35*滞在六日目お食事会
六日目の朝、バージルはアンナが目覚めると隣にいました。
「朝までいてくれたんですね」
「おはよう、アンナ。この前は約束が守れなかったからね」
「嬉しいです」
アンナからキスをして二人は微笑み合った。
◆◆◆
さあ、いよいよアンナ主催の食事会です。
先ずは厨房へ行き、解毒薬の完成を見なくては!朝食もそこそこにアンナは離宮の厨房へと向かいました。
どれどれ・・・ビオラと一緒に容器を覗き込みます。
「おお!固まってるわね」
解毒薬を取り出し、魔法でパウダー状にしました。
この瓶に入れておきましょう。ビオラの差し出した瓶に静かに移し変えます。
「これで準備は完了ね」
「うん、あとは料理に混ぜるだけね」
さて今日のメニューは
〇生ハムのサラダ
〇マリーリクエスト エビフライ
〇鯛(白身魚)のアクアパッツァ
〇若鳥のから揚げ
〇ポトフ
〇ピラフ
デオドール様だけに解毒薬を入れるとなると・・・取り分け出来るのはポトフとピラフしかないわ。
暖かい物ならデオドール様の器にあらかじめ薬を入れて置いてその上にポトフを盛り付ければ溶けるわね。
ピラフはちょっと難しいかなーだったらリゾットに変更しよう!
上に掛ける粉チーズに混ぜればOKでしょう。
他にもエビフライ用のタルタルに混ぜて置いてという手もあるか。
そうだ、油物には父さまが異国から仕入れてくれたウーロン茶があるからそれにも入れるとして。うん、何とかなるわ。
「ビオラ下ごしらえを始めるわよ」
「はーい。アタシは唐揚げの準備をするわ」
「うん、お願い。私はポトフの準備をしてからエビフライね」
「了解」
準備は着々と進みました。
そして食事会ランチタイムの時間に。
離宮の食堂にまず最初にやって来たのはバージルとダニエルでした。
「アンナ、守備はどう?」
「バッチリですジル様」
笑顔でVサインを送ります。
バージルはうんと頷いて席に着きました。
「アンナちゃんお待たせ~」
ダニエルさんと執事のピエールさんからやっと解放されたデオドール様がご機嫌でフェリーシア王女をエスコートしてやって来ました。
もちろんその後ろには侍女のリンダの姿もありました。
「ジュリアンナ様、とても楽しみにしておりました」
王女の笑顔が眩しいです。
昨日からデオドール様に会えていなかったのに余裕の笑顔。
絶対何かありそうです。
そして最後に王妃陛下が聖女マリーを連れてやって来ました。
「ジュリアンナちゃん、お招きありがとう」
「ジュリアンナお姉さま、エビフライはありますか?」
「まぁ、マリーったら」
王妃はマリーの子供らしい言葉に母親の様な優しい眼差しを向けて微笑みます。
「王妃様ありがとうございます。お気に召しますか不安もありますが心を込めて作りましたので是非ご賞味ください。マリー様のリクエストのエビフライも勿論ご用意していますよ」
わーいとマリーはジャンプしてからバージルの横に座りました。
「うふ、楽しみしていますわ」
最後に王妃が席に付きお食事会スタートです。
まずは最初からテーブルに盛り付け合った生ハムサラダを取り分けアンナは厨房に戻ります。
食堂から賑やかな声が聞こえてきました。
最初にポトフを各器に盛り付けワゴンに乗せました。
勿論デオドールのポトフには解毒薬を入れてあります。
ワゴンを押してみんなの元へ行くとデオドール様がフェリーシア王女の世話をニコニコしながら焼いていました。
あと三十分もしたら最初のポトフの薬が効いてくるはずね。どういう風に変化していくのかちょっと楽しみだわ。
「最初は皆様も馴染み深いポトフでございます。少なめにしてありますのでお熱い内にどうぞ」
アンナは薬入りの器を間違えないようにデオドールの前に出します。
「良いお味ね」
王妃がポトフのスープを口に運び満足そうに褒めて下さいました。
「キャベツが甘くて美味しいですわ」
「ジュリアンナお姉さま美味しいです」
「良かったらこのケチャップを味変で少し入れてみても美味しいと思います」
「ほー、この赤いソースはケチャップと云うのか」
デオドールは不思議そうにスプーンで少しすくい舐めてみます。
「おっ、酸味もあるけど甘みもあって美味いな」
「はい、トマトをコトコト煮ながら作ったソースです」
「ジュリアンナ様が一から作られたのですか!まるでシェフですね」
フェリーシア王女の驚き顔がまた可愛らしい。
こんな可愛いらしいお顔をして魔女を使いじわじわとデオドール様を射止めようとするなんて。薬など使わず真っ向勝負すればいいのに・・・
チラリとデオドールのポトフを見るとほとんど食べ終わってる。
『順調だわね』
『ええ、味も臭いも無いから普通に食べてくれてるわ』
ビオラと念話で会話します。
「次はマリー様お待ちかねのエビフライと唐揚げでございます」
「やったー!」
「こら、マリー行儀が悪いぞ」
嬉しさのあまり万歳をしてしまったマリーにバージルが笑いながら窘めます。
「ごめんなさーい」
本当に素直なお嬢さんになりました。
厨房に戻るとビオラが唐揚げを揚げている最中でした。アンナも隣の鍋で直ぐにエビフライを揚げ始めます。
「私とダニエルの分も取っておいよ」
「分かってるわ」
揚げたてのエビフライと唐揚げを見て王妃と王女から感嘆の声が上がりました。
「何ですのこれは?」
「はい、王妃様この料理方法は揚げ物と申しまして海老に衣を付けて揚げたエビフライです。それぞれの前にありますタルタルソースを付けて召し上がって下さい。それともう一品は若鶏の唐揚げでございます。鶏肉に味付けをしておりますのでそのままで大丈夫です」
「揚げ物というお料理ですか。この調理方法は初めてですわ・(カプリ)・あらま、マリーの云う通りサクサクプリプリで美味しいわ~」
「ええ、ええ、タルタルソースというのも手作りですか?」
「はい、王妃様、王女様」
「ジュリアンナ様は天才ですわ!」
「だからマリーが言ったでしょう。エビフライは最高ですって」
何故かマリーがどや顔をしてまたエビフライに手をのばしました。
美味い、美味いとデオドールとバージルもから揚げを頬張っています。
やっぱり男の人は唐揚げが好きなんですね~。
「こちらのお茶は異国のお茶でウーロン茶です。揚げ物によく合いましてお口の中もさっぱりと致します」
ウーロン茶もデオドールの分には解毒薬を入れてあります。
「ホントだ、スッキリするな」
一気に飲み干してくれましたよ。
そろそろ最初のポトフに入れた分が効いて来る頃ね。




