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メイドさんな同級生  作者: とう助
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第7話 春休みの終わり

ここで一つ問題が生じた。


今俺がコンビニで買ってきたものを二人で食べているのだが、なんと俺が買い物に行っている間にお風呂を沸かしておいてくれたらしい。すっかり忘れていたため西園さんに感謝をすると「これくらいはメイドとして当然です」と胸を張っていた。...いや、あんたご飯忘れとったやないかい。


まぁそれはどうでもいいことだ。俺が今悩んでること。そう、どっちが先にお風呂に入るか問題。


これはとても慎重に話し合わなければならない。もし俺が先に入れば、俺が入った湯船に西園さんが入ることになる。それはなんというか、申し訳なさがある。きっと西園さんはメイドであるため先に入ることはないだろう。だがもし先に入ると言ったら。それはそれで俺が西園さんの入った後の湯船に入ることになってしまう。そればかりは本当にマズいのではないだろうか...。嫌というわけではなく、よくないのだ。絶対によくない...!


悩みながらも食事を終えた俺は、風呂について話す。


「...西園さん、お風呂どうします?」


「ん?先入っていいよ?」


...やっぱりそうだよなぁぁぁ。どうする?先に入るか?いやでもなぁ...。きっと俺が入った後の湯船に入るの嫌だろうなぁ...。


俺が迷っているのがバレてしまったのか、西園さんは少し不思議そうな顔をしている。


「...どしたの?」


「あーいや、なんていうか...」


「...はっ、もしかして‘俺が入った後の湯船に西園さん入れるの申し訳ないな...’とか思ってたり?」


...やっぱりこの人俺の心読んでない?思ってること完璧に言い当ててんじゃん。ここまでくると怖いけど?全然怖いんだけど??


「よ、よくわかりましたね...。僕の心読んでます?」


心を読んでいるか、なんていうそんなわけもないことを聞いてしまったのは仕方がないことだろう。だって本当に読んでそうなんだもん...。


「いやぁ、だって一之瀬くん、考えてることめっちゃ顔に出てるんだもん。なんとなく分かっちゃう」


そんな顔に出てますかね?俺そんなに分かりやすい?そんなの一回も言われたことないんだけど。だとしてもそこまで分かるもんかねぇ...。


「てか、そんなこと気にしないでよ。これから一緒に住んでくんだから、気にしてたらキリが無くない?」


「ま、まぁその通りかも...」


確かにこれからこんなことも色々あるだろう。例えばそう、洗濯物だって一緒にしないといけないし。...西園さん、「お父さんと洗濯物一緒にしないで!」的なノリで拒否してきたりしないよね...?


「だから先に入ってきなよ~」


「わ、分かりました」


こうして俺の悩んでいたことはあっけなく解決?したのだった。





風呂を上がりリビングへ向かうと、着替えをもってお風呂場に行こうとする西園さんと出会った。思わず着替えの下着が見えてしまいそうで目を逸らす。


「一之瀬くん、もし眠かったら先に寝ちゃっていいからね?私、割と長めだから時間かかるかも」


「あ、はい。分かりました」


そういって去っていく西園さん。先に寝てもいいと言われたが、なんか申し訳ない。せっかくだし待っていようかな。そう思い俺は冷蔵庫から水が入ったペットボトルを取り出す。風呂上がりに飲む水は美味い。そのままリビングのソファに腰を落とす。風呂あがりってこう、無性に眠くなるよな。このままこの柔らかいソファに体を預けていたら寝てしまいそうだ。


眠気を覚ますために机に置いてあったスマホを手に取る。特に通知もなく、ただただ俺の顔を照らしている。そういえばまだログインしていないソシャゲがあったな。デイリーミッションもやってないし、スタミナも消費していない。なんだかんだやっていれば西園さんも上がるだろう。



あれから一時間ほど経った。長いって言ってたけど一時間もかかるなんて...。俺は風呂は嫌いではないが、長時間入っていることが出来ない。なので長時間入れる人は少しすごいと思ってしまう。遅いな、そんなことを思っていると、リビングのドアが開いた。


「...あれ、一之瀬くん。起きてたの?」


「あ、あぁ。まぁなんか先に寝ちゃうのも悪いかなと、思いまして...」


「え~、別に私のことは気にしなくていいんだよ?」


「いや、まぁせっかくの初日だし...?」


初日だからって何だというんだよ。まぁ別に待つことに関しては嫌に思わなかったしいいんだけどさ。


「そう?ならいいんだけどさ~」


そう言いながら西園さんは俺の隣へと座る。...え、隣?まぁ確かにローテーブルの周りにはカーペットが敷いてあるだけで、座るとこと言えばソファしかないのだが...。人一人分は空いているとはいえ、これは近い。チラッと西園さんの方を見ると、風呂上がりで、乾かしたとはいえ多少髪の毛が濡れているような気がする。なんだかいい匂いもするし、非常に色っぽい。正直直視は出来ない。やっぱり素直に寝ておくべきだったのかもしれない...。そんな思いをしているとは思ってもいない西園さんは、テレビを見ながら微笑むかのように上品な笑い方をしていた。





時刻は0時ちょうど。ついに日付を越してしまった。春休みとはいえ、もう数日で学校が始まるので生活リズムは直していかないといけない。ていうか西園さんが寝てないのって俺がまだ起きてるからじゃないか?だとしたらめっちゃ申し訳なくない?そう思い焦った俺は、居づらいソファから立ち上がり、寝ることを提案した。


「そろそろ寝ませんか?」


「そ~だね。もういい時間だから寝よっか」


西園さんの表情から眠いことが分かる。やっぱり俺が寝るまで起きていたんだな...。本当にごめんなさい...。罪悪感を感じながらも俺たちは電気を消し、それぞれの部屋へ向かった。そうして、この濃かったような、濃くなかったような一日が終わった。





翌朝。まだ春休み中ということもあり俺は目覚ましもかけずに寝ていた。目覚ましで起きるより、やっぱり自然に起きた方が気持ちがいいよね。ということで自然に起きた俺は、枕元にあったスマホを手に取る。ただ今の時刻は10時。昨日寝ようと思ってベッドに入ったのだが、風呂上がりの西園さんのことを思い出してしまい、なかなか眠りにつけなかった。とはいえ一時くらいには寝たはずなので、九時間も寝ていたことになる。どうやら自分でも気づかぬ内に疲れていたらしい。


「顔でも洗うかぁ」


ベッドから出た俺は顔を洗うために自分の部屋から出る。俺の部屋はリビングの隣で、ドアを開ければすぐそこがリビングになっている。そしてキッチンもすぐそこなのだが、そこにはすでにメイド服を着た西園さんの姿があった。


「あえっ。西園さん。何してるの...?」


「あ、一之瀬くん。おはよ~。今は朝ごはん作ってるとこだよ~」


気づけばそこには、うちにあるはずもない食材やら調味料やらが並んでいた。どうやら朝俺より早く起きた西園さんが買い物に行ってきてくれたらしい。なんというメイドさんっぷり...。恐れ入りました。


「おはようございます。買い物、行かせてしまいましたかね...。すみません朝早くから...」


もちろん感謝の気持ちもある。だがそれ以上に申し訳ないという気持ちが勝ってしまうのは仕方がないことだろう。メイドさんとはいえ、本来はただの女子高校生だ。


「全然いいよ~。私としてはちゃんとメイドさんっぽく仕事ができて喜んでたとこだよ~。だから謝るんじゃなくて、感謝してほしいな~、なんて」


「もちろん感謝してます!もう本当に頭が上がらないくらいですよ...!」


「どーいたしまして。でもそんな毎回感謝してたらきりがないから、次からはありがと~的な感じでいいからね~。ほらほら、早く顔洗って戻ってきなよ~。もう出来ちゃうよ~」


「あ、はい...!」


顔を洗って戻ってくると、西園さんは料理を運び始めていた。ほぼ運び終わっていたため、俺はそのまま椅子に座る。運ばれてきたのはご飯に味噌汁、焼き魚に卵焼きなど。いかにも朝食という感じのメニューだった。


「うわ、めっちゃ美味そう...」


「ほんと?とりあえず今日はTHE・朝食!みたいなメニューにしてみたよ~」


「まじで美味そうっす...。僕、朝食とか最近まともに食べてなかったから楽しみです」


俺は一人暮らしを始めてからというもの、朝食をまともに食べていない。自分で用意しないといけないとなるとめんどくさくなってしまうのだ。どうしても寝ていたいという考えになってしまう。我ながらダメな人間だよ...。


「えっ、ほんとに?なんで食べないのさ。朝食って大事じゃない?」


メイド服から着替えるために部屋に向かおうとしていた西園さんは、驚いたように足を止め、こちらに振り返った。


「いやまぁ分かってるんですけど、自分で用意するってなるとなかなか...」


「はぁ、ダメだよ一之瀬くん。朝食はちゃんと食べないと。これからは私が毎日作るから、ちゃんと食べてよね?」


「もう」と言いながら部屋へ行く西園さん。返事を聞く前に行ってしまったため、これはほぼ強制なのだろう。まぁ、確かに朝食は大事だし、作ってくれるなら何が何でも食べますけどね。西園さんの料理残すとかありえなくない?


着替えから戻って来た西園さんと朝食を食べる。まずは卵焼き。


「あ、甘い」


「あ、もしかして甘くない方がよかった?」


「いや、僕ん家の卵焼きはずっと甘い方だったから甘い方が好きなんです。だからつい甘いって口に出しちゃいました」


俺は卵焼きは甘い方が好きだ。まぁ特に理由はないんだが、おそらくずっと甘かったからというのがでかいのだろう。...だがしかしこの卵焼き美味いな。一生食べてられるかもしん。


「よかった~。何も聞かずに作っちゃったから、甘いの無理とか言われちゃうかと思ったよ~」


「いやもう最高っすねこの卵焼き。今度作り方教えて下さい」


「ほんと~?卵焼きはつくるの簡単だよ~。でも一之瀬くん作るの?」


俺はつい目を逸らしてしまう。すみません、作るわけがないです。「だと思った~」とか西園さんに言われちゃってますけど、何も返す言葉がありません。


「あ、そうだお米。重くて買えなかったからこれパックのやつなの。今度買ってきてほしいな~?」


「もう、力仕事なら任せてください」


買ってきてほしいな~?なんて言われたら断れるはずがないじゃないか。ずるいぞ、そのお願いの仕方は。そんなこと言われたら岩でも持っちゃいますよ、俺は。


「え~、でも一之瀬くん力なさそ~」


...そういうのって割と傷つくんですよ!?あー、もう買うのやめようかな嘘ですなんでも持ちたい気分です俺は。





それから俺はお米を買ったり、足りない食器を買ったりなど、いろいろしていたら気づけば残り数日の春休みは終わっていた。この春休み、普通じゃ体験できないようなことをたくさん経験した気がする。そして明日から始まる二年生としての学校。そして西園さんとの関係。不安なことはあるけれど、前向きに頑張っていこうと思いながら俺はベッドの中で目を閉じた。

ついに次話から学校が始まります!よかったブックマークなどお願いします!!

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