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10-①聖女マリーに会いまして。

 婚約をしてから勿論私の生活は変わりました。


 毎日王城で王妃教育を受けておりましてちょっと疲れています。勉強自体は問題ないのだけれど周りの目がね。

 いつか両殿下の妃として見初めれられるかもしれないと王城に上がっている貴族のご令嬢からしたら降って湧いたような格下男爵家の娘に第二王子殿下を掻っ攫われたのですから。

 それでも婚姻するまではまだチャンスがあると色々策略を練り地味な追い出しを仕掛けてくるのです。ベタな虐めばかりで対処するのも面倒臭いから放置する様にはしているけど疲れます。


 私の他にもう一人迷惑を被っているお人がいます。

 デオドール王太子殿下です。

 元々女性に優しく人気のあるデオドール殿下です。ハッキリ言ってバージル殿下よりオモテになります。女性との噂は後を絶ちませんがバージル殿下の婚約により諦めてデオドール殿下に狙いを変えた令嬢も出て来たのでお顔を見せるだけで令嬢方に追いかけ回されているのでした。

 お気の毒。。。


 勉強を終えてビオラを連れ久しぶりに庭園のガゼボでバラの香りに包まれてのんびりしている時でした。


「そこは私のお気に入りの場所よ。どいて頂戴」


 いきなり声を掛けられびっくりして声の主を探します。

 バラの花の陰から出て来たのはおかっぱ頭の聖女マリーでした。


「失礼いたしましたマリー様」

 アンナは慌てて席を立ちマリーに席を譲ろうとします。

 マリーの後ろから付いて来た侍女が私に頭を下げている事にマリーは気付いていません。


「ふん、ここはお兄様たちと私のお気に入りの場所なんだから勝手に座らないで」

「お兄様ですか?」

「そうよ、デオドールお兄様とバージルお兄様よ」


 なるほど聖殿から王宮に住むようになってから両殿下が良くお相手をしていたと聞いたことがある。確かデビューの日もマリー様の付き添いで疲れたなんて言ってたものね。


「そうでしたか。知らぬとはいえお気に入りの場所に勝手に入ってしまい申し訳ありませんでした」

 八才にしては小生意気な少女ねと思いながら詫びを入れます。


「この庭園は許可がないと入って来れないところなのよ。何でアナタは入れたのかしら」


 えっ、そうなの?確かに庭園に入る入口に兵士のような人が二人立っていたけど、別に何も言われなかったわ。最初のランチからはバージル様とここで待ち合わせているけど普通に入って来れたし。


「何度かバージル様と来たことがありますので」

「バージルお兄様とですって!」

「はい」


「聖女様、ジュリアンナ様はバージル殿下の御婚約者でございます」


 今まで黙って聞いていたビオラが侍女らしく控えめに伝えるとマリーは目の色を変えてアンナを睨みつけて来た。

 それと同時にマリーの後ろからお披露目の時に見えたモヤモヤが現れる。でもあの時よりも色が濃い。


「アナタがお兄様の婚約者なのね。アナタのせいで前みたいに私の所に来てくれなくなったんだわ。どうしてくれるのよ」


 はぁ?そんなこと私に言われてもどう返事をして良いのか分からない。あまり刺激をするとあのモヤモヤがどうにかなってしまうのじゃないかと少し不安になって来た。


『ちょっとこの聖女どうにかしていいですか?八才の子供とは思えない言い草だなんだけど』

 ビオラの念話が届く。

『ううん、まだ子供だもの。殿下たちが忙しくて相手をしてくれないからきっと寂しいんだわ』

『でもさっきからあの子の後ろに邪気が出ているんだけど』

『ビオラにも見えているのね』

『ええ、しっかりとね』


「アンナいるのかい?」

 その時今日は会えないと思っていたバージルがダニエルを従えてやって来ました。


「バージル様」

 アンナがバージルの名前を呼び彼の元へ行こうと一歩踏み出した途端、マリーのモヤモヤがさらに広がった。


『これはまずいわ。殿下との距離は空けておいた方がよさそうね』

『そうね、嫉妬の邪気のみたいだし』


「王妃教育が終わってここへ向かったと聞いて来てみたんだが・・・マリーもいたんだね」

 何も知らないバージルは嬉しそうにアンナ傍に行こうとしたが


「バージルお兄さまァ~」

 と甘えた声でマリーが駆け寄って来たので彼はその歩みを止めました。

 マリーはバージルの一歩手前で止まると彼が彼女の頭をポンポンと叩きます。


 おやっ、さっきまでのモヤモヤが少し薄くなってきました。


「久しぶりだね。ちゃんと勉強はしているかい?」

「し、してますけどお兄様たちが来てくれないのでマリーはさみしいのです」

「兄上も私も公務が忙しいからね。今は色んな人と会えるようになっただろう?沢山話をすることも大事だよ」

「でも~」

 バージルがマリーを抱き上げ直ぐにダニエルに託しました。八才の少女は物足りなさそうだが魔力酔いの事を聞かされているのでしょう。諦めてダニエルに大人しく抱かれています。

 年齢に対し小柄なマリーだが、それでも抱いているのはきつくないのかしら?アンナはダニエルの事を眺めていた。

 バージルはマリーをダニエルに託すと足早にアンナの所へやって来て


「今日はどうだった、疲れてないかい?」

 そう言いながらアンナの頬に唇を寄せると、


 ギシギシギシギシーーーーー!!!


 突然ガゼボとバージル、アンナ、ビオラの三人の足元が揺れ出しました。




+++++++++++++++++++++++++


 ※アンナがバージルと婚約したことによりビオラをメイドから侍女に格上げされております。



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