エピローグ 未来に繫ぐ一球
エピローグ 未来に繋ぐ一球
夏の青空が、照りつける。
航太は大学の野球部のユニフォームに袖を通し、マウンドに立っていた。
キャッチャーには、ミットを握る仲間がいる。
心の中では、かつてタイムスリップした夜に交わしたキャッチボールの光景が、鮮明に蘇る。
「お前ならできる!」
あの時、祖父・航一が未来の自分に託した言葉が、胸に響く。
一球、一球、魂を込めて投げる。
白球は真っ直ぐに、ミットへ。
打者の顔を見ながら、笑顔を思い浮かべる。
仲間たちと笑い、ボールを追いかけるその瞬間、航太は確信していた。
――じいちゃんの命は、俺に託された。
――全力で生きるんだ。未来で、野球で、人生で。
試合中、風がそよぎ、太陽が汗で濡れた顔を照らす。
かすかに、赤とんぼが飛ぶような感覚が胸に広がる。
祖父の笑顔、スズおばあちゃんの温かさ、
全てが、自分の力になる。
打者に向かって投げる球は、ただの白球ではない。
時間を超え、家族の想いを乗せた一球だ。
「いくぞ!」
航太は大きく声を出し、力強く腕を振る。
ミットに収まる音――あの夜のキャッチボールのリズムが、再び心の中で響いた。
打者のバットが空を切る。
ナイスボール!
仲間の声と歓声が響き、グラウンドには夏の匂いが満ちる。
航太は深呼吸をして、空を見上げた。
見えないけれど、確かに祖父の魂が、この瞬間も自分と一緒にいる。
胸の奥で、静かに誓った。
――俺は、じいちゃんの命を、生きることで繋ぐ。
――これからも、野球を、人生を、全力で生きる。
夏の光に包まれ、グラウンドに響く打球音。
航太は笑顔で、次の一球を投げた。
未来へ向かう、希望の一球――。