Ꮚ・ω・Ꮚメメメー(39:どうなってんの、これ)
突如出現したグレーターグリフォンは、三匹のドラゴンを一方的に蹂躙し、三竜の石迷宮そのものを粉砕し、瓦礫へと変えていく。
「ヤロー、無茶苦茶しやがって。来週の放送どうしてくれんだザケンナコラー!」
東京大迷宮のプロモーション用美少女モンスター、皆頃シエルが叫び声をあげる。
だが、グレーターグリフォンは構うことなく、瓦礫に押しつぶされたイエロードラゴンへと近づいて行く。
「ドラゴンだけはなんとか勘弁してくれねーかな……」
『ダンジョンエクストリーム』にモンスターを出すには相応のコストが必要となる上、今回用意してあるのは撃破時にエピックアイテムが確定ドロップするように調整した特殊個体だ。再生成は不可能ではないが、番組予算はオーバーしてしまうことになる。
単なる雇われ司会者ならば気にすることではないのだが『ダンジョンエクストリーム』は皆頃シスターズが立案し、中心となってプロデュースをしてきた番組である。
「そのドラゴンが直接攻撃をしてしまいましたからね……」
「完全にタゲられちまってるよなー」
呻くような声をあげる皆頃シスターズ。
その目の前に『牛島広報局長』と表示された小さな着信ウィンドウが開いた。
「皆頃シエルです」
「お疲れ様です。牛島です」
理知的なトーンの女性の声が響いた。
「乱入モンスター対応の為の冒険者をそちらに向かわせました。担当冒険者のプライバシー保護のため『ダンジョンエクストリーム』の配信を中断してください」
「はい、わかりました」
不本意ではあるが、自力対応できない以上は指示に従うほかない。
皆頃シスターズは改めてカメラに向き直った。
「東京大迷宮広報局から、乱入モンスター対応の為の冒険者を投入すると連絡が入りました。担当冒険者は『ダンジョンエクストリーム』の出演冒険者ではありませんので、プライバシー保護のため、今回の配信はこれにて終了とさせていただきます。今回の顛末につきましては後日改めて配信枠を取って報告をさせていただきます。皆頃シスターズ、皆頃シエルと」
「皆頃シオンでした」
「「ご視聴ありがとうございました」」
声を揃えてそう告げて、皆頃シスターズは配信を打ち切った。
「……あ゛ー、マジで最悪だー。どうすりゃいいんだよ決勝ー……あ、そうだ。一応カメラは回しといて。あとで編集して使える部分だけ使お」
そんなことをいいながら空を仰いだ皆頃シエルの視界に、小さな点が映った。
高空から急降下してきているらしい。
瞬く間に大きくなっていくその点の正体は。
シャアァァァーーーークゥッ!
面妖な声を上げて空を泳ぐ、体長二十メートルの巨大鮫アークシャークだった。
「サメ? 今度はサメ!? なんでサメ!? なんか今回色々デタラメ過ぎないっ!?」
皆頃シエルの大騒ぎをよそに、アークシャークの接近を察知したグレーターグリフォンは、天を仰ぐように顔を上げると。
グリィィィィィィーッッッッ!
獰猛な咆哮を放って跳躍、強靭な前脚でアークシャークを迎え撃つ。
シャァァクゥゥーーーーーッ!
グリィィィィィーーーーーッ!
超大型モンスター同士の空中衝突。
それを制したのは、上から降ってきたアークシャークだった。
高空にいたアークシャークのほうが持っていた運動エネルギーが大きかったというのもあるが、グレーターグリフォンの前脚がアークシャークには全く通じていない。
シャークッ!
グリィーッ!
グレーターグリフォンの巨体はあっけなく吹き飛び、石迷宮の敷地の外の山肌を転がっていく。
「……どうなってんの、これ」
石迷宮から出て行ってくれたのはいいが、ドラゴンを一撃で戦意喪失させるグレーターグリフォンの攻撃を、アークシャークは意に介していない。
興奮状態で痛みに気付いていない、というくらいならどうにかわかるが、かすり傷も負っていないようだった。
「アークシャークにバフが乗っています。ストレンクス(大)とプロテクション(大)、バイタル回復(大)」
皆頃シオンがそう告げた。
「どういうこと? やばすぎね?」
攻撃力と防御力、持久力が倍増、ダメージを受けても自動回復するという理不尽な状態になっていることになる。
「アークシャークって、そんな能力持ってたっけ」
「外的なバフです。魔法でもテイムでもなくて……食事効果?」
「なに喰ったらそんな食事効果つくんだよ、三蔵法師でも喰った?」
「頭テスタさん、かも知れません」
「なにその頭痛が痛そうな名前」
「群馬ダークのドンレミ農場に出入りしている。テスタロッサのドロップアイテムの紅のベレー帽をかぶった謎の冒険者です。ドンレミ農場が最近扱っている、レアクラスの限定ケーキの生産者ではないかという説があります」
「前にシオンが一人で全部喰ってたアレか。ドンレミ農場って、例の、アークシャークとグレーターグリフォンが出たって場所だっけ?」
「はい、ドンレミ農場を通じて行動範囲が重なっていることになります。頭テスタさんが食事提供をしているなら、あの異常な食事効果にも説明が付きます」
「つくのか? それ」
目を輝かせ、早口に説明する皆頃シオンだが、ぴんと来ない皆頃シエルだった。
メー(それで正解だ)
横合いからそんな声がした。
目をやると、一匹の白いバロメッツが近くに浮いていた。
「トライスター・バロメッツ? どうしてこんなところに?」
野良のバロメッツや、冒険者用の通常ナビゲートモンスターとして生成されるバロメッツではなく、チュートリアル用として一時生成される三体一組のバロメッツの一匹のようだ。
メー(我々はトライスターの中でも特殊な個体でね。パーマネントモンスターとして、さっき言っていた頭テスタ嬢の専属ナビゲートをしている。個体名はホームズ、ワトソン、レストレイドで、私はワトソンだ)
「シャーロック・ホームズ?」
メー(そこから取ったようだな。彼女の冒険者名はソル・ハドソン。今回の騒動を鎮めろという依頼を受けている。あとのことは我々に任せてほしい)




