22*王宮にお泊りします。
その夜から城内の警備が今以上に厳しくなった。
魔女の目的は何なのか。
その夜、アンナは場内に泊まりバージルとダニエル、そしてデオドールも交えて対策を練っていた。
「つまり、アンナちゃんとバージルだけ違和感を感じていたという事か」
デオドールが口を開く。
婚約した時点で王家と執行部の者達だけはアンナの魔力の事は伝えられていた。勿論ビオラが精霊だという事は知らない。
「はい」
「どういう意図があるのか、分からないと対策のしようがないけれど、何が起き来てもすぐに対応できる体制だけはとって置かないといけないな」
「兄上、直ぐにエスメラルダから取り寄せたユリは撤去させ明日には国内産のユリを飾らせる手配になっておりますが、私とアンナ以外のユリの香りを嗅いでいた全員は、何らかの魔法の初期段階をもう体内に取り込んでいるのです」
バージルの言葉にデオドールの身体が硬くなります。
「私もか」
「はい」
「これからどんな魔法が上書きされてくるのか全く分かりません。どうかくれぐれもお気を付けください」
「気を付けると言ってもなー」
確かにその通りだ。
上書きの魔法が発動しない限り対処など出来る訳がないのですから。
あれやこれや話し合ったが結局それ以上は先に勧めず、警備体制などを話し合い解散となった。
「アンナ今夜はこの部屋を使うといい」」
バージルに案内されたのは彼の自室に隣接する部屋でした。
「ここはいずれ私たちの部屋になるのだから遠慮することは無いよ。君と婚約してから婚姻に向けて改装し、つい先日出来上がったんだ。」
「えっ、婚姻前に使ってもよろしいんですか?」
「構わないさ、いずれ君の部屋にもなるのだから。それに先ほど陛下にも君がここに泊まる事は許可を取った」
「そうですか、ありがとうございます。では遠慮なく使わせて頂きます」
「じゃぁ、おやすみアンナ。私の部屋は隣だから何か不都合があれば何時でおいで」
「はい、わかりました。おやすみなさいジル様」
「明日の朝侍女が来てくれるからゆっくりと湯あみをするといい」
「はい」
ジル様が部屋から出て行く。
あらためて部屋を見回してみる。真ん中にリビング的な応接間の左手に書斎と広い衣裳部屋。
右側にも二つ扉がある。窓に近い方のドアはトイレ・浴室で、もう一つの扉の先に寝室があった。寝室からもトイレと浴室に行けるようになっている。
寝室にもクローゼットがあり普段身につけるような服や小物は収納できそうです。あら、もう一つ扉がありました。気にはなりましたがそれよりもアンナは寝台を見て驚きました。
天蓋付きの寝台の大きさはキングサイズよりさらにさらに大きかった。
これには流石に引いた。
結婚したらこの寝台でバージル様と寝るの?
そう考えただけで赤面し心拍数が上がってしまう。
うーっ。ダメだ、とりあえずお風呂に入って疲れを取ろう。
浴室もまた広くてドキドキする。
お湯は魔法でいつでも貯めることが出来るしシャワーも使える。
ゆっくりお湯に浸かるのは侍女たちが来てくれる朝にするとして今夜はシャワーでだけ済ませる事にした。
寝着もちゃんと用意されている。
シャワーから出ると水を飲んでそのまま大きなベッドに雪崩れ込みました。
広すぎるベッドは一人では寒く心もとないが疲れていたせいか直ぐに睡魔は襲ってきた。夢の中で微睡むようにいつもの感覚で手を伸ばすと何か暖かいものに触れた。
『フォルヴァきてくれたのね』寝ぼけながらその温かいものに抱き付き安心してまた眠りに落ちる。
バージルは深夜アンナ様子が気になり自室とアンナがいる寝室に繋がる扉の前でウロウロしていた。
『初めての部屋でちゃんと眠れているだろうか』
何度かノブに手を掛けては離し手を繰り返し、意を決して扉を開いてみると
◆◆◆
アンナが広すぎる寝台の隅の方で背を向け身体を丸くして眠ってる。
寝顔が見たくて寝台に上がり覗き込むといきなりこちらに寝返りを打って手を伸ばしてきました。
その手はまさぐるようにバージルの腕を掴むとしっかりと抱え込み離そうとしません。
「フォルヴァきてくれたのね」
なんだ、寝ぼけているのか。
バージルはそのまま横になりアンナの頭を優しく撫でます。
「う~ん」とアンナの顔が綻びバージルの胸に頭をすりすりとこすりつけ居心地の良い場所を見つけると静かな寝息を立て始めました。
アンナそれはヤバいって・・・
焦る私の気持ちも知らず自分の頭の落ち着くところをすりすりと探し場所が決まると満足気に笑みを浮かべ、すぅ―と深い眠りに入って行った。
うっ、これは拷問に近いな・・・
持て余したもう片方の手を彼女の背中にまわしそっと抱きしめる。
こめかみや耳朶に口づけを落としていたら股間にある己自身が自然と硬くなってくる。行き場のない熱をどう処理しようかと暫し思い悩むが、スヤスヤと安心して眠る彼女の顔を見ている内にアンナの魔力に心地よさを覚え睡魔が襲ってきた。
『こんな可愛い寝顔をが見れるなら添い寝だけも悪くはないな』
いつの間にかバージルもそのまま寝てしまい三時間ほどして目が覚めます。まだ自分の腕の中で眠っている天使を愛おしく見つめているとアンナがもぞもぞと動き目を覚ました。
「もう起きちゃったのかい?」
少し低くかすれた声で微笑みかけた。
◆◆◆
ふと目が覚めました。
フォルヴァを抱いて寝た筈なのに何故か抱かれている?
えっ?ガッチリホールドされ身動きが取れないわ。
思い切って顔を上げるとそこには藍色の瞳がアンナのことを見下ろしていました。
ど。どういうことですか!!!
「ジ、ジル様どうして?」
「どうしてって、アンナが眠れたか心配で様子を見に来てたんだ。寝顔を見ていたら君に腕を抱き込まれ放してくれなくて、仕方なく一緒に寝てるんだけど」
そんな筈ない。。。えっ、フォルヴァだと思って抱きしめたのはジル様の腕だったの?
うわー、それでも絶対に振り解けたはずだよね!
「ジ、ジル様ごめんなさい。放してください。そしてご自分のお部屋にお戻りください。婚姻前に寝所を一緒にするなんてダメです、そんな事・・・私もうお嫁にいけません」
必死に訴える。
「ぷっ、アンナは私の所にお嫁に来るんだからそんな心配いらいないよ。それに添い寝してるだけで何もしていないからね」
そうだ私は数か月後にジル様のお嫁さんに・・・
いやいや、そういう事じゃなくて・・・
もう頭がパニックで思考が纏まらないです。
「それでも。それでもダメです」
「もうお黙り」
いきなり唇を塞がれました。
「まだ明け方前だよ。今日も何があるか分からないからちゃんと寝て置かないといけない。これ以上の事はしないから目を閉じて眠りなさい」
「でも・・・」
そのまままた口を塞がれたまま抱え込まれる。
長い口づけを落とされている内にだんだん心地よくなってきて知らない間いまた眠りに落ちていってしまいました。
◆◆◆
アンナに口づけをし二度寝して目が覚めると空が白々と明け始めていた。
たぶん一時間ほどしか寝ていなかったと思うが頭はスッキリとし身体も軽い。
彼女はまだぐっすりと私の腕の中で寝ている。
この温もりを手放すのは忍びないが、可愛い顔で目覚められたら箍が外れ襲ってしまいそうで起こさぬよう静かに離れ頬にキスをして自室に戻った。
シャワーを浴び熱を持った身体を沈めまだ誰もいないと思われる鍛練場へと向かう。
睡眠不足は感じられなかった。昨日までの疲れも無いどころか素振りを終えても身体も軽く魔力も安定していた。
『添い寝魔力の効果か』
執務に向かえばきっとダニエルに昨夜の話を聞かれるだろうと思うと少し頭は痛いが。
◆◆◆




