21 おばあちゃんとケンカ
今日も桐子は苦闘している。おばあちゃんは次々にいろんな想定外のことをやってくれちゃうからだ。
ご飯を炊きっぱなしのまま忘れて放ってあるというのは前からよくあって、桐子が夜のパトロール(鍵閉めなど)の際に気が付いてそのご飯を器に盛り、ラップをして冷蔵庫に入れるということはよくやっていたのだが、最近は炊飯器の中に米と水が入っていて炊飯器のスイッチが入っていない状態のままおばあちゃんは寝てしまっていることがよくあり、米粒だけをザルに取り、冷蔵庫に入れるなどの処置をしているのだ。
ご飯についてはこんなこともある。おばあちゃんは朝はパンを食べる。週に3回は夜は宅配弁当で、その日はお弁当の日だったのだが、おばあちゃんはご飯を4人分くらいたくさん炊いて、お昼に食べるのかと思ったら炊いたことを忘れて近くのドラッグストアでおにぎりやお稲荷さんを買ってきて食べてしまい、ご飯がそのままになっている。
そこで桐子がご飯をざっと4等分にしてジップロックに入れて冷凍し、明日はこれを食べるように言っておいた。けれども翌朝はまたご飯を炊いてしまったのだ。それも5人分くらい。
これではご飯がもったいないので、おばあちゃんがご飯を炊いた時には炊飯器を2階で預かることにしている。案の定おばあちゃんは炊飯器が無いと言ってくるのでその都度説明し、その場では一応納得するが何度も聞いてくる。時々冷凍室を覗いて冷凍ご飯がなくなるとまた炊飯器を元に戻すという面倒なことをやっている。
昨日の夕方は桐子は4回もおばあちゃんに呼ばれていた。行ってみると、夕食を食べたかどうかわからないと言っているのだ。
おばあちゃんの冷蔵庫の冷凍室には冷凍食品がわんさかとあってひたすら消費期限が来るのを待っているという感じなのだが、そのうちのすぐに温めて食べられるレトルトの中華丼を温めさせ、それをご飯の上にのせるところまでやってあとは食べるだけの状態にして二階に引き揚げた。
しばらくして一応桐子が様子を見に行くと、その中華丼はラップをして冷蔵庫に入っていた。おばあちゃんにそのことを問いただすと、やっぱり夕食を食べたと思う、なぜなら今はお腹が空いてないからこれは食べられないと言うのだ。
桐子はカチンときて、何だ、この有様は、とやや強い調子で言った。するとおばあちゃんはイライラして
「私はどうすればいいの?」
桐子は
「あなたのような人は施設に入ればいいんだよ。だいたい食事を取ったかどうかなんて当の本人にしか分からないんだから、分からなければお腹が空くまで食べなきゃいいでしょ」
「あっそう。じゃいいよ。施設に入るから」
激しくやり合ってしまった。言ってはいけないことを言ってしまった。桐子は2階に駆け上り、今のことをすぐに忘れて気持ちを切り替えようとした。
こんなに一生懸命やっているのに、母も誰もわかってくれないんだ。別世界に行きたい。そう、明日がガールズバーのバイトの日だ。それまであと約24時間、がんばろう、と自分に言い聞かせる桐子だった。




