第十話「一本の矢」
一匹のエイリアンが遠くでキョロキョロしている
「おっお母さん……?」
目覚めた優斗は周りを見て母親を探す
バスの座席は横になり、ガラスの破片が散乱していた
「うぅ…痛いょぉ……」
バスの横転時に打ち付けられた身体を引きづりながら優斗は立ち上がる
「はぁぁ…」
ガシャガシャっ…
ガラスの破片の上を葬式用の革靴で歩く
「お母さん…どこ?」
「ゆっ優斗くん…?」
横たわる男が声をかける
「叔父さん!」
「静かにするんだ…バケモノが近くにいる…、うっ!!」
叔父は足を抑え痛みだす
「叔父さん血がいっぱい出てるよ!」
優斗は持っていたハンカチを当てる
「…ありがとう優斗くん」
叔父は後部座席の隙間から見えるエイリアンをチラっと見て話す
「…優斗くん聞いてくれ、ここから逃げるんだ、今ならヤツにバレていない」
「嫌だよ!叔父さんも一緒に、…お母さんも一緒じゃなきゃ嫌!!」
泣きそうになりながら優斗は訴える
叔父は運転席を指差す
「…優斗くん、ここを真っ直ぐ行けば建物がある、しばらくそこに隠れていなさい」
「嫌だ!叔父さんも一緒に行こう⁉︎」
「…叔父さんは、もぅ歩けないだ」
優斗は足を見ると、我慢していたものがこみ上げた
「…優斗くん、泣くな…」
優斗は叔父の言葉を聞いても、こみ上げてくる涙を止められなかった。
「……
優斗くん、君のお母さんもきっと、そこへ避難した…、待ってるから行ってやりなさい」
「本当⁉︎」
涙がピタっと止まり、優斗の顔が少し明るくなる
「…ああ、優斗くん行くんだ!叔父さんも後で行く…」
「わかったよ叔父さん!」
「ヤツにバレないように静かに行くんだ、
いいな…?」
「うん」
優斗は返事をするとバスの隙間から顔を出し
エイリアンがいないか確認する
いないことを確認すると、
全速力で走り消えていった
叔父がエイリアンを見る
「…バレていないようだ、はぁ…はぁ…!」
痛みに耐えながら、息を整える
「美智子さん…、ごめんなぁ…」
ーーーー
「はぁ!はぁ!はぁ!」
全速力で建物に近づき、物影に隠れる
優斗は身をかがめ物影から建物の裏を覗き込む
「あいつらいない」
建物の裏に扉があった
ガチャガチャっ!
「ダメだ開かないや…」
建物のさらに奥に、駐車場が見えた
お母さんあっちに行ったのかなぁ
優斗は周りを気にしながら
駐車場に近づく
駐車場の先に大きな建物があった
「すごーい!」
建物の看板に
『総合体育武道会館』の文字
お母さんきっとあそこだ!
優斗は車と車の間を駆け足で通り抜ける
うあっ!!
ドサッ…!
足を引っ掛け転ぶ
「痛いよ〜……」
…
…?
車の下から何かが見える
ワニの様な足が二足歩行でこちらに近づく
「!!」
「エイリアンだ!」
優斗は急いで立ち上がり
車と車の間を駆けていく
「はぁ!はぁ!」
あと少しで入り口だ!!
扉の取ってを掴み、全力で引くが
開かない
「どうしてだよ!開いてよ!!」
ペタペタペタペタっ…
後ろからエイリアンが近づく
「誰か!助けて!お母さん!お母さん!
開けてよ!!」
扉を叩き一度、後ろを見る
エイリアンが長い爪を出し
飛びかかってきた
!!
「うわぁーーーっ!!」
ドスッ!!
…
…
頭を抱えしゃがみ込んだ優斗の前で
エイリアンが倒れる
「えっ?」
「優斗!?」
制服を着た男が声をかける
「あっ!もしかして…龍二にいちゃん?!」
「覚えててくれたんだ!そう、ナナの友達の龍二にいちゃんだよ!久しぶりだな!」
男は持っていたものを床に置く
「おにいちゃん…、それ弓?」
「ああ、そうだ!これでも全国大会に出場したことがあるんだぞ〜」
エイリアンを見ると
横から顔面に矢が突き刺さっていた
「それより!優斗行くぞ!ヤツまだ生きてる」
ピクッと動くエイリアンを見て優斗は龍二の手を握り、裏口の扉から建物の中へ入る
「はぁ、はぁ、死ぬかと思ったよ、ありがとう龍二にいちゃん!」
龍二は優斗に目線を合わせ尋ねる
「優斗!ナナは一緒じゃないのか⁉︎」
「…うん」
「そっかぁ…」
龍二の表情が曇る
「あっ!お母さんは⁉︎」
「えっ?」
「お母さんを探さなきゃ!」
「ちょっ!待て!」
走り去ろうとした優斗を龍二が捕まえる
「お母さんが待ってるんだ!早く探さなきゃ!!」
「しっー!待て!一人は危険だ!俺に考えがある」
そう言うと龍二は置いてあったカバンの中から何かを取り出す
手に持つ小さな物を
指で操作し話す
「優斗、お母さんの電話番号知ってるか?」
「うん」
「よし!今、電話かけてやるからな!」
…
…ピッピッ、
『発信』…
*つづく*




