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19 普通のクイズじゃつまらない

やっとガールズバーのバイトの日が来て、ヘルパーさんにおばあちゃんを任せて、たった3時間ではあるが別世界に来ている。


ほとんどのお客さんは優しいのだが、たまに嫌味な人とか愚痴ばかりの人もいて、ここ別世界でもストレスのたまる事もあるが、そこはお金をいただいているのだから仕方ない、割り切らなきゃ、と自分に言い聞かせている。


それにしてもやっぱり最高に楽しいのは桐山さんだ。沙耶香さんのお客さんだから、たまにヘルプで呼ばれるくらいだけど、そんな時はとっても楽しい。


呼ばれなくても、ちょっと妬けるけど、彼の姿が遠目に見えるだけでも何となく楽しい。


ヘルプで呼ばれることを期待すると落胆することになるから、期待はしないように、何というか無我の境地で、でも何となく呼ばれたらいいな、などと思ったりしている。


今夜も桐山さんは沙耶香さんと楽しそうにだべっている。


自分自身に、

「期待しちゃいけない、期待しない、期待しない」

と言い聞かせるようにしてお客さんの相手をしていると美人で人気の沙耶香さんが移動した。


トイレではないようだ。ではドリンクを取りに、またはカクテルを作りに行ったのだろうか?目の前のお客さんに気づかれないように沙耶香さんの動きをたどっていくと、別のお客さんについた。


リクエストがあったようだ。次にヘルプで自分が呼ばれますように、と祈ったりすると落胆することになるから、そういう風には考えないようにして、誰が代わりのヘルプになるのかな、という好奇心と自分に言い聞かせて見ていると、何と桐子が呼ばれたのだ。


確かある詩人の詩集で

「求めない」

とかいうのを見たことがあるが、期待しないというか、求めないようにしていると時にはいいことがあるってことだろうか。


ヘルプで行くように言われて、本当は飛び上がりたいくらいに嬉しいけど、無理にポーカーフェイスにして桐山さんの向かいへ行く。


「やあ、桐子ちゃんじゃないか。久しぶり!」


沙耶香さんをはじめいろんな女の子と接しているはずなのに自分の名前も一応覚えていてくれてちょっと嬉しい。


食べ物の話や世間話などをしていると、桐山さんがクイズを出してくれることになった。桐子はこれを待っていたのだ。


「電車に乗っている時に、何となく網棚の上の方を見たら、ある広告が貼ってあったんだ。まあ、広告というか、電車内のマナーに関する、啓発するような感じのポスターだったんだけど、そこに電車の中の座席の絵があって、そこにある生き物がいくつか座っているんだ。


そしてポスターには

『電車の中では詰めて座ろう!』って書いてあったんだけど、その生き物は何でしょう?」

「えーっ、今は猫が人気があるから、猫?」

「ブー」

「じゃ、犬?」

「ブー。問題の中にヒントがあるんだけど」

「えーっ、ハムスター?」

「ヒントは『座ろう』だよ。あと、英語」


「あっ、swallow でツバメね?」

「正解」

「正解できたのはいいんだけど。別にうれしくない」

「どうしたの?」

「わがまま言いたくなっちゃった。こういう普通のクイズじゃつまらない」

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