カヘ の 日常
何にもなりたくないときって、あるよね
隣にいたオウォが、静かにつぶやいた。
誰に宛てた言葉ではないような、溢れこぼれ落ちて木のテーブルに吸収されるような発語。
真っ白なレースカーテンが、銀の窓に覆いかぶさっていた。
オウォは、カフェの席にいて、まるで、レースカーテンを何重にも隔てた個室にいるようだった。
ぼくには、オウォがよく見えない。白くモヤがかっている。
「わかるよ。僕はね、存在そのものを必要としないから」
「そういうときは、存在がいらない。って思うよ」
それでもオウォは、存在し続けるのだろうか。
何かに、なり続けるのだろうか
美しい木目のテーブル。ニスで磨かれており……
その上には小さな葉っぱと紅い実がこぢんまりと飾られている。
外で子供が騒いだ。