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救世主  作者: 山本正純
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 その頃テレサはオーナー室の一室で、ソファーに座って考え事をしていた。腕を組んでいるテレサは話しかけづらいと袴田は思った。

 そしてテレサは前触れなく、ソファーから立ちあがる。

「袴田さん。確かイベントステージの舞台裏には、内線電話が取り付けてあったよね。その電話を使って香椎陸と交渉したいんだけど」

 唐突だと袴田は思った。

「交渉は警察の仕事でしょう」

「こういう交渉は警察より私の方がやりやすいの。警察はどこに爆弾が仕掛けてあるのかが分からないからね」


 テレサは鼻歌まじりにイベントステージの舞台裏に設置された内線電話に繋がる番号を押す。

 

 その内線電話が鳴っていることにイベントステージの上にいた香椎陸は気が付いた。

 香椎陸はやっと警察が交渉を開始したのかと思い頬を緩ませ、電話に出る。

「もしもし。籠城犯の香椎陸です」

『香椎さん。私の名前はテレサ・テリー。人質の一人だよ』

「テレサさんは警察官ですか」

『いいえ。ただの脚本家です』

「脚本家が何の用ですか」

『警察の交渉待ちだよね。警察が到着する前に交渉を進めようかなって思ってね。長谷川さんを釈放するのに一万人以上の人質なんて必要ないよね。人質を解放しないのかな』

「ダメです。人質は解放しません。人質を解放したら、マスコミ関係者は解放された人質たちと共に逃げてしまう。そうなれば興ざめします」

『そこまでしてマスコミ関係者を逃がしたくない理由があるのかな』

「理由を教えるわけにはいきません」

『ということはこの籠城事件の動機はマスコミ関係者への復讐かな』

「そうです。これはマスコミ関係者への復讐」

『なるほど。あなたは『馬鹿なことをしているのはマスコミ関係者でしょう』って言ったよね。その真意から察すると、マスコミ関係者への復讐というのが動機として妥当かなって思ったから。なぜあなたがマスコミ関係者を恨んでいるのかを教えてくれないかな』

「ダメです。まだ早い」

『何が早いの』

「天理さんとの約束です。動機について語るのは午後5時からという約束です。その時間帯に再びマスコミ関係者をイベントステージの前に集め、動機について語ります。そして動機を語ってから10分後に爆弾を爆発させて、事件を終わらせます」

『自殺するつもりだよね。だったら止めた方がいいよ。一万人以上も巻き込んで自殺することは卑怯だから』

「卑怯。卑怯なのはマスコミ関係者。この世界を救うためには、犠牲が必要です」

『あなたは世界を救うために一万人以上の命を犠牲にするの』

 香椎陸は唇を噛み、内線電話を切った。そして二度と電話がかかってこないように、内線電話の電話線を切断する。


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