第2話国会への道
第2話となります。
私が次期衆議院議員公認候補として認定されてから私は平和党神奈川県連の支部に毎日通っていた。私が公認認定されたのは神奈川3区。神奈川県横浜市の鶴見区・神奈川区を選挙区にしている。長年民友党の長塚新次郎氏が他候補を圧倒して連続当選を重ねていて長塚王国とまで呼ばれている。今まで一度も比例当選を許したことがないほどだ。しかも、長塚氏は現職の厚生労働大臣。私の次の選挙は苦戦が当初から予測されていた。なので、県連の方々はどこまで差を縮めるかです。何とか差を縮めて比例当選をしましょうとアドバイスをくれた。確かに比例当選は私にも非現実的であるが少しだけは現実的だと思っていた。でも、比例なんかで当選したら他に当選できた人を落選させてしまう。だから、私は何としてでも長塚氏に勝とうと努力することとした。初めて長塚氏を落選させてみせる。私の気合だけは盛り上がっていた。
その日から私は昼はマイクを片手に横浜駅前で演説。夜は防衛白書、環境白書、いろいろな政治家の書いた本を読むという日々が続いた。もちろんその本の中には宿敵長塚氏の書物もあった。長塚氏の書物『日本を変える力とは何なのか?』という本であったが敵ながら素晴らしいと思った。私もこれぐらいの人になりたいという敬意を表したいと思った。
私の生活はそれから2年同じ用に続いた。要は作業ゲームだ。同じことをずっと繰り返す。それを2年続けたある日私はテレビを見ていた。
ニュース夕
本日神崎内閣総理大臣は衆議院の解散を決定し明日の衆議院本会議において紫の袱紗に包まれた解散詔書が議長に提出されることとなっており3年ぶりの衆議院議員総選挙となる見通しです。現在、世論調査では民友党の支持率は23パーセントと第一党は確実であり内閣支持率が32パーセントの神崎内閣は確実に過半数はとれると予想されています。
次に以下政党支持率です。
民友党 23パーセント
社会党 12パーセント
平和党 16パーセント
市民党 2パーセント
新党改革日本 1パーセント
無党派 46パーセント
となっており野党第一党はこのままでいきますと平和党になるとみられています。
続いて各党の反応と行きます。
民友党小野次郎幹事長はいよいよ解散だ。我々は今までの政権成果がある。何の恐怖も感じない。国民の信をしっかり取っておきたい。
社会党来栖寛治書記長は今回は苦しくなりそうだ。だが、野党第一党として政権交代を目標に頑張ってまいりたい。
平和党中野井陣幹事長は我々はかつては与党であった。政権運営は民友党と同じぐらい経験した。今こそ、我々の政権能力が高いことを見せる時だ。今回は期待の新人が多くいる。彼らのためにも1票でも多く比例票を稼ぎ比例当選を果たさせたいと思う。
続いて……
私はニュースを見終える前に感動していた。中野井幹事長。彼には何回か平和党神奈川県連で会ったことがある。彼は私の選挙区の隣の神奈川10区から6期連続当選している平和党の中でもベテラン議員だ。彼は敵を周りに作らない温和な性格で政界内では知られており権力欲がないことが一般民衆からも支持を集めている最大の理由だ。幹事長には最初は断っていたが最終的に妥協したとのこと。ちなみに神奈川県連代表もしている。
その日、私のもとには神奈川県連の事務の藍屋さんから連絡が来て明日県連の総支部に来てくださいと言われた。私はすぐさま承諾をしてその日はベッドにばたりと倒れ込みすぐさま寝てしまった。
翌日。
平和党神奈川県連総支部。
私は呼ばれた通りに神奈川県連に来ていた。私は待合室で待たされた。周りには私と同じように公認候補となった新人さんや元議員が集まっていた。
「とし? おい、としか」
私は後ろの方から自分の名前が呼ばれたので振り返ってみた。振り返った先には男がいた。長身に黒いスーツ、眼鏡をかけている。さて、こんな知り合いいたかなと思った。
「えぇーと」
考えても名前が出てこなかった。ただ、相手の男の方はウソだろと言った顔で俺を見てくる。いやいや、そんな顔されても覚えていないし知らないものはわかりませんよと言おうとしたところで最初の挨拶で思い出した。そういえばさっきとしって……あっ!
「俊? 俊介か」
「ようやく思い出したか。長いな記憶力の問題だぞ、幼馴染を忘れるなんて」
「でも、どうしてここに?」
私はどうしても気になったので質問をしてみた。俊は笑って答えた。
「どうしたも何も俺は次期衆議院議員平和党神奈川1区公認候補だぜ。いて当然だろ。お前は?」
神奈川1区。俊のやつ、こんなに立派な場所を任されてすごいなと私は思った。
「神奈川3区の公認候補だ」
私は答える。俊は私の回答に対して、
「そうなのか。神奈川3区は1区の隣だからな。お互い頑張ろうな」
「おう」
俊は相変わらず大人になっても変わっていなかった。私はその姿を見て何か少し安心した。しばらくすると、待合室に置いてあった大きな画面のテレビが点いた。もちろん、知らせるニュースは衆議院の解散のことだ。
ニュース Live中継
本日衆議院が解散されました。現場の安斎さん。
はい、現在国会の衆議院本会議場の外にいます。本会議場には先ほど紫の袱紗に包まれた解散詔書が森村官房長官の手によって運ばれていきました。
バンザーイバンザーイ
今、今衆議院本会議場の中からは万歳の声が聞こえてきました。どうやら解散したようです。
衆議院解散
大きく文字が出てきた。どうやら本当に衆議院の解散が起こってしまったみたいだ。私もこれから頑張って激しい選挙戦を初めて駆け抜けることとなるのだろう。全ては自転車の社会を作るためにも頑張らないといけない。あくまでも衆議院議員に当選することは通り道でしかない。ゴールに行くためにもここは頑張らないといけない。
「それではみなさん」
県連の事務の人が挨拶をする。
「これから第X2回衆議院議員総選挙が始まります。今、ここにいる人たち全員が当選できるように県連としてもバックアップをしていきたいと思います。それでは詳しい打ち合わせをしたいと……」
その日はずっと詳しい打ち合わせとなった。選挙に対するルールなどを学んだ。ちゃんとボランティアは募集してあるから金を使って雇うなと言う警告ももらった。選挙違反なんかしたらすべてが水の泡だ。私はルールをしっかりと再確認をして家に帰ることとした。
「とし、今日は一杯やらないか?」
帰ろうとして県連から出た私を後ろから呼び止めたのは俊だった。
「どうした? 一杯か。まあ、いいか」
「よし、のりは良いな。さあ、行こう」
その日、私は俊と居酒屋でずっと高校卒業後の話をした。俊とは高校卒業後大学が別々となっていたので会ったのは今日が久しぶりだ。ただ、連絡自体はし合っていたので完全に縁がなくなったというわけではなかった。お互い、平和党から立候補するなんて話は一度もしていなかったので初めて知ったという形だ。
「しっかし、お互い平和党から国会議員になろうとする何てな」
俊が今俺が考えていたことを口に出す。俺も横で頷く。
「そうだな。どうして俊は国会議員になろうとしたんだ」
「そうだな、やっぱり介護かな。としも知っているだろ、俺の母さんの今の状態がどうなっているか」
「ああ」
俊の母さんは認知症で俊の家で寝たきり状態になっている。高校時代までは元気だったのに大学に入って突然のことだった。俊はもちろん病院に連れて行ったが病院は認知症は置くスペースがないとかで拒否したそうだ。
「俺はだな、もっと病人のための高齢者のための介護というものを作らないといけないと思ったんだ」
俊は語り始める。少し酒がまわているようだ。だが、私は俊の話を止めない。静かに話が終わるまで聞き続ける。
「……と言うわけなんだ。お前は?」
逆に質問されることは理解していた。
「私はやはり高校時代のあの経験から自転車のための社会を作るかな」
私は真面目に答えた。その答えに対して俊は笑い出した。しかも、腹を押さえて大笑いだ。
「ははは。それはすごいや。よくもまあ曲げなかったな」
むー。私にしては珍しく不満に思った。
「そこまで笑うことじゃないだろ」
不機嫌そうに言うと俊はそれを察してかどうかわからないが謝ってきた。
「すまんすまん。まあ、今日はこの辺にしておくかな」
そう言うと、私達はお互いに変える支度をして自分の家へと帰っていった。
それからというものの選挙戦はとても激しかった。自転車に乗って選挙区全部を回り続けて1人1人に握手をするといった地味なことを続けた。ただ、この地味な活動が1票に通じることを信じて頑張った。そして、いよいよ投票日を迎えて午後8時。各放送局で選挙速報の時間が始まった。
選挙速報
それでは今回第X2回衆議院議員総選挙の結果を見ていきたいと思います。
民友党が単独過半数を超える見通しです。
各党の議席予測はご覧のようになっており……
と言っている間にも画面の下側には次々と当確の人の名前が映し出されている。あっ、今中野井幹事長の名前が出た。
当確民友党田中勝(兵庫3区)、平和党大井寛(群馬4区)、民友党中通(愛媛1区)、民友党石橋勝弘(北海道9区)と次々と名前が続いていく。
私は事務所で自分の名前が出るのをひたすら待った。そして、午後11時ごろ。比例復活平和党川崎俊介(神奈川1区)
俊介の名前が出た。あいつ当選したのか、おめでとう。と言いたかったがさすがにそんなことを言えるほど余裕はなくなっていた。ほんの20分前に長塚氏の当確がでた。つまり私は小選挙区では落選したこととなる。あとは、比例復活さえできればと望んでいた。比例南関東ブロックは22議席が定員だ。そのうち平和党は7議席獲得した。現在、7議席中6議席が決まっておりあと1つが誰になるかというところだった。
そして、日付が変わった頃
比例復活平和党南山秀人(千葉5区)
ああ。私の落選は完全に決まった。私は応援にわざわざ駆けつけてくれた人たちに謝罪の礼をして私の32歳の、初めての選挙は落選と言う結果で幕を下ろした。
神奈川3区
長塚新次郎 民友党 123214票
佐藤俊彦 平和党 75432票
河合真由 社会党 32987票
滝 連 無所属 3209票
感想お待ちしております。次回話1時間後に更新です。