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5『いつか来るべき日』

 聖女の罪。ユーリがそれを調べ始めてから数日が経った。けれども結果は思わしくない。

 そもそもユーリは大聖堂から出られない。大聖堂内で調べものをするとしたら、大聖堂内にある図書室で調べるしかないのだ。そんな場所に聖女の罪などという言葉が載った本があるはずもなかった。完全に手詰まりだった。


 窓辺に座って外を眺めるシュニーを見る。

 今日も今日とて真っ白な彼女は、楽しそうに外にいる小鳥を見ているようだった。その姿のどこに罪などあるだろうか。


「……聖女の罪って、わかるか」


 ユーリの言葉にシュニーが振り返る。空色の瞳がまばたいた。そしてシュニーは微笑む。それは雪深い日に一筋差す太陽の光のように儚い笑みだった。


「おそらく、祝詞の一部のことではないでしょうか」


 そう言ったシュニーは顔を輝かせる。そうして胸の前でパチリと両手を合わせると、ユーリに迫った。きらきらとした空色の瞳を縁取る白銀の睫毛までくっきり見える距離だ。


「ついにユーリにも主への信仰心が芽生えたのですね」

「は? 全然違うけど……それよりも祝詞ってなんだよ」


 ユーリの言葉にあからさまに肩を落としたシュニーがいじけて唇を尖らせながら口を開いた。


「祝詞は主に捧げる祈りの言葉です……実際にやってみせましょうか?」

「ああ、頼む」


 シュニーは頷くと跪いた。顔は神託の間の方を向いている。そうしてシュニーは胸の前で手を組むと目を閉じた。

 そうっとシュニーの口が開かれる。


「……主よ、わたしの罪をお赦しください。わたしの魂は転生の廻廊へ、わたしの肉体はフレディアの大地へ、わたしの心はフレディアの民へと捧げます。主よ、フレディアに繁栄を、フレディアの民に幸福を。どうか彼らをお守りください。わたしの罪をお赦しください」


 美しい光景だった。鈴の音の声が祈るのように言葉を紡ぐ。けれど、だからこそ罪の赦しを乞う言葉だけが異様だった。

 そろり、とシュニーの瞳が開かれる。そしてユーリを見た。


「どうでしたか? 主への信仰心は芽生えましたか?」

「いや全然……シュニー、その罪っていうのは」

「……わかりません。ただ聖女は咎人でもあると、主からそう聞いています」

「シュニー、その、お前にとってフレディアはどういう存在なんだ」


 信仰している存在にお前は咎人だと言われるのはどんな心地なのだろう。ユーリには想像もできないことだった。

 問われたシュニーは指を顎に添え首を傾げる。それからややあって口を開いた。


「こう言うと不敬なのかもしれませんが、父のような存在だと思っています」

「父って、父親か? 一体なんで」

「聖女の力は主から賜ったものですから……その力も使えるのはあと一年ほどですが」


 そう言って一度目を伏せたシュニーは、空色の瞳でまっすぐにユーリを見た。そして祈るように胸の前で手を組む。


「ユーリ、もう準備はできていますね」

「ああ」

「ふふっユーリになら安心して任せられます……その日が来たら、わたしを転生の廻廊に送ってくださいね」

「……ああ、その日が来たら必ず俺がお前を殺してやる」


 ユーリの言葉にシュニーは花がほころぶようにして笑った。

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