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世界と超人3:ツァラトゥストラはかく語りき

「ぼくにとっての神様?」

「そう、あなたにとっての神様。今の日本においての神様、なんてお祭り以外じゃほとんど関係ないでしょ。だから、まず自分の哲学において、最初に自分はどう思って居るかの立場をハッキリさせることが大事だとボクは考えているの」

「・・・・・・そもそも哲学って何なのさ?」

何時の間にか周りにいた患者さん達も居なくなり、時計が針を刻む音だけが響く。

外は未だ雨が止まず、まだ夜にもなって無いが患者さんも好んで来たくはない天気。

まぁ、好んで病院に来たい患者さんなんて居ないだろうけど。

こんな場所で愛を語らずに哲学を語るなんて、知性の夜明け前に相応しいんだろうな。

むしろホラーで有りそうな状況、なんて漠然とそんな事を考えてるとお姉さんが。

「そうね、まず哲学とは何かから説明しましょう」

そう言ってお姉さんは窓の外の葉桜に視線を向けた。

「難しく言うなら、あらゆる目的や意図、前提条件から問題点の明確化、概念の厳密化、命題らに関する関係間の位置付けを通して、主題となる物を論じ研究する学問ね。基本的に何でも討論すれば哲学なわけじゃなく、思考や神などの目にしたり数字に出来ない物を論ずる事が哲学みたい」

いや、何その堅すぎる羅列。催眠術の類なんじゃないの?

「解らないって顔してるね。じゃあ、哲学の究極的な意味で教えよう」

クスッと微笑むと、先ほどまで窓の外の葉桜を見ていた顔をぼくに真っ直ぐ向けた。

「貴方にとっての貴方の生き方、それが貴方の哲学」

なるほど、確かにそれは解りやすい。

「だから、あなたにとっての神様とは何かを聞いたの。日本以外において、神様は必ずその生き方に影響を与える要因の一つ。神様を軽んじている者にマトモな自分の哲学を持つひとはいない。でも、この日本においては神様なんて偶像の産物以外に意味を持たない人が多すぎるでしょ?だからね、まずは神様という便利な哲学の立ち位置を測れる測定方法を君にきいたの」

「成る程。でも、神様って言われてもなぁ」

「いきなりじゃ、答えられない?じゃあ、私の考えから言いましょうか」

お姉さんが不敵に頬を歪める。一瞬、世界が止まった気がした。


「神なんて死んだのよ」


まるで合わせたように皮肉気に笑っている頬が光に照らされて、顔半分に影をつくる。

遠雷がそれに遅れて鳴り響いた。

ふと気がつけば退室時間も近づいている。

周りには看護士さんすら見かけないなんて、なかなかホラーじゃないか。

そんな中で、お姉さんは一人喋り続ける。

「もちろん、この日本において神は本質的に人を支える物ではないのも死んだといえる要因の一つ。でも、ボクとしてはニヒリズムを傾倒しているから」

「ニヒリズム?」

「そう、ニヒリズム」

お姉さんは冷めたココアを思い出したかのように、一口啜る。


「君は、神様って奴を存在すると証明できるかい?」

ツァラトゥストラはかく語りき(Also sprach Zarathustra)

1885年に出版されたフリードリヒ・ニーチェの書籍。

「神は死んだ」の始まりから入るとても攻撃的な哲学書。

以降の書籍は遺稿になるので、純粋なニーチェ思想の最後のテキストとも考えられる。

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