番外編自転車社会構築法第4条
私の名前は佐藤俊彦。現在57歳の衆議院議員である。与党平和党所属であり現職の副総理兼国土交通大臣を務めている。私が国土交通大臣を務めているのには政治家になった理由が深くかかわっておりそのことが私の人生の指針となっていた。それは自転車である。私は自転車愛好家であり自転車をより厳格に規制しているこの世の中を許すことができなかった。だから、自転車がいかに素晴らしいものなのかを説得させるためにも国土交通省に入省した。だが、それではだめであった。だから、政治家となって今国会で成立した自転車社会構築法とまとめ上げた。
自転車社会構築法は全5条からなっており前回は第3条について語ったので今回は第4条について語りたいと思う。
自転車社会構築法第4条
自転車産業の発展を促すため補助金制度の創設を行う。
この第4条については一般の人には特に関係の内容な話である。自転車産業の補助についての条文だ。この条文を作ったのにはそれなりに理由が存在している。近年自転車産業が衰退しているのでそれをどうにかして食い止めようというのが本条文だ。ただ、先ほど一般の人には関係のないことといったがそれは少し違う話である。自転車産業とはすなわち自転車を作る会社だけを指しているのではない。自転車を売っている産業とくに、自転車を修理する産業を指しているのだ。
みなさんは自転車を修理をしようとしたときにいざ、自転車を出してみたが修理が終わるのに待っている人が多すぎて時間がかかったということを経験した人はいないだろうか? そういう人も一部に入ると思う。とりわけ、地方の人はそのことを経験したと思う。それは、自転車を修理する人が減っているからだ。だから、それをどうにかするためというのがこの条文である。
さて、今回もこの条文についての私の過去について語っていきたいと思うが今回の話が実はそこまで深い話というわけはない。実に簡単で短い話だ。
それは、確か私がまだ俺という一人称を使っていた高校生の頃の話だ……
高校3年の6月。
俺の周りはすでに部活を終えたことによりいよいよ大学入試に向けて周りの空気がさっき出し始めたころの話であった。俺は、他のみんなと同じように受験勉強に向けて必死こいて勉強をし始めていた。といっても、俺の場合は志望校が志望校だったのでその努力は相当必要なものであった。大学名は別段いうつもりはないがまあ、日本トップの大学と言っておこうか。そういうこともあって、俺は学校側が開催してくれる毎朝ある朝補習というものに休まず毎日参加していた。そんなことをしているさなかの話である。
「自転車が壊れたあああああああ」
俺は叫んでいた。
「おいおい、どうしたとし? 自転車が壊れただって」
俊は俺が叫んだことでどうかしたのかという顔をしてこっちの方へと振り返った。
現在、俺達は学校から家へと帰宅する途中である。そして、学校から自転車をこぎ始めて13分ぐらいが経過したときのことであった。俺の自転車は道路を普通に走っていると何かを踏んだみたいでブシュというタイヤがパンクしたこのような不吉な音を鳴らすとそのまま自転車がガタゴトとして完全にパンクしたことが分かってしまった。
「ああ、パンクした」
俺は自転車から降りて後輪の状態を確認してみる。確かに後輪には穴が開いていた。おそらくは、先ほどブシュという不吉な音がしたことから考えて何かとげとげしいものを踏んだのだろう。そうでもなければパンクするはずがない。
「そりゃあ、大変だ。ここからだと大型センターに行った方が自転車を預けるのは早いな」
「ああ、早く自転車を預けて修理してもらおう」
このあたりには自転車専門のお店というのはない。なので、必然的に自転車の修理となると大型のショッピングセンターといっても、木材や、家庭用品などを取り扱っているお店でないと修理をすることができない。なので、俺達はそのお店をめがけて慌てたいが自転車が実質俺はない状態なので俊と一緒に歩いて向かうこととなった。
そして、とことこと歩いて10分。俺達はようやくショッピングセンターにたどり着いた。
「じゃあ、俊。ちょっと待っててくれないか。すぐに自転車を置いてくるから」
「ああ、早くしてくれよな」
俺は、俊にそう言うとすぐさま自転車を押して自転車売場へとまっすぐ進んだ。自転車売場には自転車の修理を受け入れてくれる場所があって、そこにはすでにおよそ10台の自転車が並べられていた。
「すみません、自転車を修理したいんですけど」
俺は、自転車を黙々と修理していた40代後半ぐらいに見える意外と身長が高い男性店員に声を話しかける。すると、店員は自転車をいじるのをすぐさまやめて俺の方へと近づいてきた。
「どうかしましたか? 自転車を見せてください」
「は、はい」
俺はそう言われて自転車を見せる。店員は俺の自転車に近寄り前輪、後輪、ブレーキいろいろな場所を見ていく。途中でうんうんとか頷いたりもしていた。そして、全てを一通り見終えると顔を見上げて俺に声をかける。
「これ、パンク以外にもいろいろとガタがきているね。いっそのこと修理してしまおう。それでいいよね?」
「はい、ぜひともお願いします」
「じゃあ、ここの紙に名前、住所、年齢、電話番号とか書いておいてね」
俺は店員にそう言われて1枚の紙を渡された。紙には注文票と書いてあった。俺は、その注文票に必要最低限のことを全部書き終えると自転車を任せてその場を跡にしたのであった。
──それから数日後。
「自転車が返ってこない」
俺はそうぼやいていた。箒を持ちながらである。現在は授業が終わり清掃の時間だからであるが、この後帰りの時間があるとなると超ナイーブになってしまう。
「えっ、自転車が返ってこない? そりゃあ、数日で帰ってくることはないだろ。だって、パンク以外にも多くの修理をするのだろ。だったら結構時間がかかるだろう」
俊は冷静に俺の言葉を聞き流す。そりゃないと俺は思ったが口に出すようなことはしない。だって、なぜだか知らないが俊からとてつもないオーラが発せられているのだから。顔がものすごく怖い、怖い。何か俺悪いことしたかな?
「まあ、仕方ないか。それにしても、歩いて学校まで行くことができないから大変だぜ。電車通学って朝早く起きないと朝補習に間に合わないから本当に眠い。授業中眠いぜ」
俺はそう言ってあくびをする。朝早く起きるのがここまで大変だったなんて知らなかった。電車通学も大変だ。電車の本数がいくらあったとしても大変なのには変わりない。
「としは今電車通学なのか? そりゃあ、大変だな」
俊は俺の今の苦労を他人事のように言っている。そりゃないぜ、親友よ。おまえだって自転車通学から電車通学になったら苦労を味わうことになるだろう。俺の苦労を今は知らなくてもそのうちに俊だってな知ることになるんだ。はっはははははは。って、何で俺は高笑いをしているんだ。そして、何で上から目線で俊を見ているんだ。別に電車通学の方が偉いというわけではないのに。今日の俺はもう疲れているな。
俺は机を全部片付け終えるとバッグを持って学校の校舎から出る。途中まで俊も一緒だ。俊は自転車だが途中まで歩いてくれることとなった。
校門の前まで一緒に歩いていくとちょうど1人の女子が立っているのに俺は気が付いた。
「あっ、美月」
その女子というのは美月であった。
美月の方も俺が声をかけるとすぐさま気が付いたみたいでこっちの方に歩いて向かってくる。
「とし君と俊、一緒に帰るの?」
「ああ、俺は今は電車通学なんだけど途中まで俊と歩いていくことにしたんだ」
俺は美月に訳を話す。すると、横で話を聞いていた俊は突然何かを思い出したかのような顔をして自転車にまたがると俺に声をかける。
「とし、すまないが用事を思い出した。確か美月も電車通学だったはずだから駅まで一緒に帰ってやれ。じゃあな」
「ちょ、ちょっととしっ!」
俺は引き留めようとするがとしはそのまま自転車に乗って帰って行ってしまった。俺は、校門の前で取り残されてしまった。隣には美月がいるだけだ。
「じゃあ、帰ろっか」
俺は美月に言われたのでそのまま一緒に帰ることとなった。ただ、駅まで楽しく美月と話しながら帰ることができたのはうれしかったという気持ちがある反面俊の策略に引っかかってしまったという気持ちもデカかった。俺は、この状況になってようやく気が付いたのだがおそらく、いや、確実に俊のやつは俺が美月と2人きりで帰る状況を狙っていたのだ。はあ、まったく俊、あいつは……。
さて、今回の話で俺が言いたいことというのはその後俺の自転車が返ってきたのは1週間も後の話だ。その間俺はいつもより早起きをして貴重な睡眠時間を失う羽目になった。それは、自転車を返してもらう時に店員さんが言っていたのだが自転車を修理する人は1人しかいないということだそうだ。今の時期は修理の依頼がたくさんあって持ち主に帰るのが遅くなってしまうというわけだ。
だから俺は考えた。もっと自転車を修理する人を増やさなければいけない。それでこの条文を考えたというわけだ。