16*フォルヴァとバージル
「私の友人フォルヴァが撮りました」
「友人?フォルヴァって誰だ、男か!」
「そうですね。一応男性です」
王子の関心は突然あらぬ方へ向かっていく。
「そ奴とは親しい間柄なのか?」
ちょっと面白いので息抜きにお付き合いする事にした。
「はい。一緒に寝たりしますよ」
「なにっ、アンナと添い寝するだと!!!」
「ええ、暖かくて気持ちいいです」
「暖かくて気持ちいい・・・?
なんて事だ。婚約者の私でさえまだなのに。。。」
ビオラが肩を震わせて笑い、ダニエルはバージルの魔力が暴走するのではとハラハラしていた。
「アンナそのくらいで勘弁してあげないとバージルの魔力が暴走するわよ」
私はちょろっと舌を出してバージル様を見る。
あちゃー!青くなってるわ。やり過ぎちゃったかしら?
「ジル様、フォルヴァを呼んでも良いでしょうか?」
「直ぐに呼べるなら私も恋敵の顔が見たい呼んでくれ」
がっくり肩を落とし俯きながら言うバージル様が気の毒に思えてきました。
「フォルヴァ」
立ち上がり聖獣の名呼ぶと窓の外から一筋の光が差し込みガラスを通り抜け私の横にフォルヴァがその姿を現した。
熊ほどある真っ白な狼が出現しアンナに頬ずりをしているのを見てバージルとダニエルは声が出ないほど驚き後ずさりする。
「ア、アンナ、その熊のような狼は。。。!」
「はい、私の聖獣フォルヴァです」
「聖獣だとーーーー!」
「いつも一緒に寝ている可愛い子ですよ」
「・・・・・」唖然とするバージルとダニエルです。
「ビ、ビオラ、否、精霊殿。精霊と契約を交わすことが出来、とてつもない魔力を持ち、癒しの力を使い、聖獣まで従えるアンナはいったい、、、」
「うふ、アンナは私の愛し子であり聖女よ」
「聖女だと!?何故我が国に聖女が二人居る?」
「これにはいろいろ事情があってね、神がやった事だから」
「ではマリーは本当は聖女ではないのか?」
「ううん、マリーはちゃんと聖女として生まれたわ。ただ普通の聖女より器が小さく力が弱いだけよ。だからと言ってアンナと聖女の座を交換する事は出来ないわ」
「ではどうすれば・・・」
「ジル様、今は私の事ではなくマリー様の事です。とにかく、私の話を聞いてください。フォルヴァは元々神殿で生まれた聖獣です。ですから神殿内の何処にでも入れます。この映像はフォルヴァが見聞きしたものをこの魔道具に送って貰い留めて置いたのです。信用して頂けましたか?」
「するもしないも見たままなのであろう?」
「はい」
「なら信じるよ」
「良かったです。見て頂いた通りこれではマリー様が神殿に行く意味がありません。邪気の混じった祈りより神官数人で祈りを捧げた方がマシと思えますから」
「うむ。そうだな。マリーはアンナが言うように暫く人としての教育に専念させた方がいいだろう」
「ありがとうございます。ジル様なら分かってくれると思っていました」
「私でなくともこれだけのものを見たらみんな納得するわ、なぁダニエル」
「ご尤もでございます。殿下」
「でもアンナが聖女だと云う事は国王にも話しては駄目よ。バージルとダニエルの心の中に留めて置いて。そうじゃないとアンナが色んな思惑に巻き込まれてしまうわ」
「その通りだな。聖女が二人あってはならないのだからアンナが聖女であることは隠していかなければならない。良いなダニエル」
「御意」
「だが、私はアンナを妻に迎えると決めている身だ。そのアンナが聖女であると知った以上アンナの力を借りる事もあるかも知れない。それには君が聖女となったその過程も知らぬふりは出来ない。今すぐとは言わないが話して貰って良いだろうか」
「ええ、分かりました。もう少しお待ち頂ければ」
「ああ、頼む」
「しかし、アンナが聖女とはな」
そう言ってアンナに近づき抱きしめると突然フォルヴァが二人の間に割って入って来た。
「あら、フォルちゃんヤキモチ?」
いつの間にか侍女姿に戻ったビオラがダニエルの身体をバンバン叩きながら笑った。
「殿下、マリー様に続き聖獣殿にまでヤキモチを妬かれるとはご苦労なさいますな」
とダニエルも苦笑する。
「別に我はバージルを嫌っておらぬ。我の前でイチャイチャして欲しくはないだけだ。アンナは我が三百年会いたくて探した存在なのだという事を覚えていて欲しいのだ」
「フォルヴァったら」私が照れているとバージルは少し困ったような顔をした後、フォルヴァを見、
「そうであったか、嫌われていなくて良かった。聖獣殿の気持ちも察するところはあるが、私も聖獣殿に負けないくらいアンナを愛しているという事も分かって欲しい」
と、フォルヴァに挑むように突っかかる。
「ジル様もやめて下さい」
「あ~あ、お嬢も大変ですね」
バチバチと火花散らすバージルとフォルヴァを見て三人は大きな溜息をついたのでありました。




