表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メイドさんな同級生  作者: とう助
8/34

第8話 二年生

「―――ん。――くん」


なにかが聞こえるような気がする。


「――のせくん」


この妙に聞きやすく、心地がいい声はなんだろうか。それになんだかぽっぺをつつかれているような感覚がある。


「――のせくん、起きて」


ん?もしかして俺の名前を呼んでいるのか?それに起きて、だって?俺は今何してるんだっけ...。


「起きて~、もう朝だよ~?」


「...??」


意識がはっきりしてきた俺は、徐々に目を開ける。するとそこには、とてもきれいで優しそうな顔が俺の目の前にあった。


「うわっ!?」


俺は飛び起きるように、そしてその顔から逃げるかのように上半身を起こす。それに驚いた目の前の美少女は「わお」なんて言いながらこちらを不思議そうに見ていた。


「おはよ、一之瀬くん。やっと起きたねぇ」


「...あ、西園さん、おはようございます...」


胸がドキドキしています。人生でこんなに女の人と顔近づいたの初めてなんです。変な寝言とか言ってなかったよね...?


「ダメじゃんちゃんとアラームかけておかなきゃ~」


どうやら俺はアラームを忘れていたらしい。今日は二年生になって初めての登校日。今まで春休みだったためアラームの設定を切っておいたのだが、そのまま切りっぱなしになっていたようだ。


「...あー、完全に忘れてました。まじで起こしてくれてありがとうございます」


「まぁこれもメイドとしての仕事ですのでっ」


そういいながら胸を張る西園さん。非常に頼れるメイドさんだ。だがもうあんなに顔近づけるのはやめてくれ。俺の心臓が持たない。ていうか、あの頬をつつかれてるような感覚、絶対ほっぺツンツンしたでしょ...。


「さっ、早く顔とか洗ってきちゃってよ~。朝ごはん出来てるよ」


「...分かりました」


朝から西園さんの料理食べられるとか、幸せ過ぎない??



俺が顔を洗って戻るころには、すでにダイニングテーブルに朝食が置かれていた。今日はトーストをメインに、他にはオムレツ、ヨーグルトなど。春休み中の数日は和食寄りだったため、この洋食は珍しく感じた。今日も朝から幸せです。


「今日は洋食っぽくしてみたよ~。と言っても実際がどんなものか知らないから適当なんだけど~」


「こんなもんじゃないっすかね?」


俺もあんま詳しく知らないから曖昧な返事しかできないのが申し訳ない。でも美味そうなことには変わりないので、俺はもう食べたくて仕方がない。


「「いただきまーす」」


同時に手を合わせた俺たちは、今日の学校について話し合った。


「いいですか、学校では関わらない。これは絶対です。まぁそもそもいる次元が違うんで関わりなんてないとは思うんですけど」


西園さんはクラスの陽キャグループに属している。それに反して俺は特にどこのグループということもなく、学校内だけの友達と話したり、話さなかったりだ。まぁ一人ずっと一緒にいるような友達もいるんだけどね。それなのに急に西園さんが俺に話しかけてきたら、周りから不審に思われてしまう。この関係はバレてはいけない。そのため多少慎重になる必要があるのだ。


「分かってるよ~。もう何回も言ってない?」


「それほど大事なことなんですよ。いいですか、俺たちのことバレたら大変なことになるんですから。気を付けてくださいね」


「は~い」


...この人、ちゃんと分かってくれてるよね?なに、その気の抜けた返事は...。まぁ西園さんも高校生だ。恋愛だってしたいだろうし、もしバレたら同級生の男と同居してたやつとして認識されてしまい、それどころではなくなってしまうかもしれない。それだけは避けねば...。


「「ごちそうさまでした」」


後片付けは基本俺がやることになっているため、食器を洗う。俺が後片付けをやる、と言ったときは「これはメイドさんの仕事です!私がやります!」と言っていたが、さすがに俺もすべて任せきりじゃ申し訳ないので「俺にやらせてくれないとこの家から追い出します」といったら、悪魔を見るかのような目で見られた。あの時はごめんなさい...。


俺が食器を洗っている間、西園さんは部屋に行ってしまった。女子の準備は時間がかかって大変そうだ。そのまま食器を洗い終えた俺は部屋に行って着替える。制服の袖に腕を通すのも久しぶりだ。この若干窮屈な感じあんま好きじゃないから私服OKにしてくんないかな。


俺は準備が終わったのでリビングに戻ったが、そこにはまだ西園さんの姿はなかった。俺の部屋の隣が西園さんの部屋なので、そのドア越しに西園さんに話しかける。


「西園さーん、僕もう行きますねー」


俺らは同じ家なので、別々の時間に出ることになっている。一緒に登校なんてしたときにはもうお終いだ。


「―――っと待って~」


「え?」


待って、だけ聞こえた気がするが、最初の方があんまよく聞き取れなかったな。そう思っているとドアが急に開く。引き戸だったからよかったものの、片開きのタイプだったら俺は死んでいた。


「一瞬待っててね」


少し慌てたような西園さん。準備の途中だったのか、ワイシャツにスカートという格好だ。しかもワイシャツは第二ボタンくらいまで開いていてとても目のやり場に困る。これは...、刺激が強い...!!!


そのまま俺の横を通って行った西園さんは冷蔵庫から何かを取り出し、小さめの布でできたカバンのようなものに入れている。何してんだろ。そのまま俺のもとにやってきて、それを俺に渡してくる。


「はい、これお弁当。持ってって」


...なんというメイド力ッ!恐れ入りました。マジでうれしいです。家宝にしていいですか。


「マジっすか...!作ってくれたんですか...!」


「そりゃもちろんメイドさんだし?」


この人、メイドさんっぽいことすると分かりやすくテンション上がるな。主人への奉仕精神がすごい。


「マジでありがとうございます」


俺は心を込めて感謝をする。これは西園さんへの感謝だけではない。神への感謝でもある。あぁ神よ。私にもご慈悲を与えて下さったのですね...。


「じゃあ、行ってらっしゃい。また学校でね」


「はい、じゃあ行ってきます」


新婚夫婦かな?





今日は春にしては少し肌寒かった。徒歩での登校なので着いた頃にはちょうどいい暖かさに感じた。


俺の通っている高校では一年から二年に上がるタイミングでクラス替えがある。これは単純なクラス替えではなく、文系と理系を分けるクラス替えだ。春休み明け初日、昇降口に張り紙があって...というわけではなく、すでに春休み前に各々配られたプリントに自分がどのクラスかが書かれていた。なのでクラス替えではしゃいでいる人はもうほとんどいない。ていうか西園さんってどこのクラスなんだろ。春休み中は一年生の延長線で父親である雅也には同じクラスだといってしまった。できれば違うクラスがいいけど...。まぁいいか。だって俺、親友とは同じクラスだってもう分かってるし。


俺は教室へ向かう。ありがたいことにドアは開いており、みんなの注目を集めることはなかった。そのまま自分の席を確認する。まだ親友の姿は見えない。俺は座ってスマホを見ていた。


「あ、さくらちゃん!おはよー!」


朝から元気なこった。......さくら?さくらって確か...。


「おはよ~」


この声。最近はずっと聞いていた、すごく聞きなれた声。俺は思わず声のする方に目を向けてしまう。あぁ、やっぱりだ。そこには今日の朝も見た美しい顔の持ち主、西園桜が立っていた。


......なんで同じクラスなの教えてくれなかったのおおぉぉおぉおおぉぉ!?!?

良かったらブックマークなどお願いします~!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ