18 介護が好きな人
今日は朝からおばあちゃんが財布が無い、鍵が無いと大騒ぎしている。最近は自分で探しなさい、と言うことが多い。
というのは一階にいって一緒に探すのだが、結局財布はいくつかある買い物用バッグのどれかに入っているし、鍵が無いと騒いでいるが、その側で鍵につけてある鈴の音がさかんにしている。
無い無いと言っているが、鈴の音はおばあちゃんの掌から聞こえてくる。つまり手に鍵を握っているのに無い無いと言っているのだ。
手に握っていない時はズボンのポケットに入っている。だんだん子供のようになってきていてほとほと困っている。
早く、ガールズバーに行きたい。でないと精神的にまいってしまう。
もちろん、世の中にはもっともっと大変な介護をしている人はいっぱいいて、それに比べたらどうってことないと言われてしまうだろうが。
ただ、世の中には比較的介護に向いているというか、介護が苦痛な人とそうでもない人がいるのではないか、とも思われるのだがどうだろう。桐子は最近ラジオでこんな話を聞いたことがある。
それは、ある女優さんの話なのだが、彼女はもう20年くらい女優業をやっていて、まあ主役ではなくて、名脇役といった感じなのだが、その仕事と並行して20年間何と訪問ヘルパーもやっているというのだ。
彼女は仕事の内容を具体的に語っていた。夜7時くらいから翌朝7時くらいまで、約12時間もの間、それも世間の人々が眠っている間に10軒くらいの家を訪問するというのだ。
そしてそれぞれの家を訪問した時の仕事は、ほとんどがオムツ交換だというのだ。桐子のおばあちゃんは幸にしてまだオムツにはなっていなくて、一応自分で排泄することはできるが、いつかはできなくなる時が来るだろうし、その時のことを想像すると恐ろしい。
たとえ自分と血のつながっているおばあちゃんとはいってもオムツの交換は嫌だ。交換して更にお尻を拭いたりなんてできないと思う。
けれどもその女優さんは、全く血のつながっていない赤の他人のオムツを取り替えたりすることが苦にならないどころが、むしろ楽しいと言うのだ。
何が楽しいかというと、いろいろとコミュニケーションを取りながら何かをするのが楽しいから何年も続いているというのだ。
素晴らしいというか、本当にすごい人だなと思う。尊敬してしまう。それに引き換え、情けないが自分には到底できないと思う。
じゃどうしたらいいのか、それは実際にその時が来たら考えることにしようと桐子は思う。そして今の桐子は、このストレスのたまる日々から時々逃げ出さないと、あのガールズバーへ行かないと発狂しそうでダメなのだ。




