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世界と超人4:ニヒリズム

「さあ、神様なんてのは居らっしゃると仮定した上での話がほとんどだから、証明なんて出来るかどうか、わかんない」

「そうだね、神が居ると盲目的に仮定して論ずる事がほとんど」

「それだけ居ると仮定されてるなら、本当に居ると信用に足るんじゃないの?」

「それは違う。討論することが哲学なのだから、盲目的な信用は出来ないんだよ」

「あれ、貴方にとっての生き方とか言いつつ。いきなり討論するなんて別条件が入ってる」

あはは〜。何て誤魔化すような笑いを見せながら。

「えっとね。『貴方にとっての生き方』は哲学の究極的な目的なの。その方法として明確化や疑念すること。これが哲学のプロセス。あくまで生き方ってのは目的だから、それにたどり着く手段が必要でしょ?」

つまり、哲学とは『自分の生き方を見つけるためにあらゆる事を考える』学問ってこと。

何をやっているのか理解するのがこんなにも難しい学問も珍しいよね。

「わかった?それで、神は今此処にいるなんて証明出来ないし、居るとしても因果律の関係を見てもアクセス出来ない」

「因果律?」

「原因と結果は必ず関係する法則のことで、例をあげると『トマトを地面に叩きつける人間がいる。トマトが勿体無いなどの理由で人間がトマトを叩きつけるのを止める事があったとしても、トマト自身が何かの意志で人間を止めることは出来ない』。上にいるモノが下には何か出来ても、下にいるモノが上には何も出来ないってこと」

まぁ、ニヒリズムとはちょっと違うんだけどね。と付け加えながら、お姉さんは一息ついた。

結構分かり易く伝えて貰っているけど、やっぱり疲れる。

ぼくも少し喉が乾いたので珈琲を一口啜った。

「ちょっと、なにこれ。甘いんだけど」

これは多分練乳が入ってる、いわゆるベトナムコーヒーって奴だとおもう。

うわぁ、冷めてるから余計に口の中ベタベタして気持ち悪いんだけど。

いや、ベトナムコーヒー自体は好きだし、飲みたい時もあるんだけど。

でも、今のこのときにはアメリカンコーヒーだろ普通。

そんな顔をしかめて珈琲を啜っていると

「どうだ、ガムシロップ6個程入れたから甘いだろう」

なんて笑いかけてきやがる。

ちょっと待て、ベトナムコーヒーですらないとかどういう事だ。

しかもこの一片の邪気も無い、晴れ晴れしい笑顔。

あり得ないほどの善意でガムシロップをぶち込んだみたいだし。

なんだか怒るに怒れない。

ガムシロップをぶち込むとか、マジで俺とペリゴールに謝れ、この女。

……ぼくもそんなに珈琲にはこだわらないけど、香り消えてる。

味音痴過ぎるだろ。

「さて、さっきの話に戻るとするよ」

お姉さんのおいた紙コップの波紋がドロリと動いた。

もしかして、もしかすると。

そのココアにも同じぐらいガムシロップを入れてるのだろうか?

何て言う甘党。人の偏食って怖いね本当。

「ねぇ、ちゃんと聞いてる?」

「はい、聞いてます」

すみません、聞いてませんでした。

そんなぼくの様子にちょっと呆れながらも説明を続けるお姉さん。

「つまりね、どんなに上位の神なんてモノがいたとして、真理なんて諭しても、ボク達は理解できないってこと。だからね。」

そこで一瞬、間を置いた。


「ボク達の人生には何の価値もないんだよ」


だから虚無主義ニヒリズム

「人間が言う倫理は、見方や思い方、立場の違い等で変わってしまうモノでしょ。だから、本当に正しいとか。本当の価値とかは全く持って有り得ない」

それは、確かにそうだ。

「自分の価値と言うモノは、他の人が自分を見たときに決定されるモノ。だから、今までの歴史上全人類共通の価値感覚基準なんて存在しないでしょ?」

そうだね。お金でさえ今この瞬間も価値が変動している。

つまり、変動することのない絶対的な基準が存在しないのだから、真実の価値というのも存在しないってことか。

「でもね、価値は無くても、この一瞬一瞬を生きている事の意味を持つ事は出来るとボクは思うよ」

「何で?意味と価値は似たようなモノじゃないの?」


「だって、意味は自分で与えるモノなんだから」

虚無主義ニヒリズム (Nihilism)

フリードリヒ・ニーチェの唱えた立場。

人類の人生は特に過去と現在において一切の意義、目的、価値や理解できる真理を持たない。

俺の人生に価値なんぞ無いと言い切ったニーチェって凄いと思いませんか?

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