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名もなきファンタズマ  作者: 佐藤華澄
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 ひと仕事を終えた後のシャワーは格別だった。心地よい疲労感とあたたかさに包まれながら、汚れを落とした身体をバスタオルでしっかりと拭く。そのとき、脱衣所の籠に、下着を用意していなかったことに気がついた。あーあ、めんどくさ。いつもなら思いっきり舌打ちしていたところだが、今日は機嫌がいいので過去の自分を許してやる。

 バスタオルで髪をわしゃわしゃと拭きながら、全裸のままで寝室に入る。えーと、どこだ、パンツ。片っ端からタンスを開けていき、無事にトランクスを発見する。しっかり穿いて再び脱衣所に戻り、ワンサイズ大きいTシャツとズボンを身にまとった。

 面倒なのでバスタオルを首に引っ掛けたまま、リビングを通過して冷蔵庫に向かう。なんかいいものないかな、と覗き込んだ。缶のビールが二本と、チューハイが四本。ビールはそれほど好きじゃない。適当なチューハイを手に取って、一気に飲み干した。乾いた喉の潤う感覚、一瞬の浮遊感。空き缶をシンクに放り投げて、もう一本取り出した。まだ足取りはしっかりしている。

 リビングのソファにどっかり座り込み、テレビをつけた、サッカーの中継が行われている。贔屓のチームが先制していることに気をよくして、プルタブを引き上げる。今度はゆっくりチューハイの味を楽しみながら、再びシュートを決めた贔屓チームにガッツポーズをした。

 疲労感、あたたかさ、アルコール。体重を預けたソファに包まれる感覚が心地よくて、どんどん眠気が増してくる。がくんと首が落ちて、手の中の酒を零しそうになった。危ない危ない、とまどろむ意識の中で缶をローテーブルに置き、いつしか眠ってしまっていた。


 目が覚めた。試合はとうの昔に終わっていて、テレビでは全然知らない時代劇の再放送が放映されていた。時刻は午前四時半ちょっとすぎ。いけないいけない、とぬるくなった缶の中身をシンクに流して、昨日放り捨てたのとあわせてゆすいでから、中身がいっぱいのゴミ箱に放り込んだ。家を出る際に、まとめてゴミに出そう。袋の口を縛って、一旦玄関に置いておく。顔を洗って、髭を剃って、歯を磨いて、身支度を済ませる。時計に目を遣った。午前五時前。そろそろいいだろう。ゴミ袋を手に、外へ出た。

 さて、帰ろう。

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