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救世主  作者: 山本正純
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 ケイシンランドの中央に位置する時計台の前に黒い影が佇んでいる。

「早く着きすぎたかな。革命の日を祝う花火のスイッチを押すのは1時間後なのに」

「ダメですよ。押したら。真犯人さん」

 この声を聞き黒い影は背後を振り返る。黒い影の背後には、宮本栞と式部香子が立っていた。

「なぜこの場所が分かった」

「簡単なことです。あなたが仕掛けた爆弾は時限式ではなく、リモコンで操作するタイプの物でした。一秒の狂いもなく一斉に爆破させるためには、どうしてもこの場所でなければならなかったのですよ。この場所は屋内遊園地という円の中心。円の中心から円周までの距離である半径が同じでなければ、一秒以上狂いができてしまいます。屋内遊園地の円周に爆弾を仕掛けて、倒壊させようとしている犯人が一秒の狂いという逃げ場を作るはずがない。そう考えたらマスコミ関係者に向けた処刑台のスイッチがここにあると推測できました」


 宮本栞の推理の後で式部香子は真犯人の名前を呼ぶ。

「三沢マコさん。あなたがその処刑台のスイッチを押せば、悲しむ人が大勢生まれる。それでもいいの」

 宮本栞と式部香子と対峙した三沢マコは質問する。

「なぜ私が犯人だと分かったの」

「違います。あなたは犯人グループの一人に過ぎません。正確には『なぜ私たちが犯人だと分かったの』と聞きたかったのではありませんか」


 20秒の沈黙が続き、宮本栞は推理を続ける。

「長塚好美。その長塚さんこそが三人目の犯人グループのメンバーです。あなたと長塚さんは犯人ではないというアリバイを手に入れましたよね」

 宮本栞の推理に続くように式部香子は推理を口にする。

「放送室兼警備室に籠城した犯人ははっきりと言ったよ。『俺たちは香椎陸の仲間だ』って。これって籠城犯が複数いるということだよね。さらに言えばケイシンランド内に籠城犯がいるのは、イベントステージの上にいる香椎陸と、ケイシンランドビルにいる籠城犯数人。放送室兼警備室を占拠したのは、その部屋で籠城すればケイシンランド内の様子を監視できるから。香椎陸が籠城しているイベントステージは、マスコミ向けの記者会見場が欲しかったから。人質たちを自由にしているのは、マスコミに取材をさせやすくするため。この籠城事件の目的はマスコミに対する復讐」

 式部たちの推理を聞き三沢マコは笑う。

「それでアリバイトリックって何」

「最後に四人目の籠城犯、湊当麻を紹介します。湊当麻は放送室兼警備室を籠城しているはずです。長塚さんと共に。あの放送の時、あなたと長塚さんはイベントステージの上にいた。よって籠城を伝える放送は不可能なのですよ。監視は警備室で行っているため、あなたたちには籠城犯としての仕事がない。あなたたちは人質の一人として演じることができるということです。さらにあの放送の声は明らかに男性の物でした。しかし湊当麻の物でもない。仮に湊当麻が放送をしたとすると、その声が館内に響き渡ることになるため、籠城犯の一人が彼だとケイシンランドスタッフに分かってしまう。だから湊当麻は別の仲間に放送を頼んだのです」

「あなたたちが犯人であると思った理由は、テレサさんからあなたたちについて聞いた時。テレサさんの推理は昨日このケイシンランド内を歩いていた3人の中に犯人がいるという推理だったけど、一人で爆弾を仕掛けるにしては、この遊園地は広すぎる。1時間しか時間がなかったあなただけの力では全ての場所に爆弾を仕掛けることはできない。でも怪しい3人が協力すれば、全ての場所に爆弾を仕掛けることができるのではないかと思った」


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