Epilogue 再出発
メカヴォズィガを失ったガジャゴの目論みは崩れ去った。
空を覆っていたシャッガイ領域も、メカヴォズィガ倒壊と共に消え、私の眼にも空には平和が戻った。
島から帰って来た私を、博士はTALARIAを無茶に使ったことを咎めることもなく、ホッと一息ついて迎えてくれた。
「心臓に悪い。二度とするな」
「TALARIAないからもう無理です」
TALARIAだけじゃない。怪獣災害の遺産は、もう消え去った。
メカヴォズィガを壊してもガジャゴがなくなったわけではない。メカヴォズィガを倒してからも、ガジャゴの兵隊を相手にする覚悟もしていたが、マッヨォロガはメカヴォズィガを失ったことで放心し、私はガジャゴ兵とは交戦することなく、島を後にすることが出来た。
「君はこれからどうする?」
「空も元に戻りましたし、正直教員実習くらいはちゃんと終わらせたいですね」
まだ実習期間は残っている。
怪獣を利用しようとしていた輩を倒すことも大事だが、それよりもやはり大事なのは、この世界で、怪獣災害なんて関係なく過ごすことだ。
それが先輩が守ってくれたこの世界に対する、最大限の礼儀だから。
「流石に教員免許は取らないと、先輩に対して嘘です」
「そうだな。そうしろ。色々面倒なこともあるだろうから手は貸してもらうが……と言うか君がぼくを巻き込んだんだからな」
「わかってますよ」
とは言えTALARIAを横領していたのは博士だし、その辺りは言い訳も効かないんじゃないだろうか。それを使った私もそうだが。
私はポケットの中から、ぬいぐるみキーホルダーを取り出した。
あの混乱の中でも、肌身離さず身につけていたキーホルダーは、ただでさえ経年劣化でボロボロだったのに、擦り切れてもう元がウサギだったのかどうかすらよくわからなくなっている。
それでも私はキーホルダーを握り締めると、ポケットの中に仕舞い直した。
「先輩。何があっても先輩が守ったこの世界、守り抜きますから」
怪獣災害なんて、二度と起こさせない。
また同じようなことが起こったって、何度だって。
「博士。博士の話だと、怪獣の死体って、まだ残ってるんですかね」
「おそらくな」
「じゃあまた同じようなことが起こる可能性はゼロじゃないですよね」
「流石に今回のアレはイレギュラーだが、そうだな」
例えば先輩を好き勝手断罪した、あの司祭ゼフィレッリィが今どうしているか等を私は知らない。
全く。やることが増えて敵わない。でも、そういう風に、やって来る困難を次々に薙ぎ倒していかなくちゃいけないのも、人生というモノかもしれない。
「その時はまたよろしくお願いします、博士」
「ああ。ぼくも彼女の救った世界を、好きにさせたくない」
とりあえず今日は休もう。まだ休暇は残っている。やらなくちゃいけないことは山積みでも、休む自由くらい、あって良いんだから。
駅のロッカーに仕舞っていた携帯電話を取り出して、私は電話を掛けた。
「あ、先生。体調なんとかなりました。明日大丈夫なら、飲み行かせてください」




