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救世主  作者: 山本正純
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 2月17日。午前9時。東京駅のバス乗り場には10台のバスが停車していた。式部香子はそのバスの大群を指さす。

「あのバスだよね。送迎バス」

 2人がそのバスの大群に近づくと、一人の黒いスーツ姿の若い男が声をかけた。

「すみません。ケイシンランドオープン記念イベントの参加者でございますか。私はイベント開催委員の湊当麻みなととうまです。お手数ですが、招待券の方を拝見させていただけませんか」


 湊当麻に促された2人は財布から招待券を取り出し、彼に見せる。

「ありがとうございます。それでは送迎バスの方にご乗車ください」

「因みにこの送迎バスに乗車するのは私たちで最後ですか」

 宮本栞からの質問を受け湊当麻は首を横に振る。

「はい。そうですね」

「もう一つ。このバスは現地まで停車しませんよね」

「はい。送迎バスは全国20か所に停車しています。一台のバスが60人乗車可能ですから、東京から送迎バスに乗られるのは600人です。お二人は10号車へお乗りいただきます」

 2人が10号車と書かれたバスに近づくため歩きだすと、湊当麻はトランシーバーを使いスタッフたちに連絡しながら、10号車に向かう。

「全員揃いました。2分後に発車します」


 10号車には既に57名のイベント参加者が乗っていた。空席は前方の補助席しか残っていない。式部香子は宮本栞の隣に座りたかったが、それは不可能であると知り、頬を膨らませる。式部は仕方なく、前から4番目の補助席に座った。

 宮本栞が前から3番目の補助席に座ると、右隣りに座っていた茶髪に長髪の男が彼女に声をかけた。

「君。かわいいですね。名前を教えてくださいよ」

 ナンパ男に絡まれた宮本栞は仕方なく答える。

「答える必要はありませんよね」

「釣れませんな。もしかして君、三沢みさわマコのライブを観るためにケイシンランドにいくのかな。俺の目的はライブです」

「違います。少し早い卒業旅行という建前で一つ後ろの補助席に座っている友達に誘われただけでって、なんであなたに事情を説明しなければならないのですか」

「ツンデレですか。一応自己紹介しておくと、僕の名前は香椎陸。よろしく」

 その会話の最中に香椎陸が宮本栞の前の席に座り、湊当麻が一番前の補助席に座った。

 そしてバスは発車する。


 バスが発車してから1時間後。2キロほどのトンネルを通り抜け、3キロほどの山道を下った先に、その遊園地がある。

 駐車場にバスが停まり、宮本栞はバスを降りる。その先には、巨大なドームがあった。大きさは東京ドーム3個分。その天井は透明なガラスで覆われている。

 バスは既に20台以上停車しており、屋内遊園地の入り口に多くの人々が一列になって集まっている。

 宮本栞が降りた後でバスに降りた式部香子はこの行列を見ながら呟く。

「遊園地に入るまでに2時間かかりそうだね」

 式部香子は退屈そうな顔をしながら行列に並ぶ。


 宮本栞も行列に並ぼうと思い歩きだすが、彼女の携帯電話のバイブが振動する。彼女は足を止め、ポケットに閉まった携帯電話を取り出す。携帯を開くと、ハニエルから電話がかかっていることが分かった。

「もしもし。お土産のリクエストですか」

『違います。ウリエルさんがいるケイシンランドに、レミエルさんもいます。そのことを報告するための電話です』

「レミエルもこの遊園地にいるのですか」

『はい。レミエルさんは来日した婚約者さんとのデートです。その婚約者さんの妹さんがイベントのゲストとして招待されているそうで、その入手経路でチケットを入手したそうです。因みにレミエルさんは変装していません』

「分かりました」


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