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75*穏やかな日々

ありがとうございます、最終話です。

 帝国から帰って来てから一週間が過ぎた。バージルは滞っていた政務等に忙しく自室に戻って来るのは深夜を過ぎる日々が続いています。


 アンナの方はというとお茶会に顔を出したりしながら帝国での話を何処へ行っても聞かれるので少しうんざりもしていたのでした。


 あそこを見に行こうかしら。

 アンナには今楽しみにしている事があるのです。

「ビオラ、ベイベリー邸へ行きましょう」

「マリーのところにも寄る?」

 マリーは早朝に神殿に赴き祈りを捧げてちょうど帰って来たころだと思われる。

「そうね、お顔を見てきましょう」

「了解、直ぐに伝えて貰うわ」

 部屋で二人きりの時はいつもの口調になるビオラ。でも一度部屋から出れば立派なスーパー侍女となる。

 そういえば初めて妖精の姿から人型に変わってお父様の部屋で会った時はスーパーメイドと紹介されたんだったわ。

 当時を思い出し思わず笑ってしまう。

「アンナ様、廊下でそんな笑い方をされては淑女としてお恥ずかしいのでおやめ下さい」

 そう言われ私はビオラの変貌ぶりに不覚にもまた笑ってしまうのでした。


 マリーの住む離宮の手前にバージルとデートを重ねたバラの庭園があります。アンナはそこを抜ぬけ近道をしていく。彼女の後ろには勿論ビオラの他に護衛が二人付いています。

 マリーの住む離宮はまたの名を「ミモザの館」と呼ばれ春には周りに植えられたミモザが一斉に黄色い房を付ける。

 そしてアンナの目的の場所はミモザの館から少し離れたところにありました。


 ここベイベリー邸はバージルとアンナの住まいにとして建設中の場所です。

 アンナの希望でバラの庭園と果実園の両方が望めるようになっていて子供が出来たらここで遊ばせたいと思っているのです。

 まだ整地と基礎の段階ですが魔法も駆使されるので来年の今頃には完成する予定になっている。

 時間が出来るとアンナはまだ柱も建っていないここへ足を運び設計図を見ながら夢を膨らませているのでした。

 因みにまだ形にもなってないと云うのにベイベリー邸と呼ばれるのには訳があります。

 旅の途中でヤマモモ酒を飲んだバージルが大そう気に入り王宮の果樹園に植えようと苗を購入したのです。

 自分たちより二日遅れで届けられたヤマモモの苗十本。

 運んで来た庭師にヤマモモの花言葉を聞いたバージルは建設中の邸にも植えるように指示しました。

 アンナは前世の二ホンではヤマモモが街路樹で良く植えられていて赤い実が落ちるとアスファルトを汚している印象が強かった為に果樹園だけで良いのではないかとバージルに意見していたのですが彼は一歩も譲らなかったのでしだ。

 そんなにヤマモモ酒が気に入ったのかしら?

 首を傾げるアンナに受け渡しの時の時にバージルと一緒に庭師の話の話を聞いていたダニエルが耳打ちします。


「お嬢、Bayberry・ヤマモモの花言葉は【()()()()()()()】だそうですよ。あいつの愛は重いですよ」

 と笑った。

 それを聞いて耳まで真っ赤になるアンナ。

 バージルは『唯一の君』であるアンナをただ一人愛し側室は持たないと知らしめる為にも二人の愛の巣にベイベリーを植えたかったのでした。

 彼のそこまでの意図は分かっていないアンナは基礎で区切られた部屋割りのある一角を見ながらにんまりと微笑みます。


「自分の厨房が出来るなんて夢みたい」

 バージルが子育ては自分たちでと言ってくれた事が嬉しかった。

 時間がある限り料理も自分でしていいと言ってくれた。

 王子妃の仕事も忙しいのでもちろん子育てには乳母も必要だし、メイドも料理人だって必要だ。それでも家族の事は出来る限る限り自分でしたい。それを許しくれた両陛下にも心底感謝しているのでした。


 一通り見て次はマリーの元へ向かいます。

「お姉さまお待ちしておりました」

 侍女からアンナが訪問する事を聞いたマリーはミモザの館の玄関先で頬を紅潮させ出迎えてくれいます。

「マリー様お久しぶりです」

 帝国から戻ってたった一週間ちょっとだというのにマリーはその時よりお姉さんらしく見えた。

 もうすぐ十歳になる少女は聖女としての自覚も出て来て著しく成長したと思える。


「お姉さま昼食はこれからでしょう?ご一緒にガゼボで頂きましょう」

 マリーがアンナの手を取り強請るように大きく揺らしてきて来ます。

 こう云うところはまだまだ子供らしくて思わず笑みが零れてしまいます。


 ガゼボでランチをしながらマリーの話を聞く。

「マリー様、訓練の方はどうですか?」

「はい、積み木は完璧です!」

 帝国で提案した回復魔法の訓練をちゃんと続けていると分かり私も嬉しく思う。

「次は何をしたらしいでしょう?」

「そうですね・・・」


 うーん、何をどう教えたらいいんだろう?

 今平和だしね。魔物も出て来てないから討伐も必要ないし、困ったな(汗)

 思わずビオラの顔を見てしまう。

 ビオラは知りませんよーと言う風に目を逸らせました。


《なんで、目を逸らすのよ》

《アンナが言い始めたんだから責任持ってよ》


 う~ん。確かにそうだ。私はしばし考えて閃きました。

「マリー様、魔力も少しずつ増えてきているようですからちゃんとした先生について勉強をしてみてはいかがですか?」

 私の提案にマリーの目が輝きます。

「魔術大会で見たみたいのがマリーでも出来るようになるんですか?」

「それは魔力量にもよるけど練習すれば出来るようになりますよ。バージル様に頼んで先生を付けて貰えるようにお願いしてみましょう」

「ありがりがとうございます♪」

 好奇心が旺盛になっている時に学べば吸収も良い筈だわ。

 アンナはマリーがい日でも早く自分を必要としない立派な聖女になってくれることを願っていたのでした。


 マリーとのランチを済ませ自室に戻ってくると部屋にはまったりと紅茶を飲むバージルの姿があり驚きます。


「どうしたの?」


 ほらおいでと両手を広げる彼の元へ行きいつものように膝の上に座ります。

 それを見計らったようにビオラとダニエルを含めメイドたちが退室していきました。

「帝国から戻って一週間、寝ずに働いたからな。今日の午後と明日は休みが貰えた」

 バージルは甘えるようにアンナの胸に頭を摺り寄せてきます。

「うふふ、ワンコみたいよバージル。でも良かったですね。やはり一週間に一度はお休みを取らないと体が持たないもの」

「疲れれば疲れる程体の方は元気になるのだが・・・」

 首筋や耳朶に口づけしながら片方の手でドレスの上から胸をまさぐりそのままソファに押し倒れされました。

「バージル、まだ明るい時間・・・誰かきたら」

「明日の夜まで食事も含めこちらから呼ばなければ誰もここへは来ないように言ってある」

「そんなー」

「アンナ不足を埋めさせてくれ」

 彼はそう言い深い口づけをしてきました。


 暫く何度も角度を変えて口づけを交わした後アンナの首筋に顔を埋めたバージル。



「バージル?」

「・・・・・・・・・・・」

「あれ?」



 自分の後れ毛がそわそわと彼の息で動きこそばゆい。


「もしかして寝てます?」


 返事は帰って来ません。

 ほとんど寝ずに働いていたので急に眠気に襲われたようです。

 動こうにも彼に抱えられるようにのしかかられているので身動きが取れません。


《ビオラ、ちょっと来て》


 念話で呼ばれ入って来たビオラはソファに倒れ込んでいる二人の姿を見て声を殺して笑っています。


「笑ってないでひざ掛けで良いから掛けて頂戴。このまま少し寝かせておくわ」

「せっかくの時間なのにバージルもお疲れなのね」

 彼女は笑いながら二人の上に薄手のブランケットを丁寧に掛けてくれました。

「ありがとう、私も少し寝るわね」

「うん、仲良く寝てていいわよ。どうせ今日と明日はバージルの手回しでアンナの予定は何も入れてないから。夕食を食べたくなったら言ってちょうだい。

 それじゃおやすみ~」

 ビオラが静かにドアを閉めて出て行くと「うーん」とバージルが寝ぼけた様に唸ります。



「久しぶりに一緒にお昼寝しましょうね」


 こんな穏やかな日々がずっと続きます様に。

 バージルの頭を優しく撫でながら静かに瞳を閉じるアンナでした。


 あのチャライ神様がアンナの元を訪れるのはそう遠くないのかも知れませんね。




 END





 20万字を超えるお話になってしまいましたが拙い文を長い間お付き合いくださりありがとうございました。


 お気に入り登録そして最後まで読んで下さった皆様に感謝いたします。

 番外編も数話追加する予定ですので引き続きよろしくお願いいたします。


 

 遥。


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