捨て猫な俺〜徒然なるままに
『乙女ゲームの第三者〜徒然なるままに』の過去話(猫メイン気味)をゆるりと語ります。
年若い猫との出会いが、俺の意識を覚醒させた。
子供時代。両親が共に魔術師で働いていたため、俺は屋敷で1人…いや、使用人達に預けられ暮らしていた。
魔術師を輩出する家門の法衣貴族な為、領地を持たない王都暮らしなのだが。
まぁ、共働き家庭と言うやつだな。
両親は共に中々の立場にあるらしく、3歳の俺が顔を合わせたのは数回位しか記憶していない。
…使用人がいる弊害だろうな。
もうほとんど両親は出稼ぎ中と言っても良い状況。
使用人の数もそれ程多くないし、乳母的な位置にいた存在も旦那さんの仕事の都合で退職しているし。
日常生活の世話をそこそこされる程度で、ほとんどボッチな生活。
…軽くネグレクトじゃねぇか?
今かんがえると、そう感じてしまうのも無理はない状態。
3歳だから変だなと考える事もなく、いつも庭でポケ〜っとしてたんだよ。
何かをするって事も考えれなかったからな。
毎日外で、風を感じて雲や花を見たり、虫を見たりしてたんだ。
そんな俺に声を掛けてくれたのが、黒猫のミューだ。
ミューもまだ1歳になっていない位のほわほわな子猫だったと思うんだが、ポケ〜っとしている俺が心配だったのか、反応チェックみたいな事をやったりしてたっけ…昔から賢かったな。
庭で寄り添ってくれたのが始まりでもある。
屋敷の使用人達も特に何も言う事が無かったので、自然な形で一緒に暮らすようになったんだ。
出された飯を食い、ポケ〜っとして、飯を食い。
またポケ〜っとして湯に入れられ、飯を食い、寝る。
…猫から見ても不憫な状況だったのかもしれない。
ミューが必ず俺に付き添う様になった。
そうこうしている内にミューに兄弟認定されたらしい。
「うにゃうっ!」
何やら一大決心をしたと言わんばかりにミューは、庭でポケ〜っとしている俺の目の前で虫を捕獲した。
「ほわぁ〜…すごい…」
ほわほわの子猫さんが、素早く蝶をハントする姿が衝撃的で俺の感性に刺激を与えたのだ。
「ミュー、すごいっ!」
ふすんっとしながらも、ドヤさっ!と全身で訴え掛けてくる毛玉が可愛いいっ!
キュンとする胸を抑えながら『アレ?』っと、自分の中で知らない語録がたくさんある事に気が付いた。
妙にミューの毛並みが…いや、ミュー全体を覆うように光輝いて見え始めた。
実際はそんな事はないんだが…
特別な存在として認識したのだと解った瞬間、猫に対する強烈な熱量が沸き上がってくる事にも気が付いた。
『猫可愛いっ!可愛いは正義!最強っ!最高!』
…語録自体は少なかったな。
冷静に突っ込みを入れれる自分にも気付いた…
ミューと過ごして行く内に、徐々に意識が覚醒していく。
『あぁ…俺は転生してたのか…』
そう気付いたのは、毒草に触ろうとしてミューに呼び止められ、頬に猫パンチを受けて転がった時。
『肉球最高っ!ありがとうございますっ!』
と言う、内心の叫びと共に思い出したのだ。
前世は猫の奴隷か、猫変態か。
詳しい事は思い出せなかったが、日本に在住していた四十路のオッサンであった事は確実だ。
ミューの方も徐々に覚醒していった。
ドゴッ
虫をハントしていたミューが、勢いの余り屋敷の外壁に穴を開けてしまったのだ。
「「……」」
2人で…いや1人と1匹で顔を見合わせ、ソっとその場を立ち去る知識も備わっていた。
そこからハントする場所がちょっとした森がある方になり、獲物も小動物になっていった。
…ただ、小動物をハントし始めてからは、弱った状態の獲物を俺の目の前に持って来て練習をつけ始めたのが若干苦痛であったが…
ミューの兄貴としての教育だと思って、大人しく兄貴を褒め称える事に専念したよ。
時々、夢にうなされる事はあったけどな。
兄貴の心遣いを無碍には出来ない。
その御陰か、若干の残酷物語には耐性が付いた…ような気がする。
…捕食シーンを表情を引き攣らせず見守れる様になったからな。
夢には出るけど。
うなされもするけど。
兄貴と共に生きる事が出来るなら、耐えれたさ。
ミューと共に森へ行く回数が増えてからは、気になる動植物や虫が出始めて、図鑑を読む事も加わった。
ミューと共に図鑑を見る姿は、一部の使用人にブッ刺さり、絵本を読んで貰える事もあった。
2匹?で大人しく聞く姿が、またもやズドッと刺さった使用人達が色々便宜を計ってくれた御陰で、両親に俺の存在を思い出して貰うきっかけになったな。
家庭教師が来始めて、そう感じたよ。
2匹で並んで授業を受けても文句を言わない、素晴らし教師だったさ。
…たまに胸を抑えて悶えるのを耐えていたのは、気付かないフリをしていたよ?
ドアの外にも数人同じ様にしてるのもいたが、知らないフリをするのが優しさだ。
そんな感じでスクスクと成長していった俺達だが、ある日とんでもない事態に遭遇してしまった。
王都の森に森ウルフが出現していたのだ。
通常、王都から離れた森に生息しているはずの生物だったのだが、何故か王都のちんまりとした森をのしのしと散歩していた。
「「っっ?!」」
一瞬で俺とミューの毛が逆立ったね。
すぐに俺を護る位置に着くミューに心配と感動が湧き上がったのは言うまでもないな。
『兄貴っ!!(感涙)けど愛しの猫っ!!』
俺も直ぐにミューに加勢する気概を整えたさ。
のしのし散歩してた森ウルフとパチっと目が合った瞬間、全てが決まっちまったけどな。
「ドシャアァァァーー!!」
ミューから聞いた事が無い声が上がり、気付いたら森ウルフはスクリュー回転しながら吹っ飛ばされていたんだからな。
「ミューぅぅぅーーーー!!」
…一生推せると思ったね。
こう、ハートがガッチリと鷲掴みされたわ。
俺の叫びを聞き付けて、数人の大人達が駆け寄って来て見れば。
「きゅ〜ん…」
と耳を伏せ、尻尾を巻きガタガタ震える森ウルフがいて。
背後に凄まじいオーラを背負った御猫様がお座り体勢で尻尾をタシン、タシンと怒りの説教モード。
お目々キラキラのハスハスした幼児がちまりといる。
信じられない光景に、駆け付けた大人達は絶句してたっけな。
まぁ、あれだ。
とりあえず皆、無傷だったから良かった。
若干トラウマが埋め込まれたワンコもいたけど、生きていればそんな事もあるだろうさ。
強く生きろ、と心からのエールを贈る。
ワンコは…ちょっと裕福な家の方々が森ウルフを飼っていて、散歩させてたって話かな?
…リード付けとけよ、とは思ったけどな。
飼い主らしき人物は、ひたすらミューに謝り倒していたのが印象的だったわ。
怒れるミューが恐ろしかったんだとよ。
こんなに可愛いのに、失礼な話だ。
んで、後日お詫びでお茶しにおいでと言われてな。
家に届いた招待状は侯爵家からだった。
しかも親父の上司と来たもんだから、両親がすっ飛んで帰って来て。
更に。
「誰ですか?」と。
幼児の知らない人を見る目に崩れてくれたわ。
両親は膝をつき、俯いて震えてるし。
使用人達は『あちゃ〜…』となってるし。
ミューは俺を護る体勢に入ってるし。
プチカオスだったな。
俺?俺は、両親の膝つきは何のパフォーマンスかな?な顔で見てましたよ。
実際問題、子供に無関心な状態と言っても間違いじゃない生活を送ってたしな?
え?何?何を悔やんでの膝つき?
俺に忘れられる位に無関心だった事?ネグレクト気味だった事?それとも上司にソレがバレちゃった事?
正直、突っ込みたい所は満載だったけど、それは言わないよ。
だって、幼児だからな。
心がボロボロになった親父に連れられて、ミューと共に侯爵家にお茶をしに行った際。
親父が侯爵様に「家には帰る様に」と諭されて、更に萎れてたのはどうでも良かったが。
森ウルフがミューに何やら指導を受けて、キラキラと尊敬の眼差しを向けているのには、深く頷いてしまった。
そうだろう、そうだろう。
うちの兄貴、カッコイイんだよ。
それがわかるなんて、中々見込みのあるウルフくんだ。勝手に親近感を持ったね。うん。
侯爵様…いや、お館様が言うには。
森ウルフは、侯爵家で番犬の役割りで5匹飼っていて、順番に散歩に連れ出していたそうだ。
ただ何分野性動物の為、リードは中々受け入れて貰えず…かと言って散歩で発散させなければ有り余った力が爆発してしまうし。
人に襲い掛かる事はしないし、人気が無い場所なら〜…と散歩に出ていた所で、今回の事件が起きてしまったとのこと。
猫にボコボコにされ、プライドをへし折ってくれた御陰で、今は素晴らしい番犬になったと言うが…
…侯爵家ヤベェなと密かに思ったのは、仕方ないのではなかろうか?
随分と甘ちゃんな考えで、事件が起きたならどうする気だったんだろうか。
しかも、猫にボコボコ教育指導を受けた番犬…
魔獣が蔓延るこの世界じゃ珍しくもない現象なのか…それにしても軽い。
将来の勤め先になるかもしれない場所に不安しか感じなかったわ。
まぁ、絶対に親子共々勤めろって事じゃないだろうし?
って思ってたら、回収されてで草状態なんだが…
…そんな事もあったなぁと懐かしむ余裕くらいは残ってるな。うん。
視界の端で、森ウルフの子供とコロコロ走っている3歳の坊っちゃんを見ながら、つらつらと思い出していた。
ミューと過ごした期間は2年。
短い間に、たくさんの思い出が詰まっていた。
猫は、幼い頃に一緒に育った生き物は生涯友と認識されると聞いた事がある。
元来の猫好きに加え、第2の人生の始まりが猫と共にあったのだ。
多分、一生猫に深く惹かれて行くのだろう。
「あっ!にゃーにゃー!」
「キャインっ!」
黒猫を発見した時の坊っちゃんと子ウルフの反応に吹き出す。
森ウルフの方も代々ミューの指導を伝えているらしいな。
いつか見た様に、耳を伏せて尻尾を丸め込み、ガチブルで震えている子ウルフに、坊っちゃんは首を傾げている。
ミューは強かったからな…
2年が経ち、俺がきちんと面倒を見て貰える状態だと理解したミューは、森へ去って行った。
あっさりとした別れだったが、そう言うものなのだともわかっていた気がする。
…凄え男前な背中だったな。マジでモテにゃんだろうな。
だってさ。
森付近の黒猫率が高いんだよ。
しかも結構強いタイプが多いみたいでな?
ミューが去ってすぐの事なんだが。
魔熊が何処からともなく森へ来て、住み着いたかも…と情報が入った時、お館様が森ウルフ達を従えて調査に行ったんだよ。
そうしたら、猫に取り囲まれてボロボロになっていた魔熊がいてな?
そいつにトドメを刺すだけの簡単なお仕事になったとかなんとか…
ちょっとしたバグ発生並みのお話だったわ。
てゆーか、猫猫団結成してるとか…最高か?
お館様は「アレは、きっとケットシーか竜の血筋だな」と言っていたが、猫に変わりない。
…竜ってなんだ?と突っ込みを入れたかったが。
ここは異世界。そんな事もあるんだな程度だ。
猫最高。猫最強。
森の守神として祀ってもいいと思う。
手が進む限り、ゆるゆるつらつらの物ですが。
最後の所まで読んで頂き、本当にありがとうございます。
※不安になり「これで投稿しようと思うが、変な所ある?」とAIに訪ねました。
→『猫変態としての熱量』の差が激しいと応えられ、現実の自分を指摘されたかと冷汗が滲みました。




