67*さよならドルチェ帝国
魔術大会の後一週間の間ドルチェ帝国はお祭りモードに包まれていた。
皇妃の病からの復帰が城下に広まり皇妃の好きなチューリップの花があちらこちらに飾られ喜びを表していた。
もちろん隣国の聖女及び王子妃と術師の魔術対決や召喚獣の凄まじい戦いの様子なども口から口へと伝えられ我が帝国の救世主と称えられたのでした。
「今回アデライト王国には本当に世話になった。あらためて礼を言わせて頂く」
皇帝サミュエル・キャメロンは帰国前夜に開かれた晩餐を兼ねたパーティーで皇妃と共に感謝の意を述べた。
「聖女マリー殿、両皇太子殿下そしてジュリアンナ妃殿下、我がドルチェ帝国は私が皇帝である限りアデライト王国とは友好関係を保ち貴国が有事の際には直ぐに駆けつけ貴国に為に尽くすことをここに約束させて頂く」
「ありがとうございます。皇帝陛下」
ドルチェ皇帝サミュエルから手を差し出されアデライト第一王子デオドールと固く握手を交わす。
皇妃と帝国を救ってくれたアデライトの国賓に大きな拍手が鳴り響きます。
「マリー様、癒しの力を頂き本当にありがとうございました」
ナリスティア皇妃がマリーの両手を取り瞳を潤ませます。
「皇妃さまがお元気になられてマリーも嬉しいです。これからもっとお勉強をして沢山の人を救えるように頑張ります」
「マリー様なら必ず立派な聖女様になれると信じております」
ナリスは親愛の気持ちを込めてマリーの頬にキスをし優しく抱きしめるのでした。
《マリー様良いお顔をしているわ》
まだ十七才にもならないと云うのにアンナが我が子を見る様な優しい目でマリーの姿を見守っていると突然肩に手を置かれ驚き振り向きます。
「それにしてもアンナちゃんの勇者姿は可愛かったね。それにあれ程魔力が強いとは我も驚いたよ」
デオドールに褒められ照れ笑いをして誤魔化すアンナです。
「私もまさかこんな可愛らしいジュリアンナ妃が?と肝を抜かれてしまったぞ」
サミュエルも今でも信じられないというジェスチャーをして頬を染めるアンナを称えます。
「あは、ちょっとやり過ぎちゃいましたね」
妃殿下らしくない口調でポロって言ってしまった後にしまったばかりに扇で顔を隠します。
「頼むからもうあの格好は皆の前ではやめてくれ」
バージルがあの姿を思い出しお願いだからとアンナの肩を抱き頭を寄せます。
「マリーはお姉さまのあのお洋服好きです!お揃いで着たいです」
「おっ、いいね。マリーもきっと似合うと思うぞ」
デオドールの言葉に喜ぶマリーにバージルは「はぁ」溜息を吐きアンナの事を困った顔で見て来たのでアンナは肩を竦めちょろっと小さく舌を出して目を泳がせるのでした。
二週間ほど過ごした部屋は殆どの荷物が馬車に積まれ身の回りの物だけとなり何となく寂しさを感じます。
「明日はもうドルチェとお別れですね」
「ああ、そうだな。目的であったナリス殿を救うことが出来て本当に良かった」
「ええ、帝国との友好の絆も固まり外交としてのデオドール様の使命も果たされました」
「ああ、父上もさぞかし喜ばれる事だろう」
ソファに二人で寄り添いながら語らうアンナとバージル。
「国に帰ったら山ほどの仕事が待っていると思うと憂鬱だな」
「あっ、でもほら。その前にフォルヴァにお願いされている件があるでしょう?」
「そういえば、あったな」
「二百年以上も前の結界なんて信じられないわ」
「私もだよ。それだけ大聖女ジュリアーナの力は凄かったと云う事だな。アンナにもその力がある訳だが・・・この小さなカラダの何処にそんな力を持っているんだ?」
そう言いながら立ち上るとアンナをお姫抱っこして
こんな小さくて軽いのにと笑います。
「もうっ、魔力や聖女の力に重さは関係ないから!」
口を尖らせ文句を言えば嬉しそうに微笑み口づけてアンナを抱えたままソファに座り直します。
「私は本当に凄い娘を妻にしてしまったんだな」
と、アンナを抱き締めるのでした。
暫くすると思い出したように「そうだ」と
「そういえば私たちが国を出て直ぐに私とアンナが住む館の設計に入ったらしいぞ」
「えっ、本当ですか♪」
「ああ、君の希望はちゃんと書類にして設計士に渡してあるからね」
「ありがとうございます」
アンナはバージルの首にしがみつく様にして頭を彼の肩に寄せました。
私とバージル様だけのお城だわ。
調理場や子育ての為のキッズルーム、お風呂も家族で入れるくらい大きいのにといろいろ注文を出して置いた。
それが現実に一歩近づいたことを知りアンナは嬉しくて堪らなかったのでした。
◆◆◆
翌日の昼前に一行はドルチェ帝国を出立した。
サミュエル皇帝からは皇妃ナリスが体力をつけたら必ずアデライト王国に揃って伺いたいとの国王への手紙も受け取りました。
帝国から数々の礼の品や土産で往路よりも馬車が増え八台の馬車は大勢の人々に見送られながらドルチェ帝国を後にしたのでした。




