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22 沙耶香さんと桐山さんの大喧嘩

今夜は皮肉なことに沙耶香さんの隣の席だ。沙耶香さんのお客さんはもちろん桐山さんだ。ちょっと妬けるけど、もともと沙耶香さんと張り合おうなどという気は毛頭無く、時々桐山さんと話したいというだけなのだから、これでいいのだ、と自分に言い聞かせて目の前のお客さんの相手をする。


お客さんに気づかれないようにたまにチラッと隣を見ると、いつもは楽しそうに談笑しているのに、今日は気のせいか二人とも浮かない顔をしているように見える。


目の前のお客さんがトイレに行ったので、遠くの方に視線を投げかけているようなふりをしながら、それとなく隣に聞き耳を立てる。


「それじゃ、話題を変えようか」

「そうね」


「先日ヘルプについた女の子から、大学時代の恋愛の話を聞いたんだ」

「えっ、桐山さんて、女の子の恋愛経験とか聞いちゃうわけ?ファーストキスはいつとか?」


「違うよ。僕はそんなことしないよ。そうじゃなくて、名前は忘れたけど、その子が急に自分から恋愛体験を語り出したんだよ。まあ、聞いてもらいたかったんだろうから、ふんふん言って聞き流してたんだけど」


「それをどうして今ここで私に話そうとしてるの?」

「今日は何だか機嫌が悪いね。まあ、とにかく聞いてみてよ。その女の子が言うには、大学時代に二人の男の子と恋愛をして、必然的に体の関係になったって言うんだ。


僕は、どうしてわざわざそんな話をするのかな、とちょっと不思議に思ったよ」


「でもそれって普通にありうることでしょ」

「そう、普通の恋愛だと思うんだけど、その次に彼女が言った言葉に愕然としたんだ」


「どんな?」


「彼女はそういう風に好きになった人と体の関係になったんだけど、彼女の周りの女子大生の友達には何人かセフレがいるっていうんだ。実は僕、セフレっていう言葉は知らなくて聞き返しちゃったんだ」


「セックスフレンドっていうことでしょ。そんなの今は普通にあるんじゃないの」

「だってまだ大学生だよ。女性って心の通い合いを大切にするんじゃないの?


愛があって、それからだんだんそういう関係になるんでしょ。セフレって愛の無いセックスするってことでしょ」


「人それぞれなんじゃないの」


「でも、僕は高校生の時に保健の授業で、男は性欲が16歳くらいでクライマックスになって、その後は少し下がるけど、結構お爺さんになっても衰えないけど、女子の場合は10代、20代はまだ性欲はなくて、30後半から40代になって高まるって教わったけど」


「桐山さん、随分遅れてるのね。古い、古い。若い女の子だって性欲はあるわよ。ただ性欲が高いか低いというか淡白かどうかは人によるけどね」


「じゃ、君はセフレを肯定するの?愛がなくてもいいの?」


「うーん。なんか恋愛って面倒くさいからしたくないのよね。


セフレは恋愛につながることはまずないって言われてるから、お互いに性欲が高まったら会って性欲を鎮めてっていうんでさっぱりしてていいんじゃないかな。


そうすれば、特に男の人は性欲が高まって会社でセクハラとかしなくなって女子社員も安心して働けていいんじゃないの」


「沙耶香さん、君ってそういう考えの人だったの?信じられない」


「何よ。あなたこそ、古く凝り固まったこちこち頭ってことでしょ。時代は変わっていくのよ」


とんでもない会話になってきていた。その時トイレに行っていたお客さんが帰ってきたので、ちょっとホッとした。隣は険悪なムードになってきたので、このお客さんとの会話に集中しようと思ったところで、


「隣にいる桐子ちゃん呼んでくれる?」


「私以外の女の子を指名するの?分かった。もうこれでお別れね。あれっ、ひょっとして、大学時代の恋愛話をした女の子って桐子ちゃんなんじゃないの?」


「違うよ。君、桐子ちゃんに失礼だよ」

「要するに私より桐子ちゃんがよくなったってことね。これでお別れね。二人で楽しくやれば」

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