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救世主  作者: 山本正純
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 2月17日。日曜日。郵便車爆破事件発生から一週間が経過したが、マスコミによる報道は続いている。東京のビルに設置された街頭ビジョンでは爆破事件のニュースが流れている。

『2月10日午前10時頃秋葉原で郵便車が爆破されるという事件が発生しました。警視庁の発表によると、使用された爆弾はプラスティック爆弾で、爆弾は郵便車に積まれた荷物に紛れ込ませてあった物です。警視庁は爆破テロ事件とみて捜査をしていますが、犯人はまだ逮捕されていません』

 このニュースが流れている街頭ビジョンを宮本栞は見上げていた。そんな彼女に背後から式部香子が声をかけた。

「しおり。遅くなってごめんなさい」

 その声を聞き宮本栞は背後を振り返り、微笑んだ。

「大丈夫ですよ。待つのは好きですから」

 すると雨がポツポツと降ってきた。式部香子が空を見上げると、黒雲が空を覆っている。

「大雨降りそうだけど、大丈夫だよね」

「大丈夫です。屋内遊園地ですから、濡れる心配はないでしょう」

「そうだよね」

 2人は咄嗟に折りたたみ傘を取り出し、街を歩く。


 発端は2週間前の金曜日。式部香子が昼休みの時間帯にイタリアンレストランディーノを訪問したことだった。

 その日は大学の後期試験1週間前だった。宮本栞は図書館より静かなこの店でテスト勉強を行っている。栞は食事を終わらせると、シェフの板利明や、栞と同じようにこの店でランチを楽しんでいる江角千穂やジョニー・アンダーソンたちと雑談を行っている。だが今は雑談を行っている暇はない。

 この店が図書館より静かなのは、客が少ないからではないかと思い、店の経営について心配しそうになる宮本栞だが、その心配をする暇はない。

 横浜市内にある高校の教師として内定が決まった宮本栞にとって後期試験は最後の試験。現代文の教員免許を取得した彼女は、後期試験を最後に、テストを受けることはないだろう。何かの資格を取得するために試験を受けるということがない限り。

 最後の試験ということもあって宮本栞は本気でテスト勉強を進めていた。そんな彼女の邪魔をするように式部香子は話しかける。

「しおり。後期試験が終わったら、ケイシンランドにいかない。東京にオープンする遊園地だよ。懸賞でオープン記念イベントの参加券を2枚ゲットしたから。オープンするのは3月1日だけど、2月17日にマスコミ向け取材をかねて、全国から1万人が誰よりも早く遊園地で遊ぶことができるんだよ。卒業旅行を兼ねて一緒に行かない」

 宮本栞は小さくため息は吐いた。強引だと感じながら宮本栞は彼女の誘いを了承した。


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