Ꮚ・ω・Ꮚメー(60:アンモナイオとモササウオ)
群馬ダークとマンドラゴラ、皆頃シスターズの「にゃー」が落ち着いたところで、気を取り直して地上に出ます。
東京大迷宮の門前町、池袋市街は東京大迷宮のアイテムや物資、資源を欲する各地の要塞都市、武装企業の支社や出先機関が立ち並ぶビジネス街であり、東京迷宮の物資を各地に移送するための物流拠点にもなっています。
武装企業のビジネスマンや、武装企業と取り引きをする、または武装企業そのものに所属する冒険者、物資輸送を請け負う武装キャラバンの構成員などが初期の住民でしたが、時と共に飲食業や小売業なども発展し、裏通りには賭博場や売春店などの、東京大迷宮内では御法度の施設が軒を連ねています。
要塞都市に比べると治安は良いほうなのですが、群馬ダークや皆頃シスターズといったスタイルの良い女性が集まっていたせいか、地上で羽目を外す冒険者や飲み歩きのビジネスマン、スカウトを名乗る怪しい男たちなどに声をかけられることになりました。
「やっぱりひとりで来た方がよかったかも知れません」
変装しても目立つような人を三人も連れてきてしまったのは失敗だった気がします。
「まぁ、心配やったし」
「気を付けて行ってきてくださいね」
ゴゲー。
気にしない様子で言った群馬ダークと皆頃シスターズ、マンドラゴラに見送られ、雑居ビルのインターネットカフェに入ります。
バロメッツ達には従魔石の中に入っていてもらう恰好です。
東京入りの前に用意して貰っていたカードを使ってブースに入り、メールを打つと、間もなくブースの扉がノックされました。
「はい」
「ローガイ様からのご用命でVRゴーグルをお持ちしました」
ローガイ、というのは老害、から取ったハンドルネームだそうです。
ネットカフェのスタッフに届けてもらったVRゴーグルをかけてみると、四方を大きな水槽に囲まれた、青い照明に照らされた空間が展開されました。
実物は廃墟しか見たことがありませんが、アンデッド災害前の水族館を模したVR空間です。
水槽の中には名前もわからない大小の魚や鮫、巨大な水棲恐竜や様々な古生物などが泳ぎ回っています。
その水槽のガラスをすり抜け、巨大なアンモナイトと、ワニのような顎を持つ恐竜が私の前にやってきました。
「お久しぶりです」
そう声をあげると、二匹は揃って「オウフ」「オウフ」という不思議な声をあげました。
二匹の巨大生物はいわゆるアバターで、実際にはネットの向こうに生身の人間がいるはずですが、妙に人間離れした音を出すことがあります。
「一ヶ月と少しになるな」
正面に浮いたアンモナイトが言いました。
「首輪のロックが外れたことは把握してたが、どうやら本当に快癒したようだな。奇跡に賭けるくらいの気持ちだったが、驚くほどの強運というほかないな」
「よかったうぉ」
巨大恐竜が独特の語尾で続けます。
アバター名はアンモナイトがそのままアンモナイオ、水棲恐竜がモササウオ、と表示されています。
「ご連絡もせず申し訳ありません」
「気にしないでいいうぉ、できるだけ連絡するなって言ったのはこっちだうぉ」
「そのとおりだな。状況はだいたいわかってる。炎上沙汰に巻き込まれたようだな」
「私だと特定できたんですか?」
私についての情報は遠距離からのぼやけた映像と頭テスタという呼称くらいしか出回っていないと思っていたのですが。
「オレたちの情報網をもってすれば簡単なことだな」
「心配して情報を拾っていたんだうぉ」
モササウオがそう言うと、目の前に大きなウィンドウが表示されました。
「例のバカガミチャンネル関係の情報だうぉ。住所は大宮だうぉ」
「バカガミのパソコンをハッキングしてみたんだが、ややこしい状況になってるみたいだな。これを見てくれ」
水槽の前に新しいウィンドウが浮かんで、しっかりした作りのマンションの一室が映し出されました。
配信用のガワと背景画像ではなく、現実の部屋の様子を直接映しているようですが、爆神暴鬼らしき人影は見当たりません。代わりに武装した男達が家捜しをしている様子が映し出されました。




