11 やっと桐山さんと話ができる!
今夜もオアシスであるガールズバーに来ている。なるべく期待しないようにはしているが、桐山さんと10分でもいいから話がしたい。その時間が今の桐子にとっては救いなのだ。
でもなかなか思ったようにはいかない。桐子は週3回だが、桐山さんは週に1回だし、どの曜日に来るかわからない。
沙耶香さんは桐山さんのお客さんだから、きっとラインとかやってて二人は確実にこのお店で会えて話ができるのだろうが、桐子は全く会えない週もあるし、会えても、いや、会えると言ってもこの場合直接会うという意味ではなくて、桐山さんがお店に来てくれて顔が見られる、ということなのだが、彼はすぐに沙耶香さんをリクエストするから彼女が別のお客さんにリクエストで呼ばれて、しかも何人かいる女の子のうちからママさんが桐子をヘルプに選んでくれないと話はできないのだ。
というわけで、桐山さんと話をするまでにはいくつもの関門があるのだ。その僅かな時間を心の支えにして桐子は日々を送っている。
楽しく話をできるお客さんはもちろん桐山さんの他にも何人かいる。けれども恋愛感情ではないとは思うが、桐山さんのお話は他のお客さんとは一味も二味も違って独創性のようなものがあって特に楽しいのだ。
今夜は桐山さんが来てはいるが、いつものように沙耶香さんとだべっている。桐子は時々対面しているお客さんに気づかれないように、さりげなく二人の様子をチラッと見てはちょっと羨ましい気分になる。
しばらくするとどうも沙耶香さんが別のお客さんにリクエストされたようで、別の席に移った。するとママさんが立ち上がった。誰かにヘルプを依頼するためだ。
桐子は一瞬期待したが、ヘルプは怜ちゃんだった。怜ちゃんが桐山さんと楽しそうに話している。今日もダメだった。最近2週間くらい彼と話ができないままでいる。
20分ほど経ち、そろそろ沙耶香さんが戻る頃だな、と思った時、急にママさんが来て耳元でささやいた。沙耶香さんはさらに別のお客さんからもリクエストがあり、そちらにいかなければならないので、2番席のヘルプの怜ちゃんと交代するようにという指示だった。
今日も話せないと諦めていたのに、青天の霹靂だ。こんなこともあるんだな、と感心しながら桐山さんの席についた。




