしまった。
『ぐぅぅ……ちょっと待ってください』
そう言うと、和樹の前にクロトが現れる。もちろん身体を持った実体として。
「まさか、神である私に干渉出来るなんて。すごい人達を見つけたのかもしれません……」
『普通出来ないの?』
和樹も美香も、今の自分たちなら出来ると疑わなかった。それで実行し、実際にクロトを実体化させた。
「普通私のような神というのは、イメージ自体難しいし、人が神にも実体があるというイメージと、神の自分たちは実体がないというイメージを、魔法で発現した時は多くのことを知っている神のほうが、世界の反映に優先されるの。」
「へぇ~」
『私達って凄いんだね』
自分の世界を現実の世界に反映させるならば、やはり多くのことを鮮明にイメージしている世界が反映されるはずなので、和樹と美香の行動が成功したのはおかしいのである。
「まぁ、さっきの一発でスッキリしたからいいとして……クロト、俺らはどうしたらいいんだ?」
「あぁ、そうですね。近くに街があるので、まずはそこを拠点にこの世界に慣れていきましょう。」
今回クロトがお願いしたことは、モンスターの討伐及び人の安全を確保することである。
「まあ、歩きながら話しましょう。」
そう言うと、クロトは歩きだす。
周囲は目印もない広い草原だが、迷うはないような様子だ。目的地の知らない和樹は付いていくしかないので、クロトの横に並ぶように歩く。
「なぁクロト。そのまま身体を持ってていいのか?干渉じゃないのか?」
最初、彼女は直接の干渉は上司に怒られると言っていたのに、普通に歩いている。
「うん、上司から、むしろ直接監視して報告しろって指示をもらったの。うちの上司、変なものが好きだから。」
変なものと言われた和樹と美香は、お前のしたことだろう、と思った。
それからしばらく歩いて、和樹は気になったことを聞いた。
「なぁ、モンスターってここらへんにはいないのか?」
まったくと言っていいほど、平和に歩けている。道中で何かしら襲ってくるのでは、と緊張してた和樹は何もないことに拍子抜けしていた。
「ん?あぁ、いないこともないけど、基本的にはダンジョンと呼ばれる建物内にいるよ。」
「ダンジョン?」
ゲームでよく聞く、薄暗いが宝物がある、あのダンジョンだろうか。
「ダンジョンっていうのは───いや、実際に見てもらったほうがいいね。」
そう言って、クロトは前方を指差す。
「見えたよ。あれがプリムと呼ばれる街で、これからしばらく過ごすところだよ。あそこにダンジョンもある。」
今までないもない草原だった中に見えた石造りの壁。
新しい生活に少し楽しみを感じる和樹だった。
読んでいただき、ありがとうございます。
最近は、読んでくれるかな、文字ミスないかな、とそんなことばかり考えています。