灰をかき集める少年
少年は灰をかき集めていた。
何年 何年経っても
心にぽっかり空いた穴が塞がらないので、
心の燃え尽きたカスを かき集めていた。
たくさん、たくさん
両手いっぱいにかき集めても 塞がらない。
穴に入れても こぼれてく。
穴の空いたポケットみたいなそれは
まったく何も貯めてはくれなかった。
前は たくさんの感情を持っていた。
泣いたり、笑ったり、
怒ったり、悲しんだり していた。
今は何もない。
少年には、何もない。
こぼれちゃったのだ。
ある日ぽっかり空いた穴を
埋めるためだけに 長年もがき苦しみ続けた。
しかし意味はなかった。
少年が焦れば焦るほど
また、どんなに落ち着いていても
何の意味もなく 心はどんどん こぼれてく。
昔どうやって絵を描いていたかも思い出せない。
心がすっかり凍ってしまっているのだ。
自分の 一番大事なところが 心臓が死んで
どうやって生きていけばいいのだ。
誰にもわからない。
その状態で長年生きているから
心はとっくにゾンビなのに
体は生きているから
とりあえず普通の人間に見えているのだろう。
この心の穴 誰かに見えたら良いのにと思う。
毎日毎日 この穴から
げっそげそに 血が大量に湧き出ているのに
止められない。
せめて こぼれ落ちた 灰
必死にかき集めて 穴に戻してみるしかなかった。
どんなに戻しても また こぼれ落ちてしまうけど。
どんなに 埋めようとしても 埋まらない穴
胸の痛みに そっと手を当てるけど
痛みは止まらなくて 血は溢れてきて
どんな石より かたく動かない心
どんな氷より 冷たく動かない心
止まっている心臓 心の死んだ日々
今日も少年は 皆が空を見てる 足元の地面で
こぼれ落ちた灰 かき集めている。
心を求めて。
心を求めて。