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15 思いがけないリクエスト

今夜はやっとガールズバーでのバイトの日だ。週に3回もあるのだが、次が待ち遠しくてしょうがないと思っているせいか、時間が経つのが遅く感じるし、逆にガールズバーでの3時間はあっという間に過ぎてしまうのだ。


ガールズバーでは制服は無くて私服なので、特に着替えたりする必要は無いのですぐにお客さんの前に出る。今のところ桐山さんはいないようだ。


そういえば今夜は沙耶香さんは風邪を引いて休みらしい。二人はラインで連絡を取り合っているようだから、つまり桐山さんは来ないということか。つまらないが仕方ない。


ある人気脚本家が人生の9割は辛く苦しいことで、楽しいのは残りの1割だと言っていたし、ある人気作家は人に期待をしてはいけない、と言っていたっけな。


ただ彼女はこうも言っていた。人に期待をしてはいけないが、期待をしなければ、いろんな人が助けてくれるものだとも。本当だろうか。


自分には桐山さんのクイズという、ほんのささやかな楽しみさえなかなかやって来ない。


自分の人生は9割以上が辛く苦しい、思ったようにいかないことばかりで、誰も助けてなんかくれないじゃないか、と悲観的なことを考えていた時、急にママさんに呼ばれた。2番席に行くように言われた。


 うつろな気持ちのまま2番席に行ってお客さんの方を向くと、何と桐山さんが笑顔でこちらを見ているではないか。


その瞬間、人生は捨てたものではないな、と感じたが、同時にこれはいけない、と思い、ポーカーフェイスで

「桐山さん、こんばんわ。あれ、今夜は沙耶香さんは風邪でお休みなのにどうして?」


「会社を出る直前に連絡もらったんだけど、気持ちはこちらのガールズバーだったから、そのまま来てしまったというわけ。


まあ、誰でもよかったんだけど、ふと桐子ちゃんのこと思い出して、リクエストしちゃったってわけさ」


桐子はその時にこれはよくない展開だと思った。桐山さんは沙耶香さんのお客さんだ。これまでのようにたまにヘルプでママさんから指示されて席につくのなら問題ないし、自分はそれだけで十分満足していたのだ。


リクエストされるのは、個人的にはうれしいが、下手すると沙耶香さんのお客さんを奪ってしまう可能性があるし、そうなったら沙耶香さんに恨まれてしまい、店に居られなくなってしまうかもしれないではないか。


そこで心の中の感情を極力押し殺して不機嫌を装うことにした。絶対に微笑んだり楽しそうに笑ってはいけないと思った。この席にいるのが嫌だという雰囲気を演出しようと思った。

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