中学生が名探偵 氷点下の密室
氷点下の密室 登場人物 鈴木恭介 名探偵。推理力が高い。母は二年前に他界。小説部所属。 吉村福 恭介の親友。元サッカー部。今は小説部磯部竣 小説部所属。元サッカー部。 左近警部 恭介の知り合い。殺人事件担当。 「寒い、寒い。」 恭介は温度計つき腕時計を見る。今は午前5時。温度は-4℃。道理で寒いはずだ。 恭介が早起きして学校へむかっているのはけして勉強熱心だからではない。今読んでいる黒死館殺人事件これを早く読みたくて早起きしていたのだ。しかし家にはおいていないので小説部の部室に向かっているのだ。学校につく。部室へむかう。部室のドアを開ける…?? 開かない… 「はぁ…」 白いため息がもれる。 なぜ開かないのかはわからないが誰かが中にこもっているのだろう。このドアには鍵はついていないし。
「おーい誰か~」 返事はなかった。仕方ない。ここで本を読んで中にいる人が出てくるのを待つしかない。7時になったら暖房もつく。 恭介はバックから取り出した本を読み始めた。 1時間がすぎた。まだ誰も出てこない。 さらに30分すぎた。 コツ、コツ。靴音が聞こえた。恭介は辺りを見回す。誰もいない。 気のせいだったのかな?恭介か本に目を戻したとたん、誰かに肩を叩かれた。 「ふぎゃっ!」
恭介は驚いて本を落としそうになった。 「どうしたんだよ。恭介。」 磯部だった。 「何だよ!びっくりするじゃないか!」 「ごめんごめん。そんなに驚くとは思っていなかったよ。ところで恭介、なにをやっているんだ?部室に入ればいいじゃないか。」
「いや、それが…」 恭介はこれまでのいきさつを話した。 「まさか、そんなわけないだろ。」 磯部はドアにてをかけた。やはり開かない。 「あれ、おかしいな…本当に返事はなかったのか?」 「ああ、静かだったから聞き逃したこともない。」 「なら出てくるのを待つしかないだろう。本貸してくれよ。」 恭介は本を鞄から取り出し磯部に渡した。
15分がすぎた。そしてやっと暖房がついた 「おい、恭介!ドアを見ろ!」 磯部が悲鳴に近い声を出した。
恭介はドアを見た。なんとドアの隙間から血が流れ出ていた!! 「大丈夫ですか?!」 恭介と磯部はドアに走った。ドアは開いた。 おかしいな…誰もでてこなかったのに… 「恭介!!」 中には、恭介の友人、吉村が背中にナイフを刺され倒れていた。 「大丈夫か?」 恭介はうつむいた。 「息は…ない。」 「救急車と警察に連絡だ!」 恭介は叫んだ。ふと、下を見ると5冊の本が床に積まれていた。その隣には、「一歩先を読め」という将棋の本がおいてあった。積まれていた本は「明日のジョー」 「背中のコビト」 「フグの料理法」 「魚の種類」 「役者修行」 だった。そして床にはを と書かれていた。
これに何の意味があるのかな…もしかしてダイイングメッセージ?うん、きっとそうだ!だったら早く解読しないと! 恭介は解読作業に取りかかった。 頭文字をつなげて読むとか?いや、それじゃ意味不明な文になるし、一歩先を読むの意味がない。えーっと、一歩先を読むということは一文字先を読むということだ… ああーっっ
恭介は大変なことに気がついてしまった。 五冊の本の頭文字をつなげて、一歩先を読むといそべしゅになる。さらに床のををあわせれは、磯部竣となる。いやまて、落ち着くんだ。磯部はさっきまでそばにいたではないか。じゃああのメッセージはなんなんだ? 恭介の頭は混乱するばかり。そのとき、ピチョン、ピチョン。水の音がした。なんだ?恭介は音のした方へむかう。ドアだった。恭介はドアの隙間に目をやる。ドアの隙間から少し色の薄い血が滴り落ちていた。 何で薄いんだ?まるで赤い絵の具に水を足したみたいだ…?水? 「そうか、そういうことか!」と恭介が叫ぶのと「君達!大丈夫かい!」といって警部が飛び込んでくるのがほぼ同時だった。
「警部!」 「やあ、恭介君!」 「謎は解けました!」 「おっと推理を聞く前に現場検証をしておかないとな。君達、何もさわっていないだろうね!」
「もちろんです、警部!」
「事件のあらすじを話してもらおうか。」 恭介は話した。ダイイングメッセージのことは伏せておいたが。 「では君の推理を聞かせてもらおう。」 現場検証をおえた左近警部がいった。 「ところで警部、刑事さんはいないんですか?」 「ああ、みんな朝早くてきていないんだ。」 「わかりました。では、推理を聞かせてあげましょう。」 「ちょっとまった。君達がいっているのは事実なんだろうね。」警部がいった。 「はい、この動画、写真を見てください。」 恭介は携帯の画面を警部に見せた。 「わかった、わかった。」
作者より一言 どうやらもう恭介はわかったようだ。ヒントはすべてでている。この続きを読む前に腐った脳細胞をフル活用して謎を解いてくれたまえ。 「警部、床を見てください。6冊の本とをという文字がありますね。これは被害者からのダイイングメッセージなのです!」「この本に何の意味が?重ねてある5冊の本の頭文字を読んでもあせふさや…何の意味もないぞ。」
「いいえ、隣の本を見てください。一歩先を読め、ですよね。指示通りあせふさやの一歩先、つまり、一文字後を読んでください。横のをも一緒にですよ。」 「ああ。えっと…磯部竣?つまり君の横にいる男の子が犯人と言うのかい?」 「はい。」 「ちょっと待て!俺にはアリバイがあるぞ!血が流れてきたとき隣にいたじゃないか!」 「ああ、僕もだまされた。密室の謎が解けるまではね!」 「俺は犯人じゃねえ!」「警部、僕が話をする間、磯部を捕まえておいてください。」 「わかった。すまない。磯部君。」 警部は磯部を壁に座らせ、それにおおいかぶさるように座った。 「では、今から密室の種明かしをします。まず犯人は午前4時ごろに学校に来ました。そして吉村を何らかの方法で呼び寄せたのです。そして、吉村を殺しました。」 「まった、恭介君。君はいったじゃないか。7時ごろに血が
流れてきたと。」
「ええ、確かに血が流れてきたのは7時ごろです。」
警部は真剣に話に聞き入っている。だが磯部はなんだか落ち着きのない顔をしている。
「犯人は、殺してすぐに部屋を出て家に帰りました。だからダイイングメッセージにも気がつかなかったのです。」 「しかしそれでは…」 「わかっています。密室は作れないというのでしょう。」
「ああ。」 「密室は自動的に誕生したんです。」 警部の顔は?だらけになっている。 「今日の午前5時の気温は-4℃でした。まず磯部は部屋に入った。そして吉村を殺し、部屋を出た。そしてすぐにドアと床の間の隙間をガムテープでふさいだ。これで吉村の血がドアに流れる。だがガムテープがあるのでドアにたまる。そして血は-4℃だから当然凍ります。血が凍ったころを見計らってガムテープをはがします。するとドアと床の間の隙間が凍りつきドアが開かなくなります。そして7時になると暖房がはいり、血が溶け、あたかも今殺されたように見えます。これが密室の真相です。」 磯部はうつむいたままだ。
「しかし恭介君、証拠がないと…」 「証拠なら2つあります。1つ目はダイイングメッセージ。そしてもう1つ。そこのゴミ箱。その中に磯部の指紋が付着したガムテープが入っているはずです。」 恭介は部屋の隅のゴミ箱を指差した。
「恭介君、ちょっと磯部君を押さえていてくれるかい?」 「わかりました。」 恭介は磯部の上に座った。
「本当だ!ガムテープが入っている!」 「これで納得いただけましたか?警部。」 「クックック。ハーハッハ!」
磯部が高らかに笑った。「俺だよ。俺が吉村を殺したんだよ!」 「磯部君。動機はなんだい?」
「俺は前までサッカー部のレギュラーだった。だがあいつが転校してきてから俺はスタメンから外されたんだ!あいつのせいで俺の夢-サッカー選手の夢は粉々に砕け散ったんだ!」
「磯部君、それは実力の差というものではないのかい?」
「ああ、その時はあきらめて吉村に道をゆずったよ。しかしあいつは…あいつはサッカーを捨てたんだ!俺がやめた次の日にな!そして俺のたった1人の家族のおばあちゃんはショックで死んじまったんだ!」
「磯部君、たしかに大切な人が死んでしまったのは悲しいだろう。だが吉村君が死んでしまったことで家族はもっと悲しむんだよ。」
「そうか…そうだよな。恭介、警部さん。俺、自首します。」
「うん、それが君にとっても一番いいことだよ。」
恭介は吉村に向かって手を合わせると、立ち上がった。
「では、僕はこれで。そろそろ授業が始まるので。」
恭介は黒死館殺人事件を片手に、教室へ、名探偵への道を歩み出した。
FIN