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59*休日ランチは懐かしい味で

「ちょっとーいつまで寝てるのよ。二人とも起きなさいって!」


 何故かいきなりビオラに上掛けを引っぺがされてます。

 横で寝ているバージルも何事かとカラダを起こしました。


「何なのよービオラ!」

 私は寝着を着ているがバージルは上半身裸だ。

「もうすぐ昼よ、いつまでイチャコラ寝てるのよ!」

「今日はゆっくり休むと昨日決めただろう?」

 バージルが後ろから私を抱き抱えるようにして邪魔するなと言わんばかりにビオラを睨みながら言い返します。

「ランチは港町へ下りて食べようって言ったじゃない」

「そんな約束した覚えはないぞ。アンナがしたのか?」

「えっ?」

 そう言われみれば・・・

「なんか寝る前に念話でそんな話をしたような・・・気がします」

「そうよ、アンナと約束したんだから」

 ビオラはプンプン怒っています。

「ダニエルが良いお店見つけてくれたんだから。さっさとお風呂に入って準備しなさいよ」

 そう言い放つとビオラは怒りながら部屋を出て行きました。


 私とバージルはベッドの上で呆然としていました。


「そういう事みたいなのでお風呂に入って着替えましょう」

「久しぶりにアンナとベッドの中で一日過ごそうと思ったのに」

 私はバージルの頭をヨシヨシと撫でてあげます。


「しかし、どうなんだ?夫婦の寝室にノックも無しにあの勢いで入って来るビオラは・・・」

「精霊ですからね」

「精霊なら許されるのか?」

 何となくおかしくなって笑ってしまいます。

「とにかく起きましょう」

 ぐずるバージルを宥めながら浴室へと向かい出掛ける準備を始めました。

 バージルは国に帰ったら寝室には結界が必要かとブツブツ独り言を言いながら仕方なく着替えを済ませたのでした。


「まったくもう、遅いわね」

 馬車の前で待っていたダニエルと仁王立ちするビオラ。

「バージル悪いな。寝かせといてやれって俺は言ったんだぜ。でもビオラがどうしても聞かなくてな」

 ダニエルはそう言いながらポリポリと頭を掻いて申し訳なさそうにしています。

「だってずるいじゃない。バージルばかりアンナを独り占めして。こっちに来てから昼はマリー夜は解術一緒だけどその時以外アタシはアンナと一緒にいれなかったのよ」

「なんだ、ビオラはヤキモチを妬いていたのか」

 バージルは口元に手を当ててくすくすと笑います。

「なっ、何よ!アンタの奥さんになる前からアンナはアタシの愛し子なんだからね」

「まっ、正論ではあるな」

 妙に納得するバージル。

「お嬢はモテモテだからな」


・・・もう勝手にして

 と思いながらふとある事を思い出した。

「マリーはどうしたの?」

 外へ行くと聞いたら絶対にマリーも行きますって言う筈だよね。


「一応声を掛けたわよ。だけどデオドールと残るっていうから」

「あら、そうなんだ」

「誰もいないところで兄上を独占したいんだろう」

「デオドール殿も大変だな」

 四人はマリーの相手に翻弄されるデオドールの姿を想像して溜息を吐いたのでした。


 港町を散策し目的の店に着きました。


「前にお嬢が使ったコメを使った料理が食べられる店なんだ」

「えっ、ほんとですか?ダニエルさん」

「ああ、ドルチェに来てからあちこち食べ歩いて見つけた店だよ。どうしてもお嬢に食べて欲しくってさ」

 ドヤ顔もダニエルです。

「ありがとうございます♪」

「なんだ、ダニエルは俺たちが働いている間食べ歩きをしてたのか」

 バージルが不満そうに言います。

「仕方ないだろう。俺の出番は全然ないんだから」

「そうよね、だからアタシとダニエルで二人の代わりに異国を楽しんでいたのよ」

「なによ、ビオラなんだかんだ言って楽しんでいるんじゃない」

「えへへ」

 ビオラが照れ笑いをしていると


「おまちどう」

 ドン!とテーブルの上に直径五十センチはあると思われる鉄の鍋がが置かれた。

「漁師の炊込み飯だよ」

 真っ黒に日焼けした逞しい親父さんがどうだと言わんばかりの顔をして腕組みをしています。

「すごーい、これ何人前?」

 ビオラが目を見開いて目の前の鍋を見ていると

「俺ら漁師たちなら二人前ってところだ。あんたらなら四人で丁度良いだろうよ」

「さすが漁師料理豪快だな」

 バージルも初めての料理に目を輝かせています。

「だろう、昨日食べている奴を見てみんなに教えてやろうと思って予約しておいたんだぞ」

 ダニエルが自慢げに胸を張ります。


 アンナは見た事のある料理に唾をごくんと飲み込みました。

 薄い鉄なべに魚介類と野菜がの乗った黄色いご飯。


「パエリア!」


「お嬢ちゃんの国にもあるのか?」

 漁師の親父さんがアンナに聞いてきました。

「ええ、前にいた国ではこれと似た料理があってパエリアっていう名前でした」

「へぇ~パエリアか」

「はい、パエリアって「金属製の鍋」とか「浅い」とか「蓋が無い」なんて意味があるらしくてそういう鍋で炊き込んだご飯をパエリアって呼ぶと聞きました」

「成る程。よし、今日からこいつは『漁師のパエリア』って名前にするぞ」

「えー、そんな簡単に決めていいの?」

「ああ」

 ビオラが呆れて言うのも親父さんはニコニコしながら言い切りました。

「さぁ笑ってないで食え」

「はーい、頂きます」

「うまっ!」

 四人の笑顔に親父さんは満足そうです。


 食べながらアンナは質問します。

「この鍋って売っているんですか?」

「ああ、その辺の雑貨屋で売ってるよ。漁師はみんな家でも作るからな」

「あと、この黄色いのはサフランで色付けしているんですよね?サフランとお米・・・いえ、ライスもこの地方は手に入り易いんですか?」

 アンナの質問に親父さんは感心するように

「お嬢ちゃん詳しいんだな。サフランもライスも隣のマーカス領で栽培してるんだ」

「そうなんですね。私のいたところではサフランて高級なのよね」

「ここらじゃ普通に売ってるぞ」


「ホントですか!バージル、鍋とライスとサフラン買って帰りましょう!」

 アンナはバージルの袖を引っ張りながら興奮しています。

「あっ、ああ分かった。好きなだけ買って帰ると良い」

 普段何も欲しがらないアンナがこんなに興奮しながら強請る姿に驚きながらもバージルは嬉しく思うのでした。

「やった!アデライトでもこのパエリアが食べらるのね♪」

「お嬢が作ってくれるのか楽しみだな」


 ビオラもここへ連れて来たダニエルも嬉しそうです。

 帰る途中おじさんがメモしてくれたお店でパエリア鍋大中小を各二個、計六個、サフラン、コメを買い王城に戻るとデオドールとサミュエルが何事かと驚いたのは言うまでもありません。




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