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44*誕生日で成人になりました。

 バージルと出会ったデビュタントから約一年、アンナの誕生日と成人を祝う為にオレガノ邸では朝から使用人たちがせわしなく動き回っています。


「アンナちゃん、おめでとう。成人に相応しいドレスだわ」

 母マリアンヌは末娘のドレス姿に目を潤ませていました。

「でも来年早々お嫁に行っちゃうのよね」

 姉マリエッタも可愛いい妹の晴れ姿とあっという間にこの家を出て行ってしまう寂しさでハンカチを目頭に充てていました。

「母さま、姉さま」

 アンナも思わず貰い泣きしてしまいそうになるとマリアンヌがあーダメダメせっかくのお化粧が崩れちゃうわと笑顔でおしろいを直してくれました。

「私とマリエッタは先に広間に行っているわね。殿下がいらしたらエスコートして頂いて来るのよ」

「はい、分かりました」

 母と姉が部屋を出て行くとビオラもバージルが来たら案内してくるからと扉を閉めました。


 ひとりになった部屋で鏡に映る自分の姿を見ながらアンナは前世の事を思い出していました。

 成人式の時にはもう死んでしまっていて式に出る事は出来なかったけど、前撮りで写真は撮ったんだよね。

 あの写真を見て父さんも母さんも涙ぐんでいたっけ。弟は姉ちゃん馬子にも衣裳ってこの事をと云うんだろうなんて馬鹿にしてたけど。

 あんなに早く逝ってしまった娘をあの後家族はどう思っていただろうな。

 ポロリと涙が一筋零れ落ちた。


「お嬢様殿下がお見えになりました」

 ビオラの声に慌てて涙を拭きます。

「どうぞ」

 扉が開きバージルが部屋に入って来ました。お時間になりましたらお声を掛けさせて頂きますとバージルの背越しにビオラがお辞儀をして扉を閉めて行きました。


「アンナ誕生日おめでとう」

 大きな花束を差し出し笑顔でバージルが祝ってくれます。

「ありがとうございます。バージル様」

「今日は一段と綺麗だ。これは僕からのプレゼントだよ、身に着けて欲しい」

 渡された箱を開けると輝くばかりのピンクダイヤのネックレスとピアスが入っていました。

「綺麗…」

「君の瞳に合わせて作って貰ったんだ。今日はこれを付けて欲しい」

 ああ、それでこんなに着飾らせられたのにアクサリーは一つも用意されていなかったのね。

 事前に母さまは殿下か聞いていたんだわ。

「こんな素敵なもの良いのでしょうか」

「もちろんだよ。成人も兼ねているんだから当然の宝飾品だよ。ほら後ろを向いて、ネックレスは私が付けてあげよう」

 アンナは姿見の方を向き鏡に映る自分とバージルを見つめていました。

 中心の大粒の石からグラデーションの様に小さくなっていくダイヤの美しさを見惚れながらピアスを自分で付けていきます。

 後ろから鏡を見ながらバージルが「綺麗だ、似合っている」と耳元で囁きうなじに口づけを落としました。

 ひやっ、思わず首を竦めるアンナ。

「せっかくお化粧しているのに口にしたら紅が落ちてしまうからね」

 バージルは鏡の向こうでウィンクして見せました。


「殿下、お嬢さま広間の御支度が整いました」

 扉の向こうから聞こえたビオラの声にバージルが扉を開けアンナをエスコートしてパーティーへ向かいます。


 広間に婚約者である王子にエスコートされ入って来た乙女に待っていた来賓からため息がもれます。

「なんて美しい」賛辞の言葉を無意識に口にする来賓達。

 バージルはアンナの父であるアドルフの横迄アンナをエスコートすると自分は一歩下がり礼をしました。

「皆様本日はオレガノ家次女ジュリアンナの誕生と成人の祝いにお越し下さり感謝申し上げます。ジュリアンナも今日で十六歳を迎え、婚約者であります第二王子殿下のとの婚姻も来年、新年の祝いと同時に挙式を挙げる事となっております。可愛い娘を嫁がせるには少々早いと思っておりますが、殿下の熱望と聞き親としては致し方なく・・・」

 結婚式でもないのに涙ぐむ父に母がハンカチを差し出し「しっかりしなさい」と激を飛ばしました。

 兄さまと姉さまはクスクスと笑っています。

「とにかく、アンナ。誕生日、そして成人おめでとう」

 「ありがとうございます。父さま」

 アンナは父ルドルフと抱擁しお互いに左右の頬を合わせると会場から大きな拍手が沸き上がりました。


「ジュリアンナは本当に綺麗なったな。殿下に見初められるのも当然だよ」

「デビューの後我が家にお宅の親戚のジュリアンナ嬢を紹介して欲しいとあちらこちら問い合わせが来ていましたのよ」

「しかし、その日にはもう決まっていたのだというから殿下には誰も太刀打ちできなかっただろう」

「当然ですわね」

「ジュリアンナは眠りについてしまう前の子供の頃しか見てないものな。目覚めてからはいつも家に閉じこもって本を読んでいたり何か作ったりしていて僕たちの前にも出て来なかっただろう?その頃会っていれば僕だって求婚していたかもしれない」

 従兄のアルバートが愚痴りますが、

「だとしてもわたくしの可愛いジュリアンナはアルバートなんかに差し上げませんわよ」

 アルバートと幼馴染の姉のマリエッタに軽くあしらわれてしまいます。

「そうだ、そうだお前には無理だ」

 アルバートの父、アンナの伯父カーティスにまで笑われ場は和んでいきました。


 ダンスの音楽が始まるとそれぞれが手を取り踊り始めました。

「私たちも踊ろう」とバージルがアンナの手を取り輪の中に入って行きます。

 自然と二人の周りから人影が引いていきます。

 美しい二人が踊る姿はまるで絵に描いたようで、離れて踊る親類たちも見惚れてしまう程。


「アンナ、次は結婚式だな」

「はい、バージル様」

「花嫁衣裳もだいぶ形になってきていると聞いたよ」

「そうですか、楽しみですわ」

「うん、でも今日のドレスも素敵だよ。先ほどネックレスを付けている時、大胆に開いた背中がセクシーでドキッとした」

「バージル様ったら」

 頬を染めるアンナの背中を踊りながらすぅーと指を滑らせると今度は耳まで赤く染めるアンナを見てバージルは満足そうに笑います。


「もう成人したのだから明日からは遠慮はしないからね」


「そ、そんな事今宣言しないで下さい!」


 そう言いながらアンナがバージルを見上げると金色に戻りつつある瞳が悪い目をして見つめ返してきて思わず目を逸らしてしまいました。


 親し人々に誕生日と成人を祝われながら新たな不安を抱えながら宴の夜は更けていきました。

 




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