4『聖女の罪』
不審な男の侵入から数日。ユーリは門番の女騎士を問いただしたが、大聖堂には大司教以外の出入りは許してはいないと言われてしまった。
それならあの男はどこから来たのか。まさか空を飛んできたわけじゃあるまい。ただ、大聖堂内にも女騎士を配備し、警備をより厳重にすることとなった。
「やあ、竜の騎士くん。この間ぶりだね」
聞こえた声にユーリは今度こそ躊躇うことなく腰に佩した剣で男の首を刎ねた。けれども男はピンピンしている。ユーリは舌打ちをした。
「おや、今日はこれで終わりなのかい?」
「俺はこの世で一番首を刎ねるのがうまい。その俺が本気で首を刎ねて刎ねられないのなら、この世の誰もテメェのことを殺せねぇ」
ユーリの言葉に男がまばたく。
その仕草までシュニーにそっくりでユーリは再び舌打ちをした。
「テメェの目的はなんだ」
「うーん、強いて言えば脚色をしにきたのかな! キミたちにはもっと悲劇を演じてもらわないといけないからね」
「は?」
「聖女の罪を調べてごらん。面白いことがわかるかもしれないよ。邪竜の色をした竜の騎士くん」
そう言うと白く大きな布を纏った男は、ユーリがまばたきをする間にその姿を消してしまった。それにユーリのとある仮説が証明されてしまって、ぐしゃぐしゃと黒髪を掻き乱した。しかし、だ。
「聖女の罪って、なんだ」
ぽつり、大聖堂の廊下にユーリの言葉が響いた。