それっぽいの
それは、移動中の馬車での出来事だった。
「キャァァァ!」
甲高い悲鳴と共に、馬車は火に包まれた。
燃え盛る馬車の上には黒いローブに身を包み歪んだ短剣を腰にぶら下げた一人の男性が立っていた。
「お、お前は誰だ!?なぜ俺たちを襲った!?金か!?」
気が動転しているのか、親父にいつもみたいな覇気は無かった。
「金なんかどうでもいいさ。俺はお前らの苦痛に歪んだ顔を見に来たのさ...」
男は舌なめずりをしながら言った。
「どうだ?お前らの大切にしているものを一つくれりゃあ考えてやってもいいぜ?」
「ほ、本当か!?」
すると後ろで震えていた母は目を輝かせながら言った。
「なら、この私達の子供を差し上げます!どうぞ、好きにしてください!」
ガスッ
俺は後ろから蹴飛ばされ、地面を這った。
「これで私たちは助かるんですよね!」
その言葉に、俺は何も思わなかった。こんなこと、何度も経験してきたじゃないか。
ガッ
男は俺の頭を掴んで顔を覗き込んできた。
「チッ」
ガン
頭に、強い衝撃が走った。
...........................
「ここは...?」
俺はいつの間にか、暗い洞窟で寝ていた。
(たしか僕は.....)
「チッ起きたのか」
あの男だった。
「相変わらず、死んだ目だな」
すると男は、焼け焦げた肉を突き出してきた。
俺は、何も言わずにそれを食べた。
「なぜ、僕なんかに食べ物を?」
そう言ったが、男は黙っていた。
(そういえば、両親はどうなったのだろうか)
「ついてこい」
男は立ち上がり、さっき来た方向へ歩いて行った。
男についていくと、洞窟の外に出た。
そこには、完全に燃えた馬車と、奥には二つの死体が転がっていた。
誰の死体なのかは分かっていた。
おかしいな、親が死んでるっていうのに、涙一つ出てこない。
そう死体の側で立ち尽くしていると、
チャキン
俺は押し倒されて首に歪んだ短剣を突きつけられていた。
これから死ぬというのに、何も怖く無かった。
「お前、何も思わないのか」
そう男は言った。
俺は無言で頷いた
「チッムカつくガキだな
もう少し殺しがいのある顔をしろよ」
男は剣をしまうと、不貞腐れて洞窟の方へ歩いて行った。
「あの、あなたの名前は?」
「..........」
「..無い」
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